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【コラム】意外と根深い「組織内の公平性」の問題

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はじめに

組織を統括する立場であるマネジメント層になると、日々様々な組織の問題を抱えることになります。
一つの問題を解決しても、すぐに次の問題が生産され、時には同時多発的に問題が浮上してきます。

本来であれば、マネジメント層の主業務は「経営目標を達成すること」なのですが、いつの間にか「組織の火消し活動」が主業になってしまいがちです。

このようなことがなぜ起こるのか🤔

悩んだことはないですか?
私はあります。

組織の問題に長年関わってきて思うのは、その根本に「公平性の問題」が隠れていることが多いという点です。
組織内の公平性が保たれている場合、組織内の不満はあまり出て来ないことが多かったのですが、一旦不公平状態に陥ると一気に問題が噴出してくるのです。
その問題の多くが人間の感情に起因していると考えています。

今日はこの点について少しお話させていただこうと思います😁
参考になるかわかりませんが、ベンチャー企業で働くマネジメント層の皆さんのお役に立ったら嬉しいです。



1.公平性の問題とは

公平性の問題とは、組織の構成員が「不公平だ」と感じる事象が存在していることによって発生する様々な派生的問題のことをいいます。

まず重要な点は、この問題が「主観的」である点です。
客観的には公平に見えても、構成員が「不公平だ」と感じればそれは不公平です。

そして、その不公平な事象・事実が存在していることによって、様々な派生的な問題が発生していきます。
この派生的な問題が公平性の問題です。

代表例でいうと「報酬・給与」の問題があります。

例えば、組織の中にAさんとBさんの2名の社員がいたとします。
それぞれスペックは以下のとおりです。

【Aさん】
・士業の資格あり
・会計専門職(マネージャー)
・士業としての活動もしている(時々社外に出る)
・月額報酬60万円

【Bさん】
・士業の資格はないが同等の知識を有する
・会計専門職(サブマネージャー)
・専業として常勤している
・月額報酬58万円

一見すると、A・B共にハイスペック人材で、かつ、ほぼ同じ報酬です。
Aが士業としての資格を持っていることを考慮すると、客観的には公平であるようにも思えます。

しかし、現実的には、Aは週に2日ほど社外に出て副業をしていて、内部の事務作業はほとんどせず、Bが多くの業務を実行していた場合はどうでしょう?
しかも、その事実をBと一部の同僚のみしか知らない状態だとします。

これはよくあることで、他部署の人間にとっては、よその部署の内部事情を把握し辛いのです。

この状況をBの立場に立って考えると、自分より明らかに手を動かしていないのに、自分と同じ報酬をもらっているAの存在が不公平な存在に映りますよね。
実質週3日勤務で自分により高い報酬をもらっていて、立場上は上司の役割になるわけですから、ここでBは不公平感を抱きます。

ただ、Bは仕事自体に不満があるわけではないし、現在の職務を楽しいとも感じています。
他部署の仲間にも恵まれているし、組織そのものに不満があるわけではありません。

でも、Aの存在そのものが納得いかない。
かといって取締役等に相談するほどのことでもない。
会計専門職にとって、士業の存在は必要不可欠だし、時々重要な論点で助けてもらっているのも事実。
自分が我慢すれば穏便に解決できる。
だから今は気にしないように努力しよう。

そういう心理状態が長く続くと、ほぼ間違いなくBは転職を検討し始めます。
このままこの会社に勤めても、ずっと作業員として働き続けるだけで、大きなプロジェクトに関われるわけでもない。
かといって頑張ってマネージャーになったとしても、Aと立場が逆転してしまって気まずいことになるかもしれないので、残り続けることにメリットを感じにくい。
そういう思考になっていきます。

その結果、組織として考えると明らかにコアメンバーの一人であるBが抜けるのです。

Bのように社内の実務を熟知した人間が抜ける穴はそう簡単には埋まりませんし、非常に見つけにくい人材だと思います。
同等の人はすぐには採用できないでしょうから、中途半端な能力の人を複数人雇って、数でカバーすることが多くなります。
そうすると、紹介フィーもかかることになります。

