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アライシップとリーダーシップ ー Play Forward | DE&I in Gaming, Japan 2022 イベントレポート #2

2022年11月8日(火)Meta 東京オフィスにて、「Play Forward | DE&I in Gaming, Japan 2022~多様性を活かした会社創りとアライシップ~」が開催されました。

テーマは、日本のゲーム業界におけるDE&I (ダイバーシティ=多様性、エクイティ=公平性、インクルージョン=包摂性)。DE&Iとは何か、より包摂的な環境と文化を社内外に浸透させるために何を行っているか、日本企業によるトークセッションが行われました。

今回は、Breakout Session 1「アライシップとリーダーシップ」でのXTalent 代表 上原 達也と参加者の皆様とのディスカッションの様子を、レポート形式でお届けします。

※「DE&I」「DEI」など企業によって表現が異なる言葉は、本記事では各社の使用する言葉を反映しているため、表記のばらつきがありますことをご了承ください。

「Play Forward | DE&I in Gaming, Japan 2022~多様性を活かした会社創りとアライシップ~」イベントレポート#1は、こちらからご覧いただけます。

<登壇者>
XTalent株式会社 代表取締役CEO 上原 達也

京都大学教育学部卒業後、株式会社Speeeに入社し、社長室での業務に従事。 2017年JapanTaxi株式会社に入社し、事業開発を担当。2019年7月XTalent株式会社を創業、代表取締役に就任。「フェアな労働市場をつくる」をミッションに企業のDEI推進を後押ししている。共働きで2児の子育て中。

<本レポートのポイント>
・アライシップとは、「あらゆるマイノリティの人たちが自分らしくいられる環境をつくっていく」ための意思表示と行動
・属性ではなく「個」として相手とコミュニケーションを取ることが大事
・お互いがオープンに話せる環境づくりが、「アライシップ」と「リーダーシップ」を強くする



属性ではなく「個」として相手を見る。
アライシップの捉え方


───まず最初にプレゼンターの上原さんから簡単に自己紹介をお願いします。

上原:XTalent株式会社というDEI推進カンパニーを立ち上げ、今年で4期目に突入しました。主なサービスとして、ハイクラス×ワーキングペアレンツ向け転職サービス『withwork』、女性社外取締役紹介サービス『withwork executive』を運営しています。

私自身も、共働きの子育て真っ最中で、必死に仕事と家事育児のバランスを取りながら過ごしています。家庭では料理当番なので、食事を作るのが日課です。本日はよろしくお願いします!

───ありがとうございます。さっそく「アライシップとリーダーシップ」をテーマに、参加者のみなさんと意見交換をしていきましょう。そもそも「アライシップ」という言葉を聞いたことがある、または意味を知っている方はいらっしゃいますか?

(会場、2〜3人手が挙がる)

参加者Aさん:聞いたことはありますが、意味まではわからないです。ふだんはアメリカで働いておりまして、多国籍・多人種の人々が集まる国ということもありインクルージョンやダイバーシティといった単語は頻繁に耳にするのですが、アライシップはまだ聞き慣れなくて。今日のみなさんとのディスカッションを通じて理解が深められればいいなと思い、参加しました。

───そうですよね。日本でもまだ馴染みが薄い言葉だと思うのですが、上原さんはアライシップの意味をどのように捉えているのでしょうか?

上原:日本においてアライシップは、LGBTQ+の文脈で「性的マイノリティの人たちを、私は理解・支援します」と表明する意味で使われることが多いように感じています。でも特定の属性に絞る必要はなく、「あらゆるマイノリティの人たちが自分らしくいられる環境をつくっていく」ための意思表示と行動がアライシップだと捉えています。

その上で、大事にすべきことは2つあります。1つは「知識」。例えば、LGBTQ+に関する知識や、育児をしながら働く女性を取り巻く環境の理解など、知っておくだけでサポートできる場面は増えると思うんです。

もう1つ大事なのは、属性ではなく「個」として相手を見ることです。よく「職場に育児中の女性社員がたくさんいて、僕も何か力になりたいと思っているんです。どんなことをすればいいのでしょうか?」とご相談を受けることがあります。とても誠意に溢れる方だなと感心する一方で、「育児中の女性だからこのサポートをするのが正解」と一概に言い切れないんですよね。

