【創作】「ソノケン」-ザコ無職日記5-
電車の中で、無駄に高そうなスーツに身を包み、ロレックスの時計をつけた、成金臭を漂わせたおっさんを見て、私はソノケンのことを思い出していた。
ソノケンの本名は、ソノダケンイチかケンジのどちらかで、以前勤めていた証券会社で最初に配属された店の支店長だった。
背が低く、太っていた。
たかだか証券会社の支店長(つまりサラリーマン)でしかないにもかかわらず、信じられないくらい偉そうな男だった。
私が初めて出勤した日、ソノケンを軽蔑するまでに要した時間はたった10秒だ。
「本日からお世話になります、サコタジローです。宜しくお願いします!」
と、バカバカしさをこらえて「社会人らしく」挨拶すると、
ソノケンは、「おお、期待しとるぞ」と、まるで自分は大物だとでも言わんばかりに、踏ん反り返って座ったまま答えた。
ダサい。
それに、頭が弱そうだ。
私は、「20年後にこんなおっさんになってしまうかもしれない」というリスクを認識した。
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