G7広島サミットはいかなる意味を持つか

昨日、広島県広島市で開催されていた主要7か国(G7)首脳会議が3日間の会期を終えました。

今回のG7サミットでは、各国首脳が広島の平和記念資料館を訪問し、原子爆弾の犠牲者に献花したことは、7カ国のうち米英仏の3か国が核兵器を保有している実情に即せばG7の結束を強調するための象徴的行為という側面の強いものであったと言えるでしょう。

その一方で、たとえ形式的、象徴的な行為であるとしても、これまで現職の大統領が平和記念館を訪問したのが2016年のオバマ大統領だけであった米国がバイデン大統領の臨席を拒まなかったように、G7首脳会談という場であるからこそ、従来は実現の機会の乏しかった取り組みを達成できたという点は、大いに評価されねばなりません。

また、5月20日(土)に急遽来日したウクライナのゼレンスキー大統領は、その後今回のG7の主役となった観を呈しました。

その行動がつぶさに報じられ、世界中の注目を集める様子は、改めてゼレンスキー大統領の存在感の大きさを示すものでした。それとともに、離日に際して、Twitterに岸田文雄首相をはじめとする各国首脳への謝意を述べる投稿を行うなど、適時性のある情報の発信は、ウクライナ側の取り組みの入念さを改めて印象付けるものとなりました。

特に、今回のサミットではウクライナ情勢が重要な議題であっただけに、当事者であるゼレンスキー大統領がオンラインではなく対面で参加したことは、それだけウクライナがG7によって代表される西側諸国を頼りとすることを意味していました。何より、ゼレンスキー大統領が来日の際に利用したのがフランスの飛行機であったことは、中台問題では独自の路線を歩むかのようなフランスがウクライナ問題についてはG7の枠組みから逸脱しなことを示すものでした。

これに対して、グローバルサウスと呼ばれる新興国や途上国との関係については、G7側の態度に改善の余地があったと言えるでしょう。

例えば、G7とグローバルサウスによる初の共同声明が食糧安全保障のみであったことは、G7側がグローバルサウスとどのような関係を築くべきかを模索していることを推察させるとともに、当面は両者の関係を限定的なものにとどめたいという思惑を示唆します。

こうした様子は、自覚的であるか否かを問わず、G7側にかつての第三世界と先進諸国との垂直的な関係をグローバルサウスに対しても適用しようとするかのようです。

しかし、グローバルサウスがかつての第三世界と異なるように、G7も経済や政治の面で往時の存在感を失っているという点は明らかです。それだけに、今回のような対応は、G7がどこまでグローバル諸国との関係を良好なものにできるかを考える際に重要な手掛かりを与えると言えるでしょう。

ところで、今回は、G7サミットとしては初めて核軍縮に関する単独の共同声明である「広島ビジョン」が公表されました。

現行の核兵器不拡散条約の枠組みの中に留まり、核兵器廃絶を主張しないという点で不十分であるといった批判があるものの、G7各国が核軍縮を重要な課題として真摯に議論したことの意義は大きいものです。むしろ、問題は核兵器の不拡散を改めて訴えた宣言が十分なものであったか否かではなく、今後G7各国が「広島ビジョン」をどのように発展させるかという点にあると言えるでしょう。

その意味で、今回にサミットは世界で最初の被爆地である広島市だからこそなし得た成果を含むものであり、G7内の結束の強化が実現した機会であるとともに、いかにしてG7外への働きかけと存在感を発揮するかがより一層切実な課題になったと考えられるのです。

<Executive Summary>
What Is a Meaning of the G7 Hiroshima Summit? (Yusuke Suzumura)

The G7 Hiroshima Summit was held on 19th to 21st May 2023. On this occasion, we examine a meaning of this event based on G7's influence on international society.

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