当たり前ですが、育児中の女性の中にもいろいろな価値観を持った人がいます。ワークライフバランスを保ちながら時短勤務で育児の時間を大切にしたい人もいれば、子どもを寝かしつけた後に夜中でも稼働はできるし、仕事は大好きだから育児中でも遠慮されたくない人もいる。これはパートナーとの役割分担によっても事情が変わってくることです。

なので安易に「育児中の女性」「育児中の男性」などといった属性で対応を決めつけるのではなく「この人はどんなスタイルを望んでいるのか、それに対して自分はどんなことができるのか」と、個別にコミュニケーションを取ることが必要です。個人と向き合うことは、リーダーシップを考える上でもとても大事だと思います。

───なるほど。悪気がなくても、先回りして「時短勤務がいいよね」と配慮をしてしまうこともあると思うのですが、そこは個人によって異なることを前提としたコミュニケーションが必要なのですね。

上原:属性で決めつけられてしまう悩みを持ち、ご相談にいらっしゃる女性は少なくないです。たとえば、社内で初めて育休を取得した方は、「復帰後もしっかり働きたい」とリーダーに伝えたものの、「でも自分の周りの女性は子どもが生まれたら育児中心になっているし、無理しなくていいよ」と言われてしまったようなんです。女性からすると、私のキャリアをどう考えてるんですか?と不満を感じますよね。

そこでミスコミュニケーションが生まれてしまうのは、お互いにとってすごくもったいないこと。個人として「あなたはどうしたいですか?」と聞く姿勢は、性別・世代の異なる人の価値観を知る上で大事かつ、汎用性のあることだと思います。


マイノリティによる「自分らしさの喪失」


───ご自身や周りの人のエピソードで、同じようにアンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)を感じたことがある方はいらっしゃいますか?

参加者Bさん:私は男性同士でも価値観は全然ちがうと感じています。育児・仕事のバランス、キャリアの捉え方、働き方など。旧来だと、「男は出世してバリバリ稼ぐ」という価値観が主流だったと思うのですが、男性だからといって一概にみんながそこを目指しているわけではない。「同じ属性だから考え方も同じ」と無意識に思い込んで会話を進めてしまうのは危険だなと感じました。

参加者Cさん:私は集団の中で自分がマイノリティに置かれていると、自己開示がしづらかったり、思っていることが話しづらくなることがあります。例えば女性は、結婚・出産・育児のタイミングから逆算してキャリアを描いている人も少なくないと思うんです。それに、まだ自分の中で迷いがあったり、答えが出ていない状態だったりもする。そうなったとき、男性の比率が高い職場だと「理解してもらえるだろうか」「尊重してもらえるだろうか」という不安から、リーダーに相談しづらいと感じることもあって......。

上原:わかります。私も先日、保育園の懇談会の後に保護者でランチに行ったのですが、ふと周りを見渡すと全員女性だったんですよね。その場において自分がマイノリティになったとたん、「あれ、何を話したらいいんだっけ?どう振る舞ったらいいんだっけ?」と、ふだん通りの自分を開示しづらくなったんです。

これがマイノリティによる「自分らしさの喪失」なのかなと。自分の会社では男女比の偏りは少ないですし、ビジネスシーンだとむしろ男性の比率が高い場面が多いので、滅多に「話しづらさ」や「居づらさ」は感じなかったのですが......。いかに自分が日頃、マジョリティ側で生きているのかを実感しましたね。


お互いがオープンに話せる環境づくりが
「アライシップ」と「リーダーシップ」を
強くする


参加者Cさん:難しいテーマではありますが、一緒に働くメンバーにはできる限りオープンに相談した上で、納得できる組織づくりや役割分担ができるといいのかなと感じました。

上原:そうですよね。あとは上司も、性別や世代が異なるメンバーに対して「どう聞けばいいんだろう?」と悩んでしまうこともあると思うんです。だからこそお互いがオープンに話せる環境づくりは重要ですし、最終的には「同じゴールに向かって一緒にがんばろう!」と目的をすり合わせられたら一番健全なコミュニケーションですよね。

個人の幸せや多様な価値観を尊重した上で行う「アライシップ」と、組織における業績や成果を追う「リーダーシップ」。どちらか一方ではなく、並行して推し進めていけるのが理想だなと思います。



▼「Play Forward | DE&I in Gaming, Japan 2022~多様性を活かした会社創りとアライシップ~」イベントレポート#1はこちら

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ーSTAFFー
企画:筒井 八恵(XTalent株式会社)
執筆:貝津 美里