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士郎正宗先生の未来予測は本当に正しいんだろうか?
今回は、まず「ドミニオン」のことから書き始めてみたい。
これは「攻殻機動隊」「アップルシード」等で知られる、士郎正宗先生の「第3の傑作」といったところだろうか。
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「美少女+戦車」という組み合わせなら誰しも「ガールズ&パンツァー」を思い浮かべるだろうが、その元祖といえるものはやはり「ドミニオン」だろう。
実はこれ、3度アニメ化されていて、
①OVA「ドミニオン」(1988年)全4話
②OVA「特捜戦車隊ドミニオン」(1993年)全6話
③OVA「警察戦車隊 TANK S.W.A.T.」(2005年)全1話
という3つがある。
一番お薦めするのは、②だな。
①は中途半端な終わり方で、すっきりしない。
③はフルCGアニメになってて、そのCGが酷い。
というわけで消去法的にも②になるんだが、これらを見るには、とりあえずネットで「newdominion tankpolice」と検索してみてください。
多分、無料動画が見つかるはず。
そうそう、「ドミニオン」といえば、アニメそのものよりもこの音楽が有名なんじゃないだろうか?
この作品の雰囲気は、かなり「機動警察パトレイバー」に近いと思う。
主人公の尾崎レオナとか、「パトレイバー」の泉野明とほぼ同一のキャラだし。
とはいえ、SF設定的に面白いのは本作の方だよ。
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<近未来の舞台設定>
・大気汚染が深刻で「細菌雲」という有毒ガスが発生しており、その濃度が高い日には防毒マスクをつけることが必須。
・汚染された大気への対抗手段として急激にバイオテクノロジーが進歩し、ガイノイドという人間とは見分けのつかないアンドロイドが誕生している。
・義体テクノロジーも進歩していて、サイボーグも数多くいる様子。
・ガイノイドやサイボーグを悪用した、人間では対抗できないテロが頻発している分、取り締まる警察にも武装強化が必要とされ、装甲戦車部隊が組織されている。
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士郎正宗原作なのに、なぜかこの作品では「電脳」が普及してない世界観になっている。
まぁ、「攻殻」ではあれほど電脳を悪用したテロが頻発してたからね・・。
あるいは、廃れたのかもしれん。
だって、「攻殻」と「アップルシード」は世界線が繋がってるらしいのに、後の時代となる「アップルシード」の方ではほとんど電脳が出てこないんだよ。
私の想像として、その契機となったのが「2045」の事件じゃないだろうか?
この「2045」の中では最後、全人類の電脳がハッキングされるという事態に陥り、世界中の人々が現実を認識できなくなった、というオチだったよね。
これを解決する方法は、もはや「電脳全面廃止」しか手がなかったと思うのよ。
つまり「ドミニオン」は、「攻殻」⇔「アップルシード」のちょうど中間の時代設定で、ふたつを繋ぐリンクのような作品になってるんだと思う。
分からんけど。
じゃ、仮に「ドミニオン」が「攻殻」より少し先の未来を描いたものだとして、そこで気になるのは「ARISE」の中で草薙、クルツ中佐の両者が語っていた未来ビジョン、果たしてどっちのビジョンが正しかったんだろうか、ということ。
クルツ「情報化は(利益追求)システムになるか、(システムに)隷属するかの選択を迫ります。
今必要なのは(利益追求)システムと一体化し、人を正しく選別するネットワークです」
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草薙「今必要なのは、(利益追求)システムを裁く公正の執行機関です」
![](https://assets.st-note.com/img/1720451118420-4SkvrWMwgS.jpg?width=800)
このふたりの軍人、言ってることがまるで真逆なのよ。
つまり、上の両者の考え方を分かりやすくまとめると
クルツ⇒これからの軍は企業と一体化していく
草薙⇒これからの軍は企業と闘っていく
クルツはお互いの考え方の違いを理解しつつ、
「負ける側につけば未来はない。
お前と私のどちらが消耗品か、すぐ分かる」
と草薙に語っていた。
国vs企業
これは、士郎正宗全作品における共通テーマである。
ちなみに、「ARISE」の中で草薙とクルツの攻防には決着がついたといえず(変な邪魔が入ったので)、この問題は先送りになった、といっていいだろう。
そして「ドミニオン」は、まさに国vs企業の攻防がメインステージである。
国家(レオナたち)と敵対する企業の名は、「大日本技研」。
これ、士郎ファンなら誰しもがよく知ってる企業名のはず。
「SAC」シリーズにも出てきたでしょ?
