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読書メモ

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読書メモ: 日本料理の仕事大観

読書メモ: 日本料理の仕事大観

 銀座 六雁の榎園豊治氏による日本料理の教科書です。料理書・レシピ本ではなく(そういう側面もありますが)、料理人を目指す人向けの指南本というのが正しいでしょうか。

 料理本や関連書籍は多少読むとはいえ、あまり詳しいジャンルではないので断言はし難いのですが、これってすごい本ではないですか?

 まずはその圧倒的なボリュームに驚きます。職人としての細かな技術がかなり精緻に文章化されており、これは単に

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読書メモ: 翼の翼

読書メモ: 翼の翼

 ぜひ読んだ方が良いと薦められて手に取りました。中学受験をテーマにした小説です。

 タイトルと表紙絵から、中学受験を通じたビルドゥングス・ロマンなのかなと想像していたのですがその予想は大きく外れていて、要するに受験沼にハマってしまった依存症患者たちの話なのでした。

 息子の翼くんが低学年の頃たまたま受けた全国テストの点数が好成績だったため、母である円佳は気をよくし、受験塾に通わせ始めます。最初

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読書メモ: 新・女子校という選択

読書メモ: 新・女子校という選択

 何冊か読んでいるおおたとしまささんの著作です。

 有名女子校を取り上げ、一校ごとに短くコラム形式で紹介しています。そしてその前後を「女子校論」でサンドイッチするスタイル。何名かの女子校出身者のインタビューも載っていますが、そのなかでは横浜雙葉出身の渡辺真理が出色です。

 じつは私、大学時代に男女別学、とくに女子校の成り立ちと初期の女子教育について興味を持って、完全なる趣味として調べていたこと

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読書メモ: リーディングス ネットワーク論―家族・コミュニティ・社会関係資本

読書メモ: リーディングス ネットワーク論―家族・コミュニティ・社会関係資本

 ネットワーキング・チャレンジ読書。人脈というものをいかにとらえるかについて数冊の本を読み重ねてきましたが、ようやく目指すところに辿り着いた気がします。社会関係資本論の名論文を集めた論文集です。

 人脈をアカデミックに研究する分野、それは社会関係資本論あるいは社会ネットワーク論です。やっぱりこういうジャンルがあったのですね!

 本書はこれまでの社会ネットワーク論の転換点となるような7つの論文を

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読書メモ: バリューマーチャント 「価値」で勝負するBtoBマーケター

読書メモ: バリューマーチャント 「価値」で勝負するBtoBマーケター

 マーケティングのコソ勉です。

 バリュープロポジション(顧客提供価値)をいかに構築するかについての本はないものかと探しており、意外とこの手のジャンルには骨太な本が見つからなかったのですが、パラパラめくったらしっかりした本のようだったので期待して読み進めました。

 BtoBマーケットで成功するには顧客価値管理というアプローチが必要であり、製品の適切な価値を実証し文書化することが成長のキーファク

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読書メモ: 自分をバージョンアップする外食の教科書

読書メモ: 自分をバージョンアップする外食の教科書

 料理・グルメ番組を多く手掛けるMBSのプロデューサーが書いた外食についての指南本です。

 図書館でたまたま目につき、最初はタイトルだけで「しょうもないグルメ本かな、Youtubeでも見ながら読むにはいいか」との当て推量で借りてみました。なんせ章題がデカフォントですし、最近流行のビジネス書に多いやつです。

 しかしながら読んでみると、いろんな条件付きではあれど、これが思いのほか良い本で……。グ

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読書メモ: CFOのためのサブスクリプション・ビジネスの実務

読書メモ: CFOのためのサブスクリプション・ビジネスの実務

 サブスクリプションはもはやビジネスモデルの主要な一形態になっていますよね。SaaSやMaaSなどが言葉としては巷間に知られていますが、今後も多くの既存ビジネスがサブスクリプション化していくことになると思います。

 その観点から、サブスクリプションビジネスの特徴を理解することはビジネスの教養のひとつになっていくでしょう。サブスクを利用する機会は増えているため、多くがユーザーとしての経験はあるもの

