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七色のポエジー(書きとめておきたい古今東西の詩句)

第315回 酔いどれ船(ランボー)

Je sais le cieux crevant en éclairs, et les trombes
Et les ressacs et les courants : Je sais le soir,
L’aube exaltée ainsi qu’un peuple de colombes,
Et J’ai vu quelque fois ce que l’homme a cru voir !
(私は知ってゐる稲妻に裂かれる空を龍巻を
 打ち返す浪を潮流を。私は夕べを知ってゐる、
 群れ立つ鳩にのぼせたやうな曙光を、
 又人々が見たやうな気のするものを現に見た)
 
 フランスの詩人、アルチュール・ランボー(Arthur Rimbaud, 1854~1891)の25連100行からなる「酔いどれ船(Le Bateau ivre)」の第8連。訳は中原中也。この有名な詩は、パリのサン・シュルプス教会の横の壁に全詩句が書かれている。
 ランボーはベルギーの国境に近いアルデンヌ地方で生まれた。1871年にヴェルレーヌに自作詩を送ったところ、才能を見抜いたヴェルレーヌに即座に呼び出された。そのときランボーは書き終えたばかりの「酔いどれ船」を携えてヴェルレーヌに会いにきた。折からのパリ・コミューンへの熱狂を反映した長詩にヴェルレーヌは深く感動する。
 それから間もなくパリの詩人たちの集まりでランボーはこの詩を朗読した。そしてヴェルレーヌを通してパリ在住の多くの芸術家たちの仲間入りをした。
 「酔いどれ船」を書いた時点ではランボーは海を見たことがなかったらしい。故郷の河がランボーの想像力の源泉だったのだろう。
 


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