![](https://assets.st-note.com/img/1720453284465-R04arvXx4o.jpg?width=800)
そう、こいつが仕切ってた企業だよ。
こいつ、めっちゃタチ悪い奴だったよね。
で、この大日本技研が「ドミニオン」でも暗躍してるわけだけど、表向き、ここは市で最も多額の税金を納めてる企業であり、行政側としても潰すわけにはいかんという、若干複雑な構造となっている。
そして大日本技研はそれをカサにしてやりたい放題、自分の会社に不利益な法案を通そうとする市長を殺そうとテロリストを差し向けてきたりするわけだ。
なんせ兵器製造会社ゆえ、そのテロリストに持たせる兵器のレベルもハンパない。
もはや、内戦状態といっていいだろう。
「ドミニオン」では、かろうじてテロを未然に防ぐまでを描いているものの、しかし大日本技研は潰されることもなく(役員の交替はあったらしいが)、結局ここでも問題は先送りにされている・・。
じゃ、この国vs企業の攻防に決着がつくのはいつのことになるのか?
それは、「アップルシード」まで持ち越されるんだよ。
時代設定として、「アップルシード」は士郎作品の中で最も先の未来。
こちらの年表を見てもらおう。
<「攻殻」関連作品時系列>
【西暦2011年】
・草薙(当時6歳)の乗った飛行機にミサイル直撃、草薙は一命とりとめるも全身義体となる(「東のエデン」)
【西暦2027年】
・草薙、生まれ育った501機関を脱退、攻殻機動隊始動(「ARISE」)
【西暦2029年】
・人形使い事件(「GHOST IN THE SHELL」)
・501機関壊滅(「ARISE」)
・草薙、失踪?(「GHOST IN THE SHELL」)
【西暦2030年】
・笑い男事件(「SAC」)
【西暦2032年】
・少女型愛玩人形による惨殺事件(「イノセンス」)
・個別の11人事件(「SAC」)
【西暦2033年】
・草薙、失踪?「「SAC」)
【西暦2034年】
・傀儡廻事件(「SAC」)
【西暦2045年】
・全世界デフォルト(「2045」)
・ポストヒューマン事件(「2045」)
・草薙、失踪?(「2045」)
【西暦2125年】
・第5次世界大戦(「アップルシード」)
【西暦2127年】
・デュナン、オリュンポスに移住し、ESWAT入り(「アップルシード」)
・オリュンポスは、総人口の約半数がバイオロイドで構成された国家である(「アップルシード」)
![](https://assets.st-note.com/img/1720462977198-V4LnG8z5or.jpg)
色々矛盾があるのは「世界線が違うから」ということで納得してもらうとして、問題は2045年~2125年、「失われた80年」というべき空白が存在することだよ。
おそらく、この「80年」のどこかに「ドミニオン」がハマるんだと思う。
で、「アップルシード」の世界観だと、既に「日本」という国家は存在しておらず、代わりに「ポセイドン」という巨大企業が疑似国家として存在してるのね。
この「ポセイドン」、「攻殻」ファンならお分かりだろう。
そう、これって「大日本技研」のことさ。
既に「SAC2ndGIG」で、大日本技研の別称「ポセイドン」の名は出てきていた。
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どうやら「アップシード」の設定だと、日本は国として破綻し、その莫大な負債を大日本技研(ポセイドン)が受け持つことで国家のオーナーとなったようだね。
そうか、そういうオチか。
結局、草薙vsクルツの主張の対立は、クルツの読みの方が正しかったようだ。
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これはいわゆる
「国の民営化」
だね。
士郎先生の読みはつまりそういうことだろうし、「全世界デフォルト」とか起きようもんなら、マジでそうなりかねない。
いや、日本企業がオーナーというならまだしも、GoogleとかAmazonとかの海外資本がオーナーというのは嫌だなぁ・・。
もはやそうなると、民族の概念もフリーになってしまうのか?
よく分からん。
ただ、士郎先生は常に「反企業側」に主人公を据えてて、必ずしも国の民営化をよしと考えてはいないっぽい。
うん、私も日本は日本であってもらいたい。
こんなの、誰だってそうだよね?
![](https://assets.st-note.com/img/1720463065254-PpqXCWV5Gg.jpg?width=800)
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