これが「離職」という派生的問題です。

公平性の問題は、実は非常に根深い問題で、マネジメント層が気づけないことも多い問題です。
マネジメント層にとっては「ある日突然スタッフが転職した」という状況に見えます。

しかし、その多くは予見可能だったものばかりです。
起こるべくして起こっている問題といっていいでしょう。

ただ、組織の従業員がどういう点について不公平感を抱いているのかについて、通常は従業員側は話してくれませんし、聞き出そうとしても本音で語ってくれることは少ないでしょう。

マネジメント層が自ら注意深く組織全体を観察し、仮説を立て、不公平を取り除いていかないといけない。
マネジメント層がこの一手間をかけるだけで、組織内の問題の多くが発生しなくなります。
後々大変な思いをしなくて済むように、日頃から注意して観察してみるといろいろなところに不公平が潜んでいることに気づくと思います。

それをあえて放置することも戦略の一つですが、できることなら芽が小さいうちに解決しておいた方が良いと思います。


2.公平性の問題の事例

マネジメント経験がまだ浅い若手リーダーの場合、組織内でどのような点が公平性の問題を発生させるかについてなかなか気づけないかもしれません。

そこで、いくつか過去の事例を見て疑似経験値を高めていきましょう😁

先程の事例では、報酬の不公平感を事例として挙げました。
あの事例は、形式的報酬額は公平に見えますが、実質的な報酬額が不公平なので離職につながった事例です。
それ以外にはどのようなものがあるか、一つずつ解説していきます。


(1)コミュニケーション量


不公平が発生しやすい事例として、コミュニケーション量が挙げられます。

経営層やマネジメント層に入ったばかりの人の多くは、自分自身のコミュニケーションにそこまで大きな意味や効果はないと考えていると思います。
自分が誰とどれだけ話したかなんて、組織に対してさほど影響しないだろうと。

しかし、その認識は改めないといけません。

マネージャーが優秀であればあるほど、そのマネージャーのコミュニケーション量は組織に大きな影響を与えます。
他人から尊敬され、信頼されるリーダーであるほど、たった一言の言葉で他人を救ったり絶望させたりできるのです🤔

良きリーダーほどその自覚が無かったりします。
優秀な人は自己を過小評価する傾向があるので致し方ない部分もありますが、ほんの少しだけコミュニケーションの質と量に注意を払ってみてください。

組織の中で、特定の人間(比較的話しやすい人間)にだけコミュニケーションが偏っていませんか?

もしその傾向が強くなっていたら要注意です。

コミュニケーション量の公平性が崩れると、組織の結束度も少しずつ崩れていきます。
コミュニケーションがしっかり取れている人間だけ組織コミットメント(組織への愛着や帰属意識)が上がっていき、それ以外の人間の組織コミットメントが下がっていきます。

そして、コミュニケーションがあまり取れていない人間ほど、自己の重要感を認識できず、組織に対して嫌悪感を持ちやすい心理状態に陥っていきます。
ここが非常に危険なところです。

経営者・マネージャーといえども人間なので、どうしても得手不得手がありますし、苦手な人間もいるでしょう。
でも、苦手な人間とのコミュニケーションを避け続けていると、その苦手な人が組織内のがん細胞化してしまう危険性を高めてしまいます😱

苦手な人とのコミュニケーションを意図的に増やすべきです。
大抵の場合、コミュニケーション量が増えれば増えるほど、その人の良さが見えてくると思います。
たまに悪いところがどんどん目につくこともありますが、それは単に採用ミスをしたということなので、反省して次回に活かしましょう😂

少なくとも、経営層は意図的に組織内のコミュニケーション量を調整するように心掛けてください。
定例や1on1、社内ランチ制度、懇親会などの様々な施策を通じて意図的にコミュニケーション量を調整しましょう。

