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田中はUFOを作っていた
Artwork by Google
新学期が始まってから二週間欠席続きの田中はUFOを作っていた。
「なんでUFOなんか作ってるのさ」
田中の家へ見舞いに訪れた安二郎が聞いても、田中は「なんでって、なんでもさ」と一向に取り合わず、部屋の隅に山積みになったガラクタのような金属板をせっせと運んでは組み立てている。
「お前の母ちゃんも心配してたぞ」
という安二郎の言葉は事実その通りで、田
ファミレス経営について
ファミレスを経営しようと思った。映画を観たのだ。ファミレスの店長の男がなにやら雰囲気の良い世界を漂っていた。これだ、と思った。
「ねえ」と僕が話しかけると、早希は少し間を空けて返事をした。
「ん」
「ファミレスを経営しようと思うんだ」
「ん」
早希はリビングのソファに寝そべって、低反発のクッションに身を委ねながら、手元のスマートフォンをしきりに眺めていた。ん、の先の返答はない。
「聞いて
アサイラム_スケッチ
静かに沈んだ夜の隅で軋んだ叫び声が聴こえる。戸を叩く音。悲鳴。彼らの共鳴。仕草。
彼らは何を求め、何を探しているのか。その監獄——鉄格子こそない——から外の世界へ何かを訴えかけ、求め、探し、鉄扉を叩き、雄叫びを上げ、彼らは。
看護師は定刻に食事を運ぶ。鉄扉の横に備えられた小さな扉——それはまるで猫が出入りするような——の鍵をガチャリと回し——その音は院内を木霊し——開けた扉のその隙間