見出し画像

七色のポエジー(書きとめておきたい古今東西の詩句)

第310回 森の生活(ソロー)

 If we do not get our sleepers, and forge rails, and devote days and nights to the work, but go to tinkering upon our lives to improve them, who will build railroads ?
(もしも私たちが枕木を並べたり、鉄のレールを延ばしたりすることを止めたらどうなるか。線路の敷設工事に日夜励む代わりに、一人一人が手間ひまかけて自分の人生づくりの工事に取りかかったらどうだろう。ところが、そうなると誰が鉄道を造るのか)
 
 米国の思想家、ヘンリー・ソロー(Henry Thoreau、 1817~1862)の『森の生活(Walden; or, Life in the Woods)』から。人間は自分たちが列車に乗り、レールの上を走っていると思い込んでいるが、その実、列車が人間の上を走っているのだ、と警告する。
 ソローはマサチューセッツ州コンコードに生まれ育った。ハーバード大学を卒業し、家業の鉛筆製造に従事するが長続きせず、職を転々とする。この間に俗なるものの中に聖なるものがあると主張するエマーソンの影響を強く受けた。30歳過ぎに町を離れ、ウォールデン湖のほとりに丸太小屋を建て、自給自足の生活を始める。その記録をまとめた『森の生活』を1854年に発表した。
 同書は作者の死後、評価が高まり、20世紀に入って米国ノンフィクション文学の最高傑作と称されるようになった。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?