このときに特に注意すべき点は、中間管理職の性質です。

中間管理職の中には、自分の部下が他の部署の人間とコミュニケーションを取ることを良く思わない人間がいます。
言い換えると、自分の部下を自分の支配領域内に隔離して、外部との接触を全て自分を通すように仕向けるタイプの人です。
こういう人間は非常に危険で、組織にとってはあまりプラスがありません。

重要な情報がすべて中間管理職のフィルターを介して経営層に伝わるようになるため、バイアス(偏見・思い込み)が入り、正しく伝わらなくなります。

このような症状が組織内で見つかったら十中八九、その中間管理職の組織には不公平感や不満が溜まっているはずです。
無理矢理にでも下部社員とコミュニケーションを取って、しっかりと情報収集を行いましょう。

こういうタイプは危険


(2)業務時間


次に、報酬・コミュニケーション量と並んで公平性の問題が発生しやすい要素として、業務時間が挙げられます。

しかも、この要素は労務及び近い同僚たちと協力しないとなかなか問題点として浮上してこない論点なので、発見が遅れがちになります。

また、業務時間は論点として認識されたとしても様々な問題が入り組んでいて、解決に時間がかかる場合が多いです。

例えば、従業員Aが毎月平均50時間残業をしていて、他の同僚は10~20時間で推移しているとします。
この場合、明らかに従業員Aの労働時間は公平性を欠いています。

原因としては、以下のようなものが考えられます。

【A側の原因】
・Aの能力不足による作業時間の遅延
・Aの個人的利益(残業代)のための残業
・Aの責任感が間違った方向で高い(抱え込むタイプ)

【組織上の原因】
・組織の構造上の問題がある(例:時短の人が多いなど)
・Aに仕事を押し付ける文化がある
・A以外に同様のタスクを処理できる人材がいない


上記の原因はただの例示ですが、このような原因を究明する活動はかなり難易度が高く、本質的な原因がどこにあるのかよくわからない、見えて来ないというケースも多いです。
そのため、発覚が遅れ、かつ、解決にも時間がかかります。

また、上記の例では同一部署内での業務時間の公平性の問題でしたが、これは他部署間でも当然に起こりうる話です。

特に多いケースは経理・財務の業務時間です。
内部統制が整っている会社で、かつ、優れた経理・財務マネージャーがいる会社では、会計分野においてもDX化が進んでいて、決算月でも比較的スムーズに業務が進行し、残業も少なく抑えられます。

しかし、ベンチャー企業ではそもそも内部統制が整っていませんし、事業優先型で業務が進行していくので、どうしても決算月に残業が増えます。
チーム全体で、各人が月平均100時間を超えるような残業が常態化している組織も少なからず存在します。

このような組織で働いていると、心も身体も疲弊していきます。

経理・財務だと他の部署の報酬額等も全部見れてしまうことが多いので、他部署の人間はほとんど残業もない状態で自分と同じくらいの報酬をもらっているという事実がわかってしまったりします😱
その結果、経理・財務の離職が相次ぎ、新しい人を入れてもすぐに別の人が辞めるという悪循環を繰り返し、内部統制が整わないまま何年も経過するということがよく起きます。

業務時間の不公平感を改善するのは、内部統制を整えることでもあるのでベンチャー企業にとってはとても大きな課題の一つです。
上手に解決するのは非常に難しいと思いますが、挑まずにはいられない課題ですね…。

根本的に解決するためには、リーダーシップを取れる優秀な人材が必要ですが、そういう人材を採用するのは至難の業です。
内部統制がグチャッている組織は、業界内での評判も悪くなっていることが多いので尚更難しくなっていきます。

ベンチャー経理あるある



(3)インセンティブ制度


最後に、インセンティブ制度の事例を取り上げましょう。

多くの会社では表彰や報奨金などのインセンティブ制度を採用していると思います。
しかし、その多くは営業部門におけるものでしょう。

営業という職種は、いわば会社の花形で、お金を直接的に稼いできてくれる最重要部署です。
それゆえ、何らかのインセンティブを与え、モチベーションを保ってもらわないといけません。
その結果、営業部門においては基本的にインセンティブ制度が導入されます。

