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記事一覧

大谷翔平選手の「50本塁打50盗塁」が象徴する野球の新たな段階

現地時間の9月19日(木)にローンデポ・パークで行われたマイアミ・マーリンズ対ロサンゼルス・ドジャースの試合において、大谷翔平選手が3本の本塁打と2つの盗塁を記録し、大リーグ史上初の年間50本塁打と50盗塁を達成しました。

大リーグにおいて真の長距離打者として認められるのは50本塁打です。

一方、年間に50個以上盗塁できる選手は、多くの場合において敏捷ではあっても、長打力に欠けると考えられてい

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ロベルト・クレメンテ・デーは何故9月15日の開催なのか

去る9月15日(日)、大リーグにおいてロベルト・クレメンテ・デーが行われました。

これは、大リーグで通算3000安打を記録し、ピッツバーグ・パイレーツの中心選手として攻撃と守備の両面で活躍しながら、1972年12月31日にニカラグアで起きた大地震の被災地に救援物資を搬送する途中で航空事故により落命したロベルト・クレメンテ選手の功績をたたえるため、没後30年となる2002年に始まった取り組みです。

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トランプ候補とハリス候補による米国大大統領選挙第1回討論会はいかなる意味を持つか

現地時間の9月10日(火)、米国大統領選挙の候補者による討論会が行われ、共和党のドナルド・トランプ氏と民主党のカマラ・ハリス氏が参加しました。

両氏が直接対峙するのは今回が初めてであるとともに、ハリス氏は現職のジョー・バイデン大統領が出馬を辞退したことを受けて急遽民主党の候補者に選ばれただけに、支持者を前にした演説ではなく対立候補との討論において大統領にふさわしい振る舞いをできるかにも注目が集ま

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9人が立候補した自民党総裁選の持つ意味は何か

本日、9月27日(金)に投開票される自由民主党の総裁選挙が告示されました。

立候補したのは、届け出順に高市早苗、小林鷹之、林芳正、小泉進次郎、上川陽子、加藤勝信、河野太郎、石破茂、茂木敏充の各氏です。

9人が立候補するのは、自民党の総裁選が立候補制となった1972年以来では最多です。

自由投票制であった1956年4月5日の総裁選挙では11人が1票以上を獲得したものの、現在とは制度が異なること

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自民党総裁選挙の問題点は何か--1956年の第2回総裁選の事例から

自民党の総裁選挙の歴史の中でも屈指の激しさとなったのは、1956年12月14日(金)に行われた第2回目の選挙でした。

第1回目は当時の鳩山一郎総裁に対する事実上の信任投票であり、第2回目は日本の保守政党にとって初の総裁公選となりました。

臨時党大会の議長を務めた砂田重政は投票に先立ち、次のように述べました[1]。

砂田が総裁選挙を表現するために「わが憲政史上特記すべき事柄」としたのは、それま

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村上雅則氏の大リーグ昇格60周年を祝す

9月1日(日)、村上雅則さんが1964年9月1日(火)にシェイ・スタジアムで行われたサンフランシスコ・ジャイアンツ対ニューヨーク・メッツの試合にジャイアンツの一員として登板し、東洋人として初の大リーグ選手となってから60年を迎えました。

村上さんが日米の野球界の発展と相互交流に果たした役割については、今年1月1日(月)の朝日新聞朝刊の新年特集第4部6面に掲載された私の談話に基づく記事「「大谷時代

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関東大震災の発生から101年目に改めて考える防災訓練の持つ意味の大きさ

昨日、1923(大正12)年9月1日の午前11時58分に関東大震災が発生してから101年目を迎えました。

今年に入ってから能登半島地震や南海トラフの両端での地震など、これまで以上に大型であったり従来とは異なる地域で発生したりと、地震大国と称される日本も、これまで以上に大規模な地震の発生に備える必要がある時期を迎えつつあります。

