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読書メモ: CFOのためのサブスクリプション・ビジネスの実務

 サブスクリプションはもはやビジネスモデルの主要な一形態になっていますよね。SaaSやMaaSなどが言葉としては巷間に知られていますが、今後も多くの既存ビジネスがサブスクリプション化していくことになると思います。

 その観点から、サブスクリプションビジネスの特徴を理解することはビジネスの教養のひとつになっていくでしょう。サブスクを利用する機会は増えているため、多くがユーザーとしての経験はあるものの、意外と「どうやって儲けるのか」についてクリアなイメージを持たない人もいるのではないでしょうか。本書は「CFOのための」と銘打っていますが、じつは多くのビジネスパーソンに勧められる内容だと感じました。

 この本のとても良い点は、実際の課金シナリオをもとに、サブスクリプションビジネスがどのような収益構造をもっているか、きちんと数字を積み上げて理解させてくれるところです。

 従来の売り切り型のビジネスでは、マーケティングや営業のみがプロフィットセンター(利益を生み出す部署)であり、サポートやメンテナンスはコストセンター(利益を産まない部署)ですが、ザブスク企業におけるカスタマーサクセスやサポートはプロフィットセンターとして位置付けられます。なんなら新規顧客の獲得よりも、既存顧客の維持やアップセルの方が重要であるということが数字をベースに理解できますので、本書を読めばマーケ・営業>サポートのようになりがちな力関係を逆転させるロジックを持つことが可能です。

 また、なぜ「カスタマーサクセス」というファンクションが注目され、SaaS企業を中心としてニーズが高まっているか自ずと解ります。「顧客中心」や「顧客満足」などのお題目はどの企業も掲げるありふれたものですが、売り切り型のビジネスではどうしても観念的なもの、あるいは企業文化の域を超えるものではありませんでした。一方このビジネスモデルにおいてはLife Time Valueの最大化が利益に直結するため、売り上げを増やすためには顧客満足度を上げることが必須となります。大量の広告やプロモーションによって顧客を獲得したとしても、プロダクトやサービスがニーズに合っていなければ、とたんに利益を上げられなくなってしまう。顧客満足度を上げるのは綺麗事ではなくなったのです。

 モデルの概要を説明した第一部と、サブスクリプションビジネスの税務や管理会計、連結決算に関する実務について書かれた第二部に分かれていますが、なんか実務寄りでつまらなそう、という場合や、ファイナンスの担当者でなければ第二部は思い切って読まなくて良いと思います、

 第一部を読むだけでも十分に価値があります。おすすめです。

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