マガジンのカバー画像

大学の話

83
大学に関することのあれやこれ
運営しているクリエイター

2019年6月の記事一覧

大学を出れば選択肢が広がる、とも限らない

よく、就職の選択肢を広げるためによりいい大学にいく、いかせる、という話をきく。
(なにがいい大学かはここでは議論しない。世間一般の印象による「いい大学」という意味)
しかし、大学にいけば、選択肢は本当に広がるのか、というと正直疑問である。

世間、とくに、家族、親戚、ご近所、親の職場の人、同級生などによって構成される近い世間の、無言の圧力や要請によって、就活生の選択肢は驚くほど狭められている。

もっとみる

数が多いとひと仕事

数量が多いということは、それだけでものごとの難易度を上げる。
一つ一つはごく簡単ですぐに終わるようなことも、数が多くなると結構な時間がかかり、一仕事になる。
少ないうちは手作業で何とかなるものも、数が多くなるとやってられなくなる。

この、やってられなくなる臨界点はどのへんか、ということに少し興味がある。
人によって面倒くささ耐性に差があるので、臨界点も相当なばらつきがありそうである。

もし人よ

もっとみる

事務は楽で簡単な仕事か

大学職員・事務職に対する印象は、どんなものだろうか。

どこにおいても事務職は全般、楽で誰にでもできる簡単な仕事だと思われがちだが、(実際、面と向かってそう言われることもあるのだが)私はそうでもないと思っている。

いろいろな処理フローを把握し、遅滞なく的確に処理し、おさまるべきところにおさめていく。
決められたとおりに間違いなく処理するためには、そもそも決められていることを知らなければならないし

もっとみる

研究者は大学に所属するがゆえに研究時間をなくすというジレンマ

大学院にいた頃、私はひじょうに辛かった。苦しかった。きつかった。
そう言うと、きっと研究が大変だったのだろうと思うかもしれないが、そうではない。
辛かったのは、注力すべきことが複数あって力を分散させなければならなかったこと、これに尽きる。

私はお金がなかったので、奨学金とバイトで学費を稼いで、申請の上、学費を分割納入させてもらっていた。
研究をしたくて大学院に入ったのに、学費や生活費のためにはお

もっとみる

向き不向き。

今年からおなじチームで働くKは、年齢の上では私の2つ下であるが、職場の年次としては3つほど先輩にあたる。
Kは、元々この大学の卒業生で、物事への問題意識も高く、自分の意見を持って、学生とも教員とも上層部とも誰とでもきちんとした大人の会話ができる。
私からすると、この仕事(大学職員)にたいへん向いているように見える。
しかしKは、自分は何かをきちんと決められたとおりに履行し、はみ出さずにきっちり収め

もっとみる

会議は演劇

大学の会議というものは演劇じみている。

会議上の発言は
誰かの筋書きの上を滑っているような感じがする。

それはファシリテーターだけがそうなのではなく
構成員すべてがそのようであり
誰の発言も演技っぽく聞こえる。

用意してきた言葉を披露し
人の意見の拾い方も完璧なセリフ回しみたいだ。

なにかを掟で禁じられてでもいるかのように
みんながみんなそうなのはとても気持ちが悪い。

いっぽうで会議前後

もっとみる

奨学金の話

私は大学院の二年間、日本学生支援機構(JASSO)の第一種奨学金(無利子)を受けていた。
月約8万円を2年間で、計200万の借金である。
期間が終わる頃に出した免除の申請が通り、私は半額免除を受けて借金は100万円になった。
返済期間もそのおかげで半分で済み、約8年で完済した。

免除申請には教員の推薦が必要で、私のときは、その年の推薦を出せるのは研究室で1人と決まっているようだった。(おそらく学

もっとみる

大学は教育機関か研究機関か

大学は教育機関なのか、研究機関なのか。
自分の大学観として、どちらが強いか。
大学の先生は、教員なのか、研究者なのか。
どっちのつもりで接しているのか。

このことは、仕事上の考え方、つまりは大学のあらゆる制度設計にかなりの影響を及ぼすと思う。

先生たちは、研究者と自認している方が多いだろう。大学院で研究をし、その後も研究を続けるために大学に職を得ていて、後進を育てたり、研究の成果を還元する手段

もっとみる

世界は素人によってつくられている

思うに、世界には職人の世界と素人の世界があって、サラリーマンのほとんどは素人の世界だ。

素人が思いつき、素人ができる策を素人が作り、
素人が素人に説明し、素人が意思決定して素人に命じる。
そこでは高度すぎることは継承できないので淘汰されてしまう。
素人に職人技を期待してはいけない。

集団は誰もが素人であり、適応してもまた異動によって強制的に素人になる。
ジョブローテーションによる人材育成、フレ

もっとみる

全国の文学部生へ

5月も終わり、大抵の大学ではサークルの新歓も終焉を迎え、新入生も大学生活に慣れてきて、先輩からいいことも悪いこともズルいことも一通り教わった頃だろう。
そして就活生は建前上の面接解禁日らしいので、これから説明会で、面接で、嫌というほど自己紹介をする日々が待っている。(もちろんすでにたくさん自己紹介をして大いに傷ついているだろうことは想像に難くない)

所属がバラバラの集団に入ると、自身の学部を名乗

もっとみる