球ゆらぎ

子供のころから詩が好きでした。いつからか、気に入った詩句をノートに書き写すことを始めま…

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子供のころから詩が好きでした。いつからか、気に入った詩句をノートに書き写すことを始めました。そのノートは数十冊になりました。その雑然としたノートを整理し、詩の断片をnoteに保管したいと思いつきました。この場で同好の皆さんにも見ていただけると幸いです。

記事一覧

七色のポエジー(書きとめておきたい古今東西の詩句)

第316回 君が流す最後の涙を(ダンヌンツィオ) Ho terso con ambe le mani l’estreme tue lacrime, o Vita. L’amante che ha nome Domani m’attede nell’ombra i…

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6日前
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七色のポエジー(書きとめておきたい古今東西の詩句)

第315回 酔いどれ船(ランボー) Je sais le cieux crevant en éclairs, et les trombes Et les ressacs et les courants : Je sais le soir, L’aube exaltée ains…

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11日前

七色のポエジー(書きとめておきたい古今東西の詩句)

第314回 大日本は神国なり(北畠親房) 大日本者神国也。天祖ハジメテ基ヲヒラキ、日神ナガク統ヲ伝給フ。我国ノミ此事アリ。異朝ニハ其タグヒナシ。此故ニ神国ト云也…

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2週間前

七色のポエジー(書きとめておきたい古今東西の詩句)

第313回 ひとの悲しみ(ブレイク) Can I see a falling tear, And not feel my sorrow’s share ? Can a father see his child ‘Weep, nor be with sorrow fill’d …

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2週間前
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七色のポエジー(書きとめておきたい古今東西の詩句)

第312回 安禅必ずしも山水を須ひず (杜荀鶴) 安禅不必須山水 滅得心中火自涼 (安禅必ずしも山水を須(もち)ひず 心中を滅得せば火も自づと涼し)  晩唐の詩…

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3週間前

七色のポエジー(書きとめておきたい古今東西の詩句)

第311回 墓碑銘(ヴィーラント)  Liebe und Freundschaft umschlang die verwandten Seelen im Leben, Und ihr Sterbliches deckt dieser gemeinsame Stein. (愛と…

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3週間前
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七色のポエジー(書きとめておきたい古今東西の詩句)

第310回 森の生活(ソロー)  If we do not get our sleepers, and forge rails, and devote days and nights to the work, but go to tinkering upon our lives to …

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1か月前

七色のポエジー(書きとめておきたい古今東西の詩句)

第309回 フランスからの別れ(メアリー・ステュアート) Je vais là-bas, là-bas ! Adieu, mon beau pays de France, tu fus pour moi l’asile sûr, où s’ éco…

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1か月前
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七色のポエジー(書きとめておきたい古今東西の詩句)

第308回 生のよろこび 生のかなしみ(田村隆一) 生のよろこび 生のかなしみ 死のかなしみ 死のよろこび ぼくらはその世界で漂流している 神あらば 大爆笑になるだ…

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1か月前
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七色のポエジー(書きとめておきたい古今東西の詩句)

第307回 知恵を得るために(ホラティウス) sapere aude. (知恵を得るために勇気を持て)  古代ローマの詩人、ホラティウス(Horatius, BC65~BC8)の『書簡集』…

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1か月前
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七色のポエジー(書きとめておきたい古今東西の詩句)

第306回 世界の秘密(ホーフマンスタール) Der tiefe Brunnen weiß es wohl, Einst waren alle tief und stumm, Und alle wußten drum. (深い泉はよく知っている…

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1か月前
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七色のポエジー(書きとめておきたい古今東西の詩句)

第305回 人生れておのおの志有り(王仲宣) 人生各有志 終不為此移 同知埋身劇 心亦有所施 (人生れて各(おのおの)志有り 終(つひ)に此が為に移らず  同じく…

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1か月前
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七色のポエジー(書きとめておきたい古今東西の詩句)

