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評論

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2023年5月の記事一覧

岸田翔太郎首相秘書官の辞任はいかなる意味を持つか

昨日、岸田文雄首相が記者会見を行い、昨年末に首相公邸内で忘年会を開き、親族と記念撮影をするなど不適切な行動があったとして、岸田翔太郎首相秘書官が6月1日(木)付けで辞任することを明らかにしました[1]。

大臣が、将来の政界への進出を見据えて自分の子どもや親族を秘書官とすることは珍しくありません。そのため、岸田首相が長男である岸田翔太郎氏を秘書官としたことは、いずれ自らの地盤を引き継がせることに備

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米国の「債務上限問題」の問題は何か

去る5月27日(土)、米連邦政府の債務上限問題を巡り、バイデン大統領と野党共和党のマッカーシー下院議長が基本合意に達しました[1]。

バイデン大統領もマッカーシー議長も、ともに2024年の大統領選挙に向けて合意の成果を強調しています。

しかし、今年1月に政府の債務が上限額に達したものの与野党ともに具体的な対話を行わず、5月1日になってイエレン財務長官が6月1日にも債務の償還が出来ない恐れがある

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「コロナ後の日常」について思ういくつかのこと

去る5月8日(月)に新型コロナウイルス感染症の感染症法上の分類が2か類から5類に変更されてから2週間が経過しました。

既に今回の措置に先立って任意となったマスクの着脱を含め、いわゆる「コロナ後」の社会活動が行われる中で、東京と名古屋という私の日常生活と仕事の拠点となる2つの地域の様子をみると、マスクを着用している人の割合は3割程度という印象です。

特に5月第3週の後半からどちらの地域も日中の気

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G7広島サミットにおける日本の情報発信力はいかに評価されるか

今回の主要国(G7)首脳会議は、ウクライナ問題を中心にG7各国が連携を強化できたこと、あるいは人類最初の被爆地である広島県広島市において、核軍縮の第一歩となるべき核兵器不拡散の徹底を主眼とする「広島ビジョン」が発表されたことなど、近年の会議に比べて多くの成果が得られました。

また、いわゆるグローバルサウスとの関係についても一定の前進が見られたことは、今後の国際社会の動向を考える上でも重要でした。

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G7広島サミットはいかなる意味を持つか

昨日、広島県広島市で開催されていた主要7か国(G7)首脳会議が3日間の会期を終えました。

今回のG7サミットでは、各国首脳が広島の平和記念資料館を訪問し、原子爆弾の犠牲者に献花したことは、7カ国のうち米英仏の3か国が核兵器を保有している実情に即せばG7の結束を強調するための象徴的行為という側面の強いものであったと言えるでしょう。

その一方で、たとえ形式的、象徴的な行為であるとしても、これまで現

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不正投球がなくならない3つの理由

去る4月24日(月)、日刊ゲンダイの2023年4月25日号27面に連載「メジャーリーグ通信」の第137回「不正投球がなくならない3つの理由」が掲載されました[1]。

今回は、ニューヨーク・メッツのマックス・シャーザー投手が不正投球を行ったとして10試合の出場停止と罰金を科されたことに関連し、大リーグにおいて不正投球が根絶されない理由を検討しています。

本文を一部加筆、修正した内容をご紹介します

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野球の歴史から考える「ファイターズの特製ユニフォーム」の持つ意味

5月13日(土)から18日(木)まで、プロ野球の北海道日本ハムファイターズは、新庄剛志監督が手掛けた特製のユニフォームを着用して公式戦を行っています[1]。

このユニフォームは上半身は黒を基調とし、ズボンは右足が黒、左足は赤を使用しており、開襟シャツ様の襟のある意匠が特徴です。

開襟シャツ様のユニフォームは現在の日本のプロ野球では珍しいだけに、注目を集める一着となっています。

こうした様子を

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Jリーグの開幕30周年を祝す

昨日、1993年5月15日(土)にサッカーJリーグの公式戦が開幕してから30年目を迎えました。

天皇杯のように高い格式を持つ大会があり、『キャプテン翼』などの人気漫画やテレビアニメもあったとはいえ、実際に行う競技としては学校教育の場や部活動が中心であり、鑑賞の対象としても日本サッカーリーグの観客数はごく限られていたというのが、1992年までの日本のサッカー界の状況でした。

その様な中で発足した

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石川雅規投手の「入団1年目以来22年連続勝利」の達成を讃える

去る5月10日(水)、阪神タイガースと東京ヤクルトスワローズの8回戦でスワローズの石川雅規投手が勝利しました。これにより、石川投手は入団1年目から22年連続で勝利し、米田哲也投手が1956年から1977年にかけて達成した入団1年目からの連続勝利の日本記録に並びました。

長らくスワローズの投手陣の中心として活躍し、現役選手として最多の通算184勝を記録しているのが石川投手です。

そのため、今回の

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日本経済新聞「大機小機」欄で考える正確で緻密な論考の必要さ

本日の日本経済新聞の「大機小機」欄では、石橋湛山が執筆した『東洋経済新報』1945年8月25日号の社論「更生日本の門出」が取り上げられ、次のように説明されました[1]。

これは、5月19日(金)に始まる先進国首脳会議において、「核兵器なき世界」を実現するための第一歩を踏み出すことの重要性を訴える中で、戦前から戦後にかけて日本の針路に関して先見的な議論を行ったと考えれる石橋湛山も、原子爆弾への評価

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令和5年度春の全国交通安全運動によせて

昨日から今年度の春の全国交通安全運動が始まりました。実施期間は5月20日(土)までです。

今回は4月1日から自転車を利用する際のヘルメットの着用が努力義務になったことなどもあり、例年に比べて交通安全運動に対する関心が高いように思われます。

確かに、全国の交通事故の犠牲者は毎年減少し、昨年は統計を取り始めた1948年以降で最少の2610人となりました[1]。それでも、毎年2000人以上が交通事故

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大谷翔平選手の「100本塁打500奪三振記録樹立」はいかなる意味を持つか

現地時間の5月9日(火)、大リーグのロサンゼルス・エンゼルスに所属する大谷翔平選手がヒューストン・アストロズとの試合に登板し、13奪三振を記録しました。

この結果、大谷選手の大リーグでの通算奪三振数は507個となり、大リーグの公式見解によれば、通算501奪三振を残したベーブ・ルースを抜き、100本塁打以上を記録した選手として歴代最多の奪三振記録を樹立しました。

大リーグの歴史上、100本塁打も

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「新型コロナの5類移行」に際しわれわれは「コロナ後の社会」に臨むべきか

本日午前0時、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の分類がこれまでの2類から5類に移行し、法律の面では従来の結核や重症性呼吸器症候群と同等の扱いから、季節性インフルエンザと同様の枠組みの中に入れられることになりました[1]。

これにより、政府や自治体が法律に基づいて行動制限などを要請することはなくなり、感染症対策は個人や事業者の判断に委ねられることになります。

2020年2月に始まった新型コロ

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こどもの日に際しよりよいこども政策の実現を期待する

今日はこどもの日です。

「こどもの人格を重んじ、こどもの幸福をはかるとともに、母に感謝する。」[1]という国民の祝日としてのこどもの日の意味は、制定された当時も今も変わらない、重要なものです。

もちろん、「母に感謝する」という一文については、育児は男女がともに参画するものという現在の通念に照らせば、過去のものかも知れません。

それでも、母胎を経てこの世に送り出されるという一点に限っても、生命

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