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記事一覧

石破茂内閣にわれわれは何を期待するか

本日、岸田文雄内閣が総辞職し、衆参両院の首班指名選挙の結果、自民党総裁の石破茂氏が第102代内閣総理大臣に指名されました。

新たに発足した石破内閣の顔触れは、石破首相が精通しているとされる防衛政策を側近や気心の知れた人物とともに推進するとともに、総裁選の決選投票前の演説の際に「岸田文雄総理総裁」と繰り返し強調したように、自らの政権を岸田内閣の正当な後継であると位置付けようとする試みでもあります。

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石破茂新総裁は「自由と真実の自民党」を実現できるか

本日、自民党の党本部において総裁選挙が行われ、高市早苗国務相と石破茂元幹事長による決選投票の結果、氏が当選しました。

今回の自民党総裁選は議員票367票、党員算定票368票の合計735票で、第1回目の投票の結果以下の通りでした。

氏名:議員票/党員算定票/合計
高市早苗:72/109/181
小林鷹之:41/19/60
林芳正:38/27/65
小泉進次郎:75/61/136
上川陽子:23/

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自民党総裁選の前日に考える「敗者たちの研究」の重要さ

明日、自民党の総裁選挙が行われます。

1972年の立候補制導入以降では最多となる9人が出馬した今回の総裁選は、第1回投票では当選者が決まらず、決選投票になることが予想されます。

ところで、野党時代を除き、1955年12月の結党以来長期にわたり総裁選の当選者が新たな首相となってきたのが自民党です。

実際、1955年12月の結党以来、1993年から1996年にかけて、そして2009年から2012

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石橋湛山の生誕140年を祝して

本日、1884年に石橋湛山が生まれてから140年目を迎えました。

昨年の没後50年と今年の生誕140年というように節目の年が続いたこと、また石橋が日本の憲政史に残る壮絶な選挙戦を戦い抜いた自民党総裁選が9月27日(金)に行われるということもあり、この2年間で石橋湛山に関する話題が取り上げられる機会が増えてきました。

ささやかながら2003年以来石橋湛山の研究に何らかの形で携わり続け、昨年は『政

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立憲民主党の野田佳彦新代表に求められるのは何か

昨日、立憲民主党の代表選挙が行われ、野田佳彦元首相が枝野幸男前代表との決選投票に勝利して代表に選出されました。

今回の代表選挙に立候補したのは、野田氏と枝野氏に加え、泉健太代表、吉田晴美衆議院議員の4人であり、党勢の伸び悩みから再選が危ぶまれていた泉氏が第1回目の投票で第3位の得票に留まって敗退したことは、事前の予想の通りでした。

また、事前の予想という点では来るべき総選挙に備え、党運営や選挙

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大谷翔平選手の「50本塁打50盗塁」が象徴する野球の新たな段階

現地時間の9月19日(木)にローンデポ・パークで行われたマイアミ・マーリンズ対ロサンゼルス・ドジャースの試合において、大谷翔平選手が3本の本塁打と2つの盗塁を記録し、大リーグ史上初の年間50本塁打と50盗塁を達成しました。

大リーグにおいて真の長距離打者として認められるのは50本塁打です。

一方、年間に50個以上盗塁できる選手は、多くの場合において敏捷ではあっても、長打力に欠けると考えられてい

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ロベルト・クレメンテ・デーは何故9月15日の開催なのか

去る9月15日(日)、大リーグにおいてロベルト・クレメンテ・デーが行われました。

これは、大リーグで通算3000安打を記録し、ピッツバーグ・パイレーツの中心選手として攻撃と守備の両面で活躍しながら、1972年12月31日にニカラグアで起きた大地震の被災地に救援物資を搬送する途中で航空事故により落命したロベルト・クレメンテ選手の功績をたたえるため、没後30年となる2002年に始まった取り組みです。

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トランプ候補とハリス候補による米国大大統領選挙第1回討論会はいかなる意味を持つか

現地時間の9月10日(火)、米国大統領選挙の候補者による討論会が行われ、共和党のドナルド・トランプ氏と民主党のカマラ・ハリス氏が参加しました。

両氏が直接対峙するのは今回が初めてであるとともに、ハリス氏は現職のジョー・バイデン大統領が出馬を辞退したことを受けて急遽民主党の候補者に選ばれただけに、支持者を前にした演説ではなく対立候補との討論において大統領にふさわしい振る舞いをできるかにも注目が集ま

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9人が立候補した自民党総裁選の持つ意味は何か

本日、9月27日(金)に投開票される自由民主党の総裁選挙が告示されました。

立候補したのは、届け出順に高市早苗、小林鷹之、林芳正、小泉進次郎、上川陽子、加藤勝信、河野太郎、石破茂、茂木敏充の各氏です。

9人が立候補するのは、自民党の総裁選が立候補制となった1972年以来では最多です。

自由投票制であった1956年4月5日の総裁選挙では11人が1票以上を獲得したものの、現在とは制度が異なること

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自民党総裁選挙の問題点は何か--1956年の第2回総裁選の事例から

自民党の総裁選挙の歴史の中でも屈指の激しさとなったのは、1956年12月14日(金)に行われた第2回目の選挙でした。

第1回目は当時の鳩山一郎総裁に対する事実上の信任投票であり、第2回目は日本の保守政党にとって初の総裁公選となりました。

臨時党大会の議長を務めた砂田重政は投票に先立ち、次のように述べました[1]。

砂田が総裁選挙を表現するために「わが憲政史上特記すべき事柄」としたのは、それま

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村上雅則氏の大リーグ昇格60周年を祝す

9月1日(日)、村上雅則さんが1964年9月1日(火)にシェイ・スタジアムで行われたサンフランシスコ・ジャイアンツ対ニューヨーク・メッツの試合にジャイアンツの一員として登板し、東洋人として初の大リーグ選手となってから60年を迎えました。

村上さんが日米の野球界の発展と相互交流に果たした役割については、今年1月1日(月)の朝日新聞朝刊の新年特集第4部6面に掲載された私の談話に基づく記事「「大谷時代

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関東大震災の発生から101年目に改めて考える防災訓練の持つ意味の大きさ

昨日、1923(大正12)年9月1日の午前11時58分に関東大震災が発生してから101年目を迎えました。

今年に入ってから能登半島地震や南海トラフの両端での地震など、これまで以上に大型であったり従来とは異なる地域で発生したりと、地震大国と称される日本も、これまで以上に大規模な地震の発生に備える必要がある時期を迎えつつあります。

また、今回の台風10号のように通常とは異なる動きや勢力の台風も発生

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『僕のヒーローアカデミア』の完結で思ったいくつかのこと

去る8月5日(月)、『週刊少年ジャンプ』に連載されていた堀越耕平さんの漫画『僕のヒーローアカデミア』が第430話で完結しました。

2014年7月7日(月)の2014年第32号で連載が始まった際、第1話を読んだ印象はどちらかと言えば特徴のない作品というものでした。

第1話の印象の強弱が連載期間の長短に繋がるという私の経験則に基づけば、『僕のヒーローアカデミア』の連載期間は決して長くならないのでは

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大学生選手への給与は大リーグにとってマイナス

去る6月4日(火)、日刊ゲンダイの2024年6月5日号23面に連載「メジャーリーグ通信」の第164回「大学生選手への給与は大リーグにとってマイナス」が掲載されました[1]。

今回は、先日全米大学体育協会や有力カンファレンスが決定した、大学が学生選手に給与を支払うことを認める方針が球界に与える長期的な影響について検討しています。

本文を一部加筆、修正した内容をご紹介しますので、ぜひご覧ください。

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