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読書メモ: 抜擢される人の人脈力

読書メモ: 抜擢される人の人脈力

 ネットワーキング・チャレンジの読書です。

 「人脈スパイラル」というコンセプトを軸に書かれたヘッドハンターである岡島悦子さんの著書です。

 著者略歴を見るとハーバードでMBAを取得し、三菱商事、マッキンゼー、グロービスなどに勤務していたとのこと。立派な経歴ですね。どうやら、人脈のスペシャリストになるにはハーバードのビジネススクールに行く必要がありそうです。キース・フェラッジもそうですが、人脈

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読書メモ: マンガで教養 やさしいワイン

読書メモ: マンガで教養 やさしいワイン

 ワイン入門書はひと通り目を通したつもりでしたが「あれ、こんな本あったっけ?」と私のレーダーに引っかかっていなかったため古本で購入した一冊。

 中身はイラスト多めの解説と、ぶどう品種ごとに10ページ程度の漫画が挟まれています。ターゲットは完全に若めの女性で、要するにぶどうの品種をイケメン男子に擬人化して乙女ゲーム風味にし、その特徴をおぼえようというコンセプトです。

 あれ、これ「ワイン一年生」

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読書メモ:DXの真髄 日本企業が変革すべき21の習慣病

読書メモ:DXの真髄 日本企業が変革すべき21の習慣病

 「RPAの威力」「RPAの真実」に続く三冊目。今回はDX戦略を推進する上で「うまくいかない理由」を日本企業の慣習や文化の視点から切り出しています。
 RPA(ロボット・プロセス・オートメーション)の概念と導入事例を紹介した前二作も、その筆致は非常に明快で好感が持てましたが、本書はさらに視座を上げて書かれており、得るものが多くありました。

 本書の白眉は、日本企業がこれまで抱えてきた課題はもちろ

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読書メモ:メドック 至高のワインづくり

読書メモ:メドック 至高のワインづくり

 山本博氏の「ワインの女王 ボルドー」の中で、ボルドーワイン研究家必読の本として挙げられていたので、研究家ではありませんがいちワイン初学者として手に取ってみました。

 ワインを飲みつけない人にはまったくピンとこないことでしょうが、ボルドーといえばきわめてブドウ作りに適したフランスを代表するワインの生産地域であり、その中でもメドックというエリアは最高級のワインをつくるシャトー(ワイン生産者)がひし

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読書メモ: 中学受験の失敗学

Kindle Unlimitedにあったので中学受験について学ぶ一環として手にしてみました。

内容を端的に云うと自らが家庭教師や塾講師をしているなかで見聞きしたヤベー親のサンプル集です。

著者の目的はプレジデントファミリー的な世界観に冷や水を浴びせることらしく、ビジネス的観点からもてはやされる中学受験の負の側面を訴えたいようです。

アプローチ方法はアカデミックでもジャーナリスティックでもなく

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読書メモ: インターネットポルノ中毒

読書メモ: インターネットポルノ中毒

 いつのころからか、インターネット上で「オナ禁」なるものが囁かれるようになったと記憶しています。いわく、自慰行為を絶つことによって人生が変わります。体調が良くなり、精神力は高まり、彼女もできて年収も上がり有馬記念も勝てました、いますぐオナニーをやめるべきなのです!!

 それを最初に知った時、私が興味を持ったのが「その発想はどこから来たのか」ということでした。これが開運キーホルダーや黄色い財布やパ

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読書メモ: 受験と進学の新常識

読書メモ: 受験と進学の新常識

 個人的に絶賛開催中の中学受験を研究しようキャンペーンで手に取りました。

 以前よりおおたとしまさ氏の書いているものはそこここで目にしていたと思います。まともな書き手だな、という印象はありました。本書は各所で書かれたもののダイジェスト的な内容とのこと。先日読んだ瀬川松子「中学受験の失敗学」に比べるとかなりちゃんとした本ですね。

 第一章は中高一貫校の栄枯盛衰や近年のトレンドなどがわかり、参考に

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