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「未完成」を力に変える工夫 ツァイガルニック効果の活かし方とは

「キリの悪い状態って気持ち悪いな。でもこの感情は使い方次第かも?」

自分の集中力や関心の力の強さについて考えていた時に知ったのが「ツァイガルニック効果」という言葉。これは心理学的なある現象のこと。この心理効果はうまく使えば、自分の行動をより生産性高い行動につなげられる可能性があります。

そもそもこの効果はどういったものなのか、その活かし方について考えます。

「ツァイガルニック効果」とは?

ツァイガルニック効果
『人間は達成できなかった物事や、中断・停滞している物事に対して、より強い記憶や印象を持つ』という心理学的な現象のこと。

心理学者ブルーマ・ツァイガルニクが提唱されたので、この名前がついています。

人は誰しも完結、完了した物事に対してはスッキリけじめがついて、ほかの物事へ意識を移すことができます。一方で、未完成・不完全なものに対しては、何かスッキリしない感覚を感じてしまうものです。常にどこか頭の片隅にある感じ。気になって仕方ないモヤモヤした感じですね。

「進行途中」というステータスが記憶に残り、「完成させてスッキリしたい」という欲求につながります。こうした欲求が記憶に影響し、深く印象付けられると考えられます。

身近にあるツァイガルニック効果

「ツァイガルニック効果」という言葉自体はあまり聞きなじみのない人がほとんどですが、意外に私たちの周りで使われてる心理テクニックです。

例えば「続きはウェブで」、「続きはCMのあとで」といった続くことを訴求するメッセージ。テレビ番組でも「このあと衝撃の事実が!」などと言われると気になって観てしまいますね。これは制作者サイドが意図的に未完成の状態をつくりだし番組への関心を高めている工夫です。

こうした「続き」が気になる展開はドラマではよく見られます。放送時間終了ギリギリに、新展開の前振りが入ったり。「気になって仕方がない」という感覚が、そのドラマへの関心を高めます。前回のクールの半沢直樹は正にその連続で私もぐいぐい引き込まれました。

この「ツァイガルニック効果」の事例でよく見聞きするのは「サグラダファミリア教会」です。アントニオ・ガウディが設計した世界遺産の教会はガウディが亡くなった今もスペインのバルセロナで建設が続いています。建設が始まったのが1882年で、完成予定は2026年とも言われています。140年以上にわたって「つづく」の状態で、正に未完の魅力に人々は魅せられてしまっています。

ツァイガルニック効果を仕事に応用する

「中途半端な状態」=「関心をひく」という心理的なギミックをうまく活用すれば、私たちの仕事にも良い効果を引き出せるかもしれません。その活かし方を見てみましょう。

①キリの悪いタイミングであえて休憩する

普通ならキリの良いところで休憩に入りたいところをあえて、まだやることが残っている状態で休憩するというテクニックです。例えば、アイデアを考えなければならないけど、なかなか良い案が出ない、そんな時が日常よくあります。その時は、あえて中途半端なタイミングで休憩します。休憩中でも頭の片隅にアイデアについて頭はぐるぐる回っています。公園を散歩したり、コーヒーを飲んだりして休憩している時に、ふと良いアイデアが浮かんだりします。

人間の脳にはDMN(デフォルトモードネットワーク)といういわゆるアイドリング状態の活動領域があります。そこに預ける感覚です。「アイデアが降りて来るのを待つ」という感じでしょうか。アイデアがもっと欲しいな、と思っている仕事は意図的に中断、休憩してみるとツァイガルニック効果により、脳が良い仕事をしてくれるかもしれません。

②会話の最後に宿題をつくる

仕事で良好な関係を作りたい人に対して、このツァイガルニック効果は有効に使えます。あえて自分で「宿題をつくる」というテクニックです。例えば共通のテーマで会話ができた時に、そのテーマに関する追加情報をチラ見せして会話を終えます。「めちゃくちゃ良い店見つけたんですよ。またお話しますね」何て言われると、気になりますよね。

この話にはまだ先がある、というニュアンスを残して宿題をあえてつくった状態で話を終える。そうすることで、相手の関心を引き出すことができます。前述のテレビ番組での「このあと衝撃の事実が!」を会話の中でやるイメージですね。話が上手な人は、自分の話に関心を引き付けるのがうまいです。そこにはこうした心理効果が隠れているのかもしれません。

③伸びしろを残した話方

例えばプレゼンをする場合、誰しも完璧に失敗なく終えたいと思いがちです。しかし、キレイにかっこよくまとめることと、相手の関心を得ることは必ずしも一致しません。

例えば、新入社員の挨拶で、理路整然と過去の経歴と自分のビジョンを語るAさんと、たどたどしくも熱っぽく粗削りな自己紹介をするBさんがいた場合、意外にBさんの方が記憶に残ったりします。

「不完全だけれども、熱のこもった話」は人の心をつかみやすいです。それはその人の成長の伸びしろを感じるからかもしれません。「力になってあげたい」、「かわいいヤツだな」といった、理解者や協力者が集まったりします。そんな人は「成長に続きがある」人ではないでしょうか。不完全さは見方を変えれば伸びしろであり「成長の余白」です。そこをチャームポイントに会話すれば、人の心に響く会話ができます。

まとめ

人は「キリよく終わらせたい」と思うものです。未完成・不完全なものは「気持ち悪い状態」とも言えます。しかし、実はこの状態は使い方次第で良い効果を発揮します。

未完成・不完全なほど記憶や印象に残り、完成・完全に近づけたいという欲求が生まれます。このツァイガルニック効果は自分の脳を効果的に活用する工夫としても活かせますし、良好な人間関係構築にも一役買いそうです。

不完全さは「成長の余白」とも言えます。そう考えると、我々は「完璧・完全」な状態など目指す必要はないのかもしれません。互いの「成長の余白」を理解し合い、そこを補い合う関係が作れたら、それは相手への関心を持ち「続ける」関係なのかもしれません。

改めて、未完成、不完全さの活かし方を考えてみてはいかがでしょうか。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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