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エッセイ風味

10
割と読みごたえがあるかもしれない
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時空を超えて誰だよ選手権

時空を超えて誰だよ選手権

本を読んでいる時、近くにある紙切れを栞として挟むことがよくある。

一応、お気に入りのブランドタグや撮影用フィルムの切れ端を栞としてストックしているのだが、読書を中断したい時にわざわざそれらを仕舞ってある場所から出してくるのが億劫なのだ。だから使用済みのメモ用紙とか、さっき行った買い物のレシートとか、くちゃくちゃの付箋とか、そういう机の上にあるどうでもいいものを使ってしまう。

最近はもらった名刺

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日記 新世界、ねこ、新世界

日記 新世界、ねこ、新世界

5/11

朝起きる。今日は就活の合同説明会に行く。

とうとうこの時が来てしまったか…と思う。今年M1で就活する年なのは、それはそうなのだけれど、こうして就活イベントに実際行くとなると始まった感じがさざ波みたいに押し寄せてくる。ヤダナア

そしてバイトが見つからない。ペットショップとテニススクールの事務、2つ落とされた。月の収入がないから就活なんかよりこっちのほうがよっぽど大問題だ。未来のことよ

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存在の脆さを前にして

存在の脆さを前にして

印象的な写真を撮る人がいた。

日常の中のささやかな自然、登山で出会った雄大な自然を収めた写真。

派手な色味ではないのに目を引くものがある。風景写真というのは意図的に人の気配を消したものが多いと個人的に思っているが、この人が撮ると撮り手の存在がなんとなく感じられてあたたかさがあった。

実際に会ったことはない。

ほんの少しだけメッセージのやり取りをしたこともあったが、SNSにアップされた写真を

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旅する自転車

旅する自転車

自転車は送料が高い。でかいからだ。

なぜそんなことを気にするのか。三年間乗った愛車を手放すことにしたからである。

ARAYAのランドナーと呼ばれるタイプに乗っていた。見た目はロードバイクだがタイヤが太くて悪路でも走れる。スポーツタイプには珍しくママチャリみたいな泥除けが付いていて、専用のパーツとバッグを使えば荷物を前後にどっさり載せられる。

このランドナーというのは本来日本一周のような長距離

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人生の節目、目は節穴、研究は節足動物

人生の節目、目は節穴、研究は節足動物

大学生活の終わりが来た。

4年間は一瞬で過ぎていった。劇的な何かが起こることはなくて、ゆるやかな毎日にちょっとずつ変化がある日々だった。

まず最初にこれを言わないと始まらんだろう。何といっても2020年度入学である。入学と同時に緊急事態宣言、家の外に出ることすら憚られ、知らない土地での初めての一人暮らしを誰とも会わずに過ごした。

授業はフルリモート。そもそもリモートという概念がコロナ渦で始ま

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仕出し弁当とのたたかい

仕出し弁当とのたたかい

通っていた幼稚園は給食が出ていた。

正確に言うと、ご飯かパンは持参しないといけなくておかずだけの給食だったような気もする。年長になったら小学校に上がるための準備だといって牛乳が一緒に出ていた。あの200mLの小パックではなくて、家庭用の1Lパックを何本も給食のたびに職員室から先生が持ってきていた。牛乳専用のコップを園児たちが持参していて、そこに先生が毎回注いでくれたのだ。複雑な給食システムだなと

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逆立ち

逆立ち

幼稚園の頃のことを思い出した。

あれは年中だったか、年長だったか。ある程度の文字が読めるようになった年齢。

名札や体操服のゼッケンはひらがなで書いてあるから、自分や友達の名前を読むことができた。

ある時、みんなの名前を逆から読むという遊びが流行る。
友達同士で逆さに名前を呼び合い、語感を面白がるというもの。

自分のフルネームは逆から読んでも当時の感性からしたらぜんぜん面白くなくて(今でも別

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当たり前だと思うなチェーン店

当たり前だと思うなチェーン店

サイゼに行くと決まった時、喜びで踊りだす大人はいないらしい。まじかよ。

私はド田舎出身だ。「ド」がつくのでもちろんそんじょそこらの田舎とはわけが違う。

サイゼはおろかバーミヤンも松屋も行ったことがなかった。市内にないのはもちろんだが、隣町まで行ってもそんなものは存在しない。

なにせ市で一番高い建物といえば11階建てのマンション、最も街中な場所で電車もバスも1時間に一本、学校のグラウンドには猿

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肉圓

肉圓

この世に美味い食べ物は星の数ほど存在する。

一方で食材の新鮮さや調理に問題があって、なんか微妙だな…という料理に出くわすことも時にはある。が、稀だ。美味しいものの方が多いと思う。

特に苦手な物はないし変な郷土料理とかでも全然食べる私にとって、不味い食べ物というのは出会うことの少ないレアキャラだ。

だが、そんな自分に鮮烈な不味さを残した強者がいる。

そいつの名前は肉圓。バーワンと読む。

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フィッシュアンドチップス

思い出の味というものは誰しも持っていると思う。

小さい頃に食べたおばあちゃんの料理だとか、風邪の時に食べたプリンだとか。当時の記憶と結びつくと、本来の味以上の「美味しさ」がそこには残る。

時は遡り13歳、中学ニ年生。

オーストラリアに行った。短い時間だったけれど毎日本当に楽しくて、見るもの全てが面白くて学びだった。

市にあるビーチに行った日、その時に出てきた昼ごはん。ここが彼との出会い。

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