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朝茶は七里帰っても飲め 五杯目(最終話)
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五杯目 良い茶の飲み置き
まだ夜明け前、カインが迎えに来て、私はこの五ヶ瀬荘を発つ支度をしていた。
「本当にもう行ってしまうのね」
アンナが起き出して声をかけてきた。
「すみません、いくら刺客の記憶を消しても、刺客から連絡のないことを訝しんだ者たちにばれるのは時間の問題ですから」
カインの言葉に、アンナは俯きながらも納得してくれた。
「わかった。みんなを起こし
朝茶は七里帰っても飲め 四杯目
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四杯目 茶酒盛り
「嬉野ユウリはいない。こんな時間に非常識だぞ」
キリーさんがドア越しに、突然やって来た外の男性に言う。
「言ったはずです、隠しても無駄だと。調べはついています」
男性の冷たい声が聞こえる。小声でカセさんが言う。
「キリー、入れるなよ!」
「あったりめーよ!」
キリーさんが小声で返す。
「手荒な真似はしたくなかったのですが、仕方な
朝茶は七里帰っても飲め 三杯目
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三杯目 茶碗の飯粒がきれいにとれたら雨になる
パリン。
手が滑り、昼食後に片付けようとして落とした茶碗が割れた。アンナとアンリちゃんに謝りながら、ほうきとちりとりを借りて処理する。嵐の前の静けさにも終わりが来る不穏さを感じ取る。
五ヶ瀬荘に転がり込んでから三日が過ぎた。アンナは毎日、献身的に看護してくれた。アンリちゃんはあれからすぐ元気になって
朝茶は七里帰っても飲め 二杯目
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二杯目 茶漬けにひしこの望み
目を覚まして窓を見遣ると、まだ日は高そうだ。近くの衣装ケースの上に置かれた時計を見ると、十四時をまわったところだった。
「ユウリ、起きてたのね。あのトランク、どうしてお茶がいっぱい入ってるの? 薬を持ち歩くのはまだわかるけど」
アンナがこちらに来て、不思議そうに尋ねてくる。
「お茶は体に良いですし、好きなんです。飲み慣れたお茶がいつ
朝茶は七里帰っても飲め 一杯目
一杯目 お茶を濁す
パリーン。
「おい! 奴が窓から逃げ出した! 追え!」
「探せ! まだこのあたりにいるはずだ! 奴は手負いの身。そう遠くまで逃げられるはずがない!」
近くで叫び声が聞こえる。このトランクとこの身を渡すわけにはいかない。
数時間前、新緑のまぶしい八十八夜を迎えた日の夜のことだった。世間は大型連休真っ只中。ラボも私以外はみな有給休暇をとっており休みだが、私は一人、お茶を飲
指輪なら、はなまる指輪専門店へ
ポストの中身を整理していると、春色の葉書が目に入った。埃を被った小箱に目を遣る。あの指輪を蘇らせられるのだろうか。
カランカラン。重い扉を引くと、古風な喫茶店風の店内で、にこにこ顔の若い女性と初老の男性が迎えた。
「いらっしゃいませ」
「この葉書を読んで来たんですが」
「ありがとうございます。こちらにおかけください」
椅子に腰かけ、鞄から指輪を取り出す。
「この指輪を直していただけないでし