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美術館の企画展示室
いちばん広い展示室の中央に置かれているベンチに腰掛けて
目の前の作品だけを静かに見つめる時間
あの時間をつくれるひとが羨ましかった
そのうち作品を見ているのは瞳だけで
きっと今晩の夕食の献立なんかを考えていたり
玄関に飾る植物を選んでいたりする
ゆるやかに現実が混じっている
いつも埋まっているベンチはおとなだけの特権で
あとすこし詰めてくれたらひとり座れる微妙な空白は
おとなたちの心の距離
芸術なんてわかったふりしかできないわたしは
まだこどもなんだって
型にきっちり嵌まることが正義だって信じてるから
知らないカップルのあとに続いて
諦めてすすむ順路

作品をまとめて本にしたいです。よろしくお願いします。