第304回 昨日、今日、明日(バルタス) Hier, demain, ce jourd’hui, Toujours présents, ne sont qu’un seul temps. (昨日、明日、今日は、常に現在にして唯一の…

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1か月前
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七色のポエジー(書きとめておきたい古今東西の詩句)

第303回 藤の花ぶさ(正岡子規) 瓶(かめ)にさす藤の花ぶさみじかければたたみの上にとどかざりけり  明治の文人、正岡子規(本名は常規、1867~1902)が死の前…

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2か月前
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七色のポエジー(書きとめておきたい古今東西の詩句)

第302回 心の社会(ミンスキー) The minds as a society of tiny components that are themselves mindless (心は心を持たない小さな部品が集まってできた社会)  …

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2か月前
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七色のポエジー(書きとめておきたい古今東西の詩句)

第301回 洛に赴く(陸機) 清露墜素輝 明月一何朗 撫枕不能寝 振衣独長想 (清露には素輝の墜ち 明月は一に何ぞ朗かなる  枕を撫して寝(い)ぬる能わず 衣を振…

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2か月前
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七色のポエジー(書きとめておきたい古今東西の詩句)

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第316回 君が流す最後の涙を(ダンヌンツィオ)

Ho terso con ambe le mani
l’estreme tue lacrime, o Vita.
L’amante che ha nome Domani
m’attede nell’ombra infinita.
(君が流す最後の涙を、私は両手で拭い去った。ああ、人生よ。
 明日という名の恋人は、無窮の陰の下で私を待っている)

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七色のポエジー(書きとめておきたい古今東西の詩句)

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第315回 酔いどれ船(ランボー)

Je sais le cieux crevant en éclairs, et les trombes
Et les ressacs et les courants : Je sais le soir,
L’aube exaltée ainsi qu’un peuple de colombes,
Et J’ai vu quelque fois ce que l

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七色のポエジー(書きとめておきたい古今東西の詩句)

七色のポエジー(書きとめておきたい古今東西の詩句)

第314回 大日本は神国なり(北畠親房)

大日本者神国也。天祖ハジメテ基ヲヒラキ、日神ナガク統ヲ伝給フ。我国ノミ此事アリ。異朝ニハ其タグヒナシ。此故ニ神国ト云也。
(大日本は神国である。天祖国常立尊が最初に国の基礎を開き、日神天照大神が永く皇統をお伝えになる。我国だけこの事が行われている。外国には例がない。その故に神国というのである)

 南朝の公卿、北畠親房(きたばたけ ちかふさ、1293~

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第313回 ひとの悲しみ(ブレイク)

Can I see a falling tear,
And not feel my sorrow’s share ?
Can a father see his child
‘Weep, nor be with sorrow fill’d ?
(ひとの涙を見て、悲しみを分かたずにいられようか。
 わが子の泣くのを見て、父親は平気でいられようか)

 英国の詩

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第312回 安禅必ずしも山水を須ひず (杜荀鶴)

安禅不必須山水 滅得心中火自涼
(安禅必ずしも山水を須(もち)ひず 心中を滅得せば火も自づと涼し)

 晩唐の詩人、杜荀鶴(と じゅんかく、846~907)の「夏日題悟空上人院(夏の日、悟空上人の院に題す)」の後半。
― その寺は酷暑のなかで門を閉ざし、僧はきちんと僧衣を身に着ける。寺の周りには日射を遮る松や竹もない。だが、心を集中して無念無想

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第311回 墓碑銘(ヴィーラント)

 Liebe und Freundschaft umschlang die verwandten Seelen im Leben,
Und ihr Sterbliches deckt dieser gemeinsame Stein.
(愛と友情は、この世で相似た魂を結びつけた。そして、彼らの儚い命はここに合わさった墓石の下に眠る)

 ドイツ叙事詩の父、クリ

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第310回 森の生活(ソロー)

 If we do not get our sleepers, and forge rails, and devote days and nights to the work, but go to tinkering upon our lives to improve them, who will build railroads ?
(もしも私たちが枕木を並べたり

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第309回 フランスからの別れ(メアリー・ステュアート)

