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七色のポエジー(書きとめておきたい古今東西の詩句)

第309回 フランスからの別れ(メアリー・ステュアート)

Je vais là-bas, là-bas !
Adieu, mon beau pays de France,
tu fus pour moi l’asile sûr,
où s’ écoulaient mes jeunes ans !
(私はここから去って行く。さらば、わが歓びのフランスよ。わが最愛の古里は、幼年時代の乳母だった)
 
 悲劇のイギリス女王、メアリー・スチュアート(Mary Stuart, 1542~1587)の「フランスからの別れ(L’adieu à la France)」の冒頭。
 メアリーは、スコットランド王ジェームズ5世とフランスのギーズ公家出身の王妃の長女。生後まもなく父王が亡くなり、王位を継承した。7歳のとき、内乱に巻き込まれたためフランスに逃れ、アンリ2世の宮廷で育つ。
 15歳で王太子フランソワと結婚。翌年、アンリ2世が亡くなり、フランソワ2世が即位、メアリーは王妃となる。ところが、その翌年、フランソワ2世が病気で急死する。メアリーはスコットランドに帰国することになった。
 メアリーは若い頃から詩を書いていた。掲出の詩は18歳で未亡人になりスコットランドに帰るときに作った。これを含むメアリー作の5つの詩にシューマンが作曲した。ドイツ語訳によるその歌曲集には最晩年のシューマンの寂寥感が反映している。


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