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枝瀬優
2021年12月30日 16:37
電子レンジで温めなかった惣菜のからあげ気の抜けた三ツ矢サイダー削ってすぐに折れた2Bの鉛筆あと一歩のところで点滅する信号TLが更新されない平日昼間のTwitterピントが合っていなかった夕日の写真冷たくなっていく理科室の机夕日がなめらかに滲む黒板日誌に記される誰かの今日グランドからきこえる野球部の掛け声リズムよく響く卓球のラリー職員室から溢れる珈琲の香り下駄箱にきれいに揃え
2021年12月26日 19:09
からっぽになったときほど涙が溢れるのはどうして視界がゆるやかに滲んで世界を曖昧にするからっぽのわたしたちに丁度いい世界風で乱れた前髪の隙間から見る夕陽の美しさはいつまでもわたしだけのもの君の感情を知らない昨日までがとても心地よかったんです知ってしまったら戻れないから嫌いなものも好きなものも、知ってるだけでいいの理解しなくていいのに、理解することが君のためとか言ってくるあなた嫌いだよ
2021年11月22日 16:40
理科室の窓から覗く裏庭園芸部の育てている夏野菜の小さな畑不格好でもおいしい未熟でなにも知らなくても許されるわたしたち如雨露で恵みの雨を束の間の魔法使いごっこホースの先をぎゅっと握って遠くに水撒き用務員のおじさんはいつでもいるのにいつもいなくてきょうも落ち葉がまとめられている花壇の隅にアルコールランプの炎はいつも妖しい蓋を被せて消すとき息をとめた
2021年10月21日 19:28
「普通」を素晴らしく尊く感謝すべきだと云う全てが尊い病の人間が苦手だ普通を特別だと思った瞬間にそれは「特別」になっていた普通は意識しない存在であればいい平等に訪れるそれらを特別視する必要を感じない呼吸食事朝の目覚め夜の眠りあなたの存在世界の存在感情を尊いものだと神格化する神様は存在しないから普通じゃない普通は他人に認めさせることではなくて今日も明日も明後日
2021年9月15日 21:05
放課後の音楽室試験期間で部活動は停止中文化部なのに体育会系面する吹奏楽部のマウントが苦手です合唱祭の伴奏はみんながちやほやしてきてピアノが嫌いになりかけたよピアノの鍵盤にそっと ひとさしゆびをわたしだけがまあるい音に包まれて世界にひとりぼっち空気が震えてわたしも呼吸してこのままこの音と一緒に窓から流れて消えてしまいたかった言葉よりも音は自由で不完全で美しいから島村楽器に寄り道して
2021年8月27日 22:12
美術館の企画展示室いちばん広い展示室の中央に置かれているベンチに腰掛けて目の前の作品だけを静かに見つめる時間あの時間をつくれるひとが羨ましかったそのうち作品を見ているのは瞳だけできっと今晩の夕食の献立なんかを考えていたり玄関に飾る植物を選んでいたりするゆるやかに現実が混じっているいつも埋まっているベンチはおとなだけの特権であとすこし詰めてくれたらひとり座れる微妙な空白はおとなた
2021年8月21日 15:12
校舎裏のプール夏限定で僕たちの学校生活の一部となる去年の一年生が育てた朝顔が今年はプールのフェンスに絡まって植物係だけが青い花を見ていた朝直射日光に焦げるプールサイドをともだちの肩つかみながら走らないように心だけ走って塩素のにおいと泳げない僕の夏の記憶のにおい
2021年8月19日 12:47
こどもの頃、掛け布団から足先がはみでているとおばけやなんだか怖いものに引っ張られるって根拠もない恐怖に怯えていた暗闇に紛れてやってくるそれらに恐怖して夜が怖かった暗いことが怖かった純粋な恐怖はいつのまにか居なくなって夜に暗闇に安心しているおとなのわたしたち
2021年8月12日 16:59
アイスの当たり棒がでたこどもの頃はいくら願っても当たらなかったのに興味が薄れた頃にやってくるなんて意地悪ねもうすこし暑ければ午後のおやつに引き換えてしまいたかったけれど君との約束がなくなってしまったついでに買っただけだからほんとうは当たりなんてほしくなかったよ神様が味方してくれないのはいつものことなのにね遠くで蜩が鳴いてるすべて汗になって流れたわたしのなかの水分は涙になれなかった
2021年7月28日 21:27
あと13時間で世界が終わりますなんとなくチャンネルをあわせたワイドショーすごく派手なワンピースを着た女子アナが真剣な表情で原稿を読み上げてる翌日でも1週間後でもなくて13時間後がいいのすこし焦って開き直って君と目が合う回数がいつもより増えて昨日と同じかすこしだけ背伸びした生活をしておやすみなさいって明日を生きる魔法を唱えて叶わないことに愛しさを感じて終わりたいね
2021年6月24日 20:35
愛されなかった幼少期同級生からのいじめを制服と大人から隠していた十代うっかり魔が差したリストカットぽたぽた垂れる真っ赤な血液に興奮と安心感恋した相手はとんでもない甲斐性なしで捨てられたのは自分でそんなわかりやすい壮絶な過去がひとつでもあるとわかりやすく周りが食い付いてくるねオマケでいまの自分は幸せですって顔してさ悲劇って美談にしやすいでしょそういう人間って違う世界のいきものみたいで
2021年6月22日 12:51
下駄箱からスニーカーがなくなった放課後廊下の蛍光灯がつく前の夕方未満の校内踊り場にたまる影はどこまでも深い闇で職員室からおとなとこどもの境界線をつくる珈琲の香り音楽室の窓から吹奏楽部の未完成な曲が校庭にゆるやかに響く校舎と体育館を繋ぐ廊下を脱線して、上履きのまま裏庭にでる生活の時間に植えた朝顔が眠っていた
2021年6月12日 22:44
君がいない世界卵焼きに殻が混じっても気にしなくなってミリ単位で前髪を整えることをやめて階段から遠い6号車に乗らなくなってバスから外の景色を眺めなくなって旧校舎の自販機のカフェオレは売り切れることなくお弁当の卵焼きはぜんぶわたしが食べる放課後の図書室は素通りしてコンビニの新作スイーツは試さなくなってノートに落書きされることなくテスト勉強して明日の天気予報を今日のうちにチェックする
2021年5月20日 22:23
銀色のボウルで卵をとく朝日がボウルに反射して、黄金色のいきもの未満を丁寧に菜箸でほぐして夢の淵にひっかかったままの心もこちらがわに連れ戻す白いお砂糖の依存性は麻薬と似ているんだってスイパラでこっそり君は教えてくれたねそれでもわたしたちは逮捕されない女の子はお砂糖とスパイスの配分がたいせつです甘く薄く焼いた卵焼きをくるくるとからだとこころのシンクロを確かめるように菜箸はいつまでたっ