月間MVP、四半期表彰、年度末表彰などなど。
名称は様々ですが、何らかのインセンティブを与えているはずです。

このとき、間接部門のことを少しだけ考えてみる必要があります。

たしかに、間接部門は、直接的には利益に貢献しません。
そのため、通常は営業部門よりも給与が安く据え置かれます。
そして、報酬の上がり幅も狭く、役職の空きもあまり出ないため、出世も難しいという特徴があります。

そもそも間接部門の人間は事業全体で見ると1~2割しかいないので、ポジションそのものが少数派です。
その上、業務の特性上、おとなしい性格の人が多いので、給与に対する要望を真正面から提示してくるような人は少ないです。

その結果、多くの会社では間接部門のことをただのコストセンター(コストばかりかかる部署)と認識していて、若干粗末に扱っていることが多いです。
インセンティブ制度も無いことの方が多いでしょう。

そうすると、間接部門の人材は、何のために働くのかという疑問を持ち始めます。
誰からも評価されない、報酬が上がる可能性も低い、出世も難しい。
そんな状況で高いモチベーションを保って他人に貢献しようと思える人の方がおかしいです。

それが続くとどうなるかというと、優秀な人材から辞めていきます。
日々学習し、能力や知識を磨き上げている間接部門のプロフェッショナルが辞めるのです。

残る人たちは「生活のためにただ作業をこなすだけの人たち」です。

そういう間接部門が増えれば増えるほど、事業部との溝が深まっていき、組織が機能的に動けなくなっていきます。
また、優秀な間接部門がいない組織は、年に何度か起こるアクシデントに対応できなくなっていくので、些細な問題で事業が止まるようになります。
間接部門が本当の意味で足を引っ張る組織になるのです😱

これも公平性の問題の一種です。

たしかに営業部門の方が利益に直接的に関与するので重要かもしれません。
しかし、だからといって専門職になるために膨大な時間を勉強に投資し、高い専門性を身に着けていた人たちの価値が低いわけではないのです。
そういう専門家の価値を理解している企業は他にいくらでもあるので、優秀な人ほどまともな会社に転職します。

そういう認識が薄い経営者の方は、強固な間接部門を構築できず、いつまで経っても利益率が改善しない状態に陥りやすいです。
優秀な間接部門人材を揃えている会社では、少数精鋭型の組織になるので、1人の優秀な人材が、通常の2~3人分のタスクをこなしてくれます。

だからこそ、インセンティブ制度を設計するときは、職種間の公平性にも着目してみてください😁
日頃スポットライトを浴びない部署にこそ、たまには光を当てるべきです。

若手を表彰する文化が特に重要!



おわりに

今日は組織の公平性の問題についていくつか事例を交えて解説させていただきました。
ただの私見なので何らかの科学的根拠がある記事ではないのですが、ベンチャー企業の組織運営のお役に立てば幸いです。

それにしても人事制度って難しいですよね。
福利厚生が充実していた方がいいのはわかるのですが、コストがかかり過ぎると本末転倒ですし、かといって大してニーズの無い制度を作っても無駄になります。

組織内の公平性を保とうと様々な視点から制度を考えても、複雑化していくばかりで管理コストの方が高くなってしまったり。。。
試行錯誤が一生続く分野なのだろうと思います。

そして、制度を作るのは楽しいことなのでやりたい人も多いのですが、逆に制度を廃止することも忘れずに行いたいものですね。
時代遅れになったもの、一部の人にだけ不適切な利益を与えてしまっているものなどをしっかりと精査して廃止していけるような人事組織が重要だなと思います。

それではまた書きます!
いつもお読みいただきありがとうございます🙇‍♂️


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著者:瀧田 桜司(たきた はるかず)
役職:株式会社WARC 法務兼メディア編集長
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