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当たり前だと思うなチェーン店

サイゼに行くと決まった時、喜びで踊りだす大人はいないらしい。まじかよ。

私はド田舎出身だ。「ド」がつくのでもちろんそんじょそこらの田舎とはわけが違う。

サイゼはおろかバーミヤンも松屋も行ったことがなかった。市内にないのはもちろんだが、隣町まで行ってもそんなものは存在しない。

なにせ市で一番高い建物といえば11階建てのマンション、最も街中な場所で電車もバスも1時間に一本、学校のグラウンドには猿がよく出る。唯一のファミレスもラーメン屋もこの前潰れた。友達に聞いた話だと、仕事終わりのご飯を食べに県外まで行ったらしい。正気じゃないな。

それでも居酒屋くらいはあるし、個人の素敵なカフェなんかも。海と山に囲まれた自然豊かな土地それだけで充分だし、店がないことを差し引いてもお釣りがくるくらい大好きな場所だ。

ただ、チェーン店がない。それだけのこと。

子供時代チェーンのお店に行く機会があまりなくて、馴染みが無いまま育った。だから憧れがすごくある。チェーン店コンプレックスとでも言うべきか。

私たち市民が街じゃ…と崇める隣町ですらマック、すき家、スタバ、丸亀製麺がギリあるくらいだ。(※)

「学校帰りにサイゼよく行ってた」「サイゼは安くて美味いので高校生の味方」みたいなのを聞くと、もう、すごく羨ましい。

単純にサイゼ食べてみてえ、というのもあるし、そういう共通認識を自分が持っていなくて悔しいんだと思う。共通認識が無い→会話に入れない→悲しい、みたいな。そんな頻繁にチェーンの話とかしないけれども、まあ可能性としては無きにしもあらず。

逆に行ったことないのを会話のネタにできる、その点はむしろ良かったかもしれない。

でもよく考えると、若干ウケる(ときもある)ネタ一つのために素晴らしいチェーンたちでの食体験を犠牲にしてる。ハイリスクローリターンの極み、泣きたくなってきた。

あと、行ったことないお店があるのは単純に人生の経験値が少ないってことだ。おお、急に周りがみんな大人に見えてきた。

道行く人々を見て、「あの人もこの人もみんなサイゼ行ったことあるんだな」と考える。
それに比べて私ときたら。ロイホも一蘭も未経験。
スタバに入るのはいつまでも怖い。
大人になったのに中身は空っぽ、その辺の中学生にすら確実に負けている。

ある意味では人生負け組と言ってもいいのかもしれない。

いや違うか。

ちなみに人と比べて自分ショボい…嫌だな…となった時は、「いや、まあお前より絶対足速いし」と思うようにしている。パワーかスピードがあればそいつ含め大抵のものは倒せるから。

大学生になって初めてココスに行ったときは、あのテレビでしか見たことない店だ…!と感動した。味がどうこうというより、みんな知ってるけど自分だけ行ったことのないお店に入れたのが嬉しい。紅茶とコーヒーのドリンクバーが豪華で楽しかったです。

そういえば二十歳になって、鳥貴族がコスパ良いらしい、行ってみたい!と思って調べたら東名阪にしかなくて絶望した覚えがある。つくづくチェーンに縁が無いな。嫌がらせか。

だが、ここで人生巻き返しのチャンス。なんと今住んでいる土地にはサイゼも松屋もある。

めでたい。

でも生活圏内ではないのでなかなか行けないし、友達はみんなサイゼ経験あり(そりゃそうだ)なので「え〜サイゼか〜」となっていつもご飯屋さんの候補に入れてもらえない。松屋はなんとか一度入店までこじつけた(!)が、肝心のサイゼさんは未だご縁が無い。

いつか行く日が来るだろうか。憧れをこじらせた今の私にとってサイゼは聖域、一人で入る勇気すら無いかも。サイゼマスターの方がいたらぜひ連れて行って頂きたい。


※追記:私たち市民が街じゃ…と崇める隣町、よく考えたらモスもミスドも吉野家もあるな。
でもわざわざ街に出るなら個人の美味しいカフェとかラーメン屋に行きたい。人生難しいな。


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