また、今回の台風10号のように通常とは異なる動きや勢力の台風も発生

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『僕のヒーローアカデミア』の完結で思ったいくつかのこと

去る8月5日(月)、『週刊少年ジャンプ』に連載されていた堀越耕平さんの漫画『僕のヒーローアカデミア』が第430話で完結しました。

2014年7月7日(月)の2014年第32号で連載が始まった際、第1話を読んだ印象はどちらかと言えば特徴のない作品というものでした。

第1話の印象の強弱が連載期間の長短に繋がるという私の経験則に基づけば、『僕のヒーローアカデミア』の連載期間は決して長くならないのでは

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大学生選手への給与は大リーグにとってマイナス

去る6月4日(火)、日刊ゲンダイの2024年6月5日号23面に連載「メジャーリーグ通信」の第164回「大学生選手への給与は大リーグにとってマイナス」が掲載されました[1]。

今回は、先日全米大学体育協会や有力カンファレンスが決定した、大学が学生選手に給与を支払うことを認める方針が球界に与える長期的な影響について検討しています。

本文を一部加筆、修正した内容をご紹介しますので、ぜひご覧ください。

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大谷翔平選手の「40本塁打40盗塁」の持つ意味は何か

現地時間の8月23日(金)に行われた大リーグのロサンゼルス・ドジャース対タンパベイ・レイズの試合で、大谷翔平選手が今季40盗塁と40本塁打を記録しました。

これで、大谷選手は大リーグ史上6人目の年間40本塁打40盗塁を達成しました。

大リーグの歴史を振り返ると、初めて30本塁打30盗塁を達成したのは、1922年のケン・ウィリアムズ選手であり、その後はウィリー・メイズ選手(1956年、1957年

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夏の甲子園の決勝戦を終えた京都国際高校と関東一高の選手の健闘を讃える

本日、阪神甲子園球場において第106回全国高等学校野球選手権大会の決勝戦が行われ、ともに初の決勝となった東東京代表の関東第一高等学校と京都代表の京都国際中学高等学校が対戦しました。

その結果、延長10回タイブレークのすえ、京都国際高校が2対1で関東一高に勝利し、春夏の大会を通して初めての優勝を果たしました。京都代表の優勝は1956年の平安高等学校以来68年ぶりのことです。

試合は京都国際高校の

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「総裁選不出馬問題」について岸田文雄首相と石橋湛山に共通点はあるか

8月14日(水)に岸田文雄首相が自民党総裁選挙への不出馬を表明したことは、国内外に大きな反響を呼び起こしました[1]。

党の刷新のためには総裁選に出馬せず、自らが身を引くことが第一歩であるという趣旨の発言を行った岸田首相については、病気により「私の政治的良心に従います」という書簡とともに65日で退陣した石橋湛山の判断を想起する人がいるかもしれません。

確かに、石橋はいわゆる「石橋書簡」において

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「戦後79年」に考える風化する記憶を次世代に伝える試みが持つ大きな意義

本日、1945(昭和20)年8月15日に大日本帝国政府が連合国による日本への降伏要求の最終宣言を受諾したことを伝える詔書を裕仁天皇自らが読み上げた、いわゆる玉音放送が放送されてから79年目を迎えました。

宣戦の詔書や政府声明には、戦争の目的として自存自衛と大東亜共栄圏の建設の2点が挙げられていたものの、実際には日本によるアジアの勢力圏化と人的もしくは物的な資源の徴発がなされ、攻勢時に和平交渉を念

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岸田文雄首相の自民党総裁選不出馬の判断はいかなる意味を持つか

本日、自民党総裁である岸田文雄首相が記者会見を開き、今年9月に行われる総裁選挙への不出馬を表明しました[1]。

記者会見において、岸田首相は新生自民党の姿を国民の前の示すことが重要であり、そのためには何よりも自由闊達な論戦が必要で、自民党が変わることを示す最も分かりやすいことは現職である自らが出馬しないことに他ならず、そのため、総裁選を通じて選出される新しい総裁を一兵卒として支えると発言していま

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