【創作】ザコ無職日記「ふじた」

『キン肉マン』の最新巻を買いに、文教堂に行った。
『キン肉マン』は早々に見つかったが、暇なので店内をブラブラした。
水曜の13時にこんなところで間抜けな顔で書店内を徘徊する自分は、やはりおかしいのだろう。
いや、おかしいかどうかはわからないが、周りからはおかしいと思われているのだろう。
不思議なことに、書店で考えるのはいつも「自分は今どう見えているのだろうか」ということだ。
大概、いつの間にか考えるのをやめていて、思い出すのは次に書店徘徊をしたときだったりする。
もしかしたら、一度も考え抜いたことがない話題なのかもしれない。
小説コーナーを見ると、高橋源一郎の新刊が平積みされていた。
帯によると、何年も前に読んだ『日本文学盛衰史』の続編だそうだ。
手に取ったが、次に来たときに買うことにして、戻した。
特に用事もないが、奥のコーナーまで歩くと、スーツ姿のふじたが立ち読みをしていた。
スポーツマンらしく、37にしては腹は出ていないが、前髪の生え際は後退していた。
読んでいるのは、ファイナンシャルプランナーのテキストだ。
私は、ふじたには話しかけず、『キン肉マン』を買い、書店を出た。

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