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読書メモ: インターネットポルノ中毒
いつのころからか、インターネット上で「オナ禁」なるものが囁かれるようになったと記憶しています。いわく、自慰行為を絶つことによって人生が変わります。体調が良くなり、精神力は高まり、彼女もできて年収も上がり有馬記念も勝てました、いますぐオナニーをやめるべきなのです!!
それを最初に知った時、私が興味を持ったのが「その発想はどこから来たのか」ということでした。これが開運キーホルダーや黄色い財布やパワーストーンならば、男性にとってはたいへん馴染み深い広告になるわけですが、オナニー禁止でなにかを売ろうとしているわけではないようです。テストステロンがなんちゃら、という科学的フレイバーがつけてあるので筋トレに近い自己啓発的な文脈なのだろうか、と漠然と思っていたのでした。
あるときネットポルノの中毒性についての本を山形浩生が翻訳中だぞ、という話を耳にし「あれ、もしかしてこの辺がなにか関係しそうだな」と発売を待っていた次第です。
一読、非常に広がりのある内容でありました。
本書の主な内容を私なりにまとめると、
・ネットポルノは中毒性をもっているといえる。実験デザインの難しさからまだ有効な論文は多くはないが、ネットフォーラム等での膨大な報告例を考慮するに確からしさがある。
・いっぽうでネットポルノ世間的にはさほど問題視されておらず、むしろ解決策ととらえられている傾向もある。
・ネットポルノは過去のポルノと比べ、その量と多様性に際限がほとんどなく、また獲得コストが極めて低いため、中毒しやすい。
・アル中・ジャンキーなどと比較しても性と食に関する報酬系は強力である。
本書の中でも喫煙との比較はとても示唆的です。喫煙の害も長いあいだ顧みられず、明確な研究結果が十分に揃い、人類が喫煙習慣に対して理解を深め、脱却へのトレンドにシフトするのにかなりの時間を要しました。あまりにネットポルノが浸透していて、それが害をなすということに気づかない、というのは皮肉です。
本書の最後のほうでVRポルノについて少し触れられていますが、私はこれがネットポルノをさらに一段違うステージに移行させるものだと思うのです。数年前はじめてVRポルノを体験したとき「あ、これはやばい。近いうち性風俗産業の構造を根本から変える気がする」と感じたものです。
2022年現在、現実の恋人や配偶者よりはるかに美しく魅力的なパートナーといつでも好きなだけセックスすることができるという「サービス」が、すでに30-40%くらいの完成度で展開されている感覚があります。視覚・聴覚はかなり騙せるようになってきていますし、触覚との連動も急速に進化してきています。
よくSFで描かれるような、ヘッドマウントディスプレイをした廃人たちのディストピアまで、みなさん、あとちょっとですよ!!
DMMやSODが将来ペプシコやコカ・コーラのような「人間の本能を牛耳るメガカンパニー」になったら面白いなと思ったり思わなかったり。
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