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【創作】つまらない話

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作り話です。
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#小説

ザコ無職日記2「注意力などというものは、ない」

ジェットストリームというボールペンの黒を使い切った。

いや、だいぶ前から、使い切って黒以外の3色ボールペンと化している。

ようやく、ロフトで購入した。

ノートを買ってレジまでいく途中に、なぜかジェットストリームの芯だけが目立つところに陳列されていた。

おお、ラッキーではないか。

1本とって、ノートと一緒に会計を済ませた。

帰宅して、袋を開けた。

中身を取り出すと、違和感があった。

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「とりとめのないことを考える」-ザコ無職日記3-

あまりにも暑いので、外出する気にならない。

家で、ダラダラすごす。

テレビをつけると、甲子園の中継が始まった。

四球かと思ったらストライクの判定。

審判の立場に立つと、私はいたたまれない気持ちになった。

「しまった。今のはボールだったかもしれない」

と思い続けてしまうんだろうか。

私なら、少なくともその試合中は立ち直れなくなる。

それとも、一流の審判ならば気持ちを切り替えられるもの

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【創作】「ソノケン」-ザコ無職日記5-

電車の中で、無駄に高そうなスーツに身を包み、ロレックスの時計をつけた、成金臭を漂わせたおっさんを見て、私はソノケンのことを思い出していた。

ソノケンの本名は、ソノダケンイチかケンジのどちらかで、以前勤めていた証券会社で最初に配属された店の支店長だった。

背が低く、太っていた。

たかだか証券会社の支店長(つまりサラリーマン)でしかないにもかかわらず、信じられないくらい偉そうな男だった。

私が

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【創作】トランプと部屋の長さ -ザコ無職日記-

完全には眠っていないのだけれど、意識は半分夢の世界に行っていることがある。

昨日はまさにそうで、私は起きたまま寝言をいった。

「トランプ!」

そう叫んだ。

もう一人の、起きている私はそれを聞いて、「なんじゃそりゃ」と思った。

すると、寝ている方の私は、「部屋の長さを測るんだ」と、指示してきた。

そして、再び「トランプ!」と言った。

起きている方の私は、寝ている彼とは他人だが他人ではな

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【創作】「怠い」-ザコ無職日記-

朝から体が怠かった。

起きた瞬間、「寝不足」を疑った。

眠りが浅いがゆえの疲労感ではないか、と。

ところが、その見立ては誤りであった。

寝不足のときの私は、目にはっきりとしたくまができるのが常であるが、今朝はそうではなかったからだ。

では、まるで猛暑の中延長戦に突入したサッカー選手のような、立っているだけで精一杯の、この辛さの正体は何なのか。

わからないまま、午前中がすぎた。

昼寝を

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【創作】ザコ無職日記 「1日は始まらない」

10時間寝たにもかかわらず、目がくまだらけである。

ニュースによると、台風が来るようだ。

理屈はまったくわからないが、低気圧は頭痛を引き起こし、睡眠も浅くなる。

ここのところ毎日のように、天気がすぐれない。

だから私は、寝ても寝ても、元気が出ない。

時計を見ると、11時。

ポットに水を入れ、湯を沸かす。

待つ間、ソファに腰掛け、正面やや下を、見るともなく見る。

湯が沸いたことを知ら

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【創作】ザコ無職日記「ふじた」

『キン肉マン』の最新巻を買いに、文教堂に行った。
『キン肉マン』は早々に見つかったが、暇なので店内をブラブラした。
水曜の13時にこんなところで間抜けな顔で書店内を徘徊する自分は、やはりおかしいのだろう。
いや、おかしいかどうかはわからないが、周りからはおかしいと思われているのだろう。
不思議なことに、書店で考えるのはいつも「自分は今どう見えているのだろうか」ということだ。
大概、いつの間にか考え

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【創作】ザコ無職日記「猫さん」

私の家の近くには、たくさんの猫がいる。

飼われているのか、それとも野良猫なのかは不明だ。

もしかしたら、町で飼われているという言い方が正しいのかもしれない。

この町の猫は、人間が近づいても逃げようとしない。

私のようなザコが相手だからよいが、強い敵がいたら、あっという間に殺されてしまうのではないか。

危機感はまったくないが、みんな毎日幸せそうに寝ている。

私も、猫になったらもっと楽なの

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言葉

以前に、「コスモをもやせ」というわたしが参加しているコミュニティのメンバーに、「2020年は文筆業をするんだ」という話をした。

そうしたら、中井さんが、「ブンピツってどっちですか」と聞いてきた。

どっちと言われても、わたしは、「文筆」しかしらないので、何のことかわからないと答えるしかない。

どうやら、「分泌」のことだったらしい。

「分泌業なんてあるわけないだろ」と言うと、

「だって、吉岡

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【創作】竹田さん

「ビックマックを食べたい」と竹田さんが言った。

Kは、彼女の印象から、そういうものを食べそうにないと思っていたので、驚いた。

そして、「そういうの好きなんだ」と質問しそうになったが、どう思われるか不安になって、やめた。

【創作】つまらない話20190217

2/10に風邪の症状が出て、そのあとしばらく、寝て過ごした。

だいたい治ったかと思ったら、目が充血して、涙が止まらなくなって時間が立つと目に膿がたまるようになった。

薬局で購入した目薬もまったく効かぬので、病院に行った。

処方された2種類の点眼薬によって、目はだいぶよくなり、あとは咳が止まって体力が戻れば完全に回復したといえるのだろう。

思えば、熱が出た2/10が事の始まりではないのかもし

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竹田さん1

Amazonからの荷物かと思ってドアを開けると、150㎝くらいの女性が立っていた。

その女性は、ただいまと言った。

わたしがどちらさまでしょうかと聞くと、あなたの妻ですと答えた。

わたしは困ったが、しかたがないので、おかえりと言い、部屋の中に入れた。

「今日、電車の中に変な人いたよ」

わたしがいれたコーヒーに口をつけながら、女性は話し始めた。

「へえ。どんな人」

「ガラガラに空いてい

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【創作】小島信夫とセミナー構築

株式投資のセミナーをやることになったというのに、わたしは小島信夫ばかり読んでいる。

小島信夫を読むと株のセミナーが作りにくいというのも奇妙な話に聞こえるが、事実だ。

人は、何を読んでいるかで人格が変わるものだ。

その意味では、一見支離滅裂にも思える小島作品というのは、何かを的確に伝えなければならないセミナー構築とは相性が悪すぎる。

にもかかわらず、わたしは、今日も小島信夫を読み続けた。

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