Je vais là-bas, là-bas !
Adieu, mon beau pays de France,
tu fus pour moi l’asile sûr,
où s’ écoulaient mes jeunes ans !
(私はここから去って行く。さらば、わが歓びのフランスよ。わが最愛の古里は、幼年時代の乳母だった)

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第308回 生のよろこび 生のかなしみ(田村隆一)

生のよろこび 生のかなしみ
死のかなしみ 死のよろこび
ぼくらはその世界で漂流している
神あらば
大爆笑になるだろう

 戦後を体現した詩人、田村隆一(たむら りゅういち、1923~1998)の「生きる歓び」の冒頭。飼っていた猫と尾長鳥を追悼する。死が生を生み、死を通って生がよみがえる。
 田村は東京府巣鴨村で生まれた。生家は祖父の代から鳥料

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第307回 知恵を得るために(ホラティウス)

sapere aude.
(知恵を得るために勇気を持て)

 古代ローマの詩人、ホラティウス(Horatius, BC65~BC8)の『書簡集』から。<正しい生活を生きる時間を先延ばししてはいけない、今すぐに学問に心を向けよ>という文脈のなかで述べている。
 この語句は2千年を超えて生き延びた。カントは1784年に発表した『啓蒙とは何か』で引用して

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第306回 世界の秘密(ホーフマンスタール)

Der tiefe Brunnen weiß es wohl,
Einst waren alle tief und stumm,
Und alle wußten drum.
(深い泉はよく知っている。かつては誰もが深く押し黙り、
 皆がそれを知っていた)

 ドイツの詩人、ホーフマンスタール(Hugo von Hofmannsthal, 1874~

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第305回 人生れておのおの志有り(王仲宣)

人生各有志 終不為此移 同知埋身劇 心亦有所施
(人生れて各(おのおの)志有り 終(つひ)に此が為に移らず
 同じく知る身を埋むるの劇(はなはだ)しきを 心も亦た施す所有らん)

 魏の王粲(おうさん、字は仲宣、177~217)の「詠史詩(史を詠ぜし詩)」から。昔、秦の穆公(ぼくこう)が良臣を殉死させたことを非難している。なおやり遂げたいことがあり

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第304回 昨日、今日、明日(バルタス)

Hier, demain, ce jourd’hui,
Toujours présents, ne sont qu’un seul temps.
(昨日、明日、今日は、常に現在にして唯一の時間でしかない)

 フランスの宗教詩人、デュ・バルタス(Du Bartas, 1544~1590)の『続聖週間』から。時間が消滅した世界を描く。
南仏ガスコーニュ出

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第303回 藤の花ぶさ(正岡子規)

瓶(かめ)にさす藤の花ぶさみじかければたたみの上にとどかざりけり

 明治の文人、正岡子規(本名は常規、1867~1902)が死の前年に作った一首。『墨汁一滴』に掲載された10首の冒頭歌。病床にあった子規の視線は、花房の先端が畳に届いていないのを捉える。このありのままを写生した歌が人の心を打つのは、<とどかざりけり>という表現が、死期を暗示して何とも切ないか

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第302回 心の社会(ミンスキー)

The minds as a society of tiny components that are themselves mindless
(心は心を持たない小さな部品が集まってできた社会)

 認知科学者、マーヴィン・ミンスキー(Marvin Minsky、1927~2016)の『心の社会(The society of mind)』に書かれた心の概念。ミ

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第301回 洛に赴く(陸機)

清露墜素輝 明月一何朗 撫枕不能寝 振衣独長想
(清露には素輝の墜ち 明月は一に何ぞ朗かなる
 枕を撫して寝(い)ぬる能わず 衣を振いて独り長く想ふ)
※ 素輝は白い光

 六朝時代の詩人、陸機(りくき、字は士衡、261~303)の「赴洛(洛に赴(おもむ)く)道中作二首」の最後の4句。陸は江南出身、晋の武帝の時代に仕官して洛陽に入った。長い道中の間、眠れない夜は遠

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