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宛先のない手紙 vol.2

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ほぼわたしの考えを垂れ流すエッセイのようなもの。その2。
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2018年6月の記事一覧

「合わない」を大事にする

「合わない」を大事にする

「価値観が合う人と一緒にいたい」の、「価値観」についてぼんやり考えていた。

わたし自身にも、親しくしている人たちにも、いろいろと人間関係においてトラブルや事件が起こった最近だった。

「気が合う人とだけ仲良くしていられればいいや」という意見があるけれど、それはある意味で是で、ある意味では否だな、と思う。そして、「気の合う」も、「価値観」同様幅が広くて難しい言葉だな、とも思う。

わたしは「漂流」

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黄緑色のスイッチ

黄緑色のスイッチ

外階段にカマキリがいた。細くて小さい、たぶん子どもの。

クイックイッと鎌を振り上げている彼(か彼女)の前に、手を差し出す。

大きなカマキリは触れないけれど、小さければ平気だ。何度か手から飛び降りるカマキリの子を、植え込みの草地に下ろした。

頭がぼんやりとしていた。活字の上を目が滑るばかりで、内容が頭に入らない。文章も、どこかしっくりこない。眠気がある気もするけれど、寝不足なわけでもない。

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しなやかにステージを移りゆく

しなやかにステージを移りゆく

滅多に使わないFacebookが、「山里先生(仮名)のお誕生日です」と知らせた。

中学時代の恩師で、2年生の時の担任だった。先生は69歳になったらしい。「もう」なのか、「まだ」なのかはわからない。

山里先生は、 わたしたちと同じ年に「卒業」した。定年よりも早い退職で、卒業式の予行練習後に明かされたときは驚いたものだった。

「退職して、やりたかったことをやります」と先生は言った。やりたかったこ

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そして初心に戻る

そして初心に戻る

「やりたいことが見つからない」「好きなことがわからない」と言う人がいる。

「行きたい方向性がわからない」と言う人も多い。

欲求は目に見えない。だから、第三者が「こうなんじゃないの?」と指摘することはできない。その人が言葉を発していれば、そこから推し量ることができる程度で。

わたしは、書くことが好きだ。どちらかというならば、得意なことでもある。そんな思いで今の仕事に飛び込んだけれど、「そこから

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winより happy

winより happy

「win-winでいきましょう」という言葉がある。「お互いの利益になるように」、だろう。ビジネスの場で使われるイメージが強い。わたし自身は、言われたことも言ったこともほとんどないのだけれど。

取材から取材への移動中に、「win-winを目指しているわけではないなあ」と唐突に思った。

わたしがしている取材は、ジャーナリズム的なものではない。「こんなところがあるよ」「こんな人がいるよ」という、「ね

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不安定な土壌

不安定な土壌

ふわっと風に包まれるように、不安感に飲み込まれそうになることがある。

原因があるときもあるけれど、特にないことも多い。不安感は天気が崩れる直前の生温い風のように忍び寄り、わたしを覆い隠すように包む。

本格的に飲み込まれてしまうと思考が麻痺してしまうから、空元気を装ってみたり、わざと多忙にしてみたりする。効果は微妙。

理由はわからないのだけれど、心のどこかで、本当のわたしは誰にも好かれないのだ

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午後の車内から

午後の車内から

眠いのをがまんして、窓の外や車内を眺めている。

何か物珍しいものがあるわけではない。平日の昼下がり、ぽつぽつと乗客が点在しているだけ。流れていく景色も、特別素晴らしいわけではなく、至ってふつうの郊外の街並みがだらだらと通り過ぎていくだけだ。

子どもの頃も、わたしは乗り物の中であまり眠らなかった。

高速代の節約と渋滞回避のため、両親は夜中や早朝に車を走らせることが多かった。

流れていくテール

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団地の子

団地の子

「団地の子やからな」という言葉が嫌いだ。

転入し、卒業した小学校は、生徒の多くが団地住まいだった。

団地の子、とどこか揶揄するような言い方を耳にしたのは、中学校のとき。その後に直接悪い表現が続いたわけではなかったけれど、決していい意味で発せられた言葉ではないと感じた。

中学校はいくつもの小学校が入り混じるところで、わたしの出た小学校出身者にはヤンチャが過ぎる子たちも何人かいた。不良とまではい

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対等に付き合えなくなる人

対等に付き合えなくなる人

今でこそ落ち着いたのだろうとは思うけれど、父は地雷原のような人だった。

今思い返してみても、躾として納得のいくところだけではない、「え?」というタイミングで暴発し、怒鳴られることが多々あった。暴力こそほとんどなかったけれど、いきなり飛んでくる怒鳴り声が怖くてたまらなかった。

だからかどうかはわからないけれど、わたしは男性の荒っぽい声が極度に苦手だ。それがたとえ笑い声であったとしても、聴こえた瞬

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人との距離、そして深さ

人との距離、そして深さ

「人と距離感を測るのがむずかしい」という言葉を多々見かける。

相手の性格、相手との関係性によって正解が異なるわけだから、簡単なもののはずがないのだろう。

わたし自身がどうかというと、特別下手ではないけれど、得意だといえるほどではない、といったところだろうか。

ふだんは問題ないのだけれど、好きになった相手には途端に下手になる。嫌われたくない気持ちが肥大化してしまい、迷惑にならないようにと、それ

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ノーブレーキは災いの元

ノーブレーキは災いの元

何かの発言をする。そして、その発言が問題視される。弁解したりしなかったりは人それぞれだけれど、たいがいはその後「撤回します」となる。

このような一連の流れを見ながら、「せめて、はじめから素直に謝っちゃえば良かったのになあ」と思っていた。

とはいえ、謝ろうが撤回しようが、放たれた言葉はなかったことにはならない。

「言霊」の言葉通り、言葉には魂が宿っている。良くも悪くもエネルギーを含んでいるから

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消費されるニュースたち

消費されるニュースたち

話題の移り変わりが濁流のようだ。

少し前まではTOKIOの山口だらけで、追ってアメフト、突如5歳の子の虐待事件が持ち上げられたかと思うと、新幹線の殺傷事件が起きて、今日は米朝首脳会談で大きな動きがあった。そのうちW杯一色気味になるのだろう。(たぶん)

基本的には、悪いニュースがバーンと報道され、その話題で持ちきりになったところに、また新たな事件がバーン!と起こり、前の出来事は嘘みたいに存在感を

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切られた糸の理由

切られた糸の理由

親しかった人に離れられたとき、わたしはいつだって原因を探してしまう。

「何かしてしまったのかな」「何をやらかしてしまったのかな」と考えたところで、答えは出ない。

そもそも、本当に意図的に離れていったのかすらわからないのだ。ただ、連絡を取り合わなくなっただけで。

これまでに、そうしたことが2度あった。そして、さらに最近になって1度。

なんとなく、以前のふたりは、きっとどうしようもないことだっ

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割り切れなくてもいいじゃない

割り切れなくてもいいじゃない

「若菜は精神的に弱いから、図太くなれるように意識しなさい」

中1の秋から冬にかけて、部活の人間関係トラブルが原因で不調になった。わたし自身が当事者であったわけではない。先輩、同輩が揉めている中に放り込まれていたような立場だった。

「わたしには関係ないもーん」とすれば良かったのかもしれないけれど、当時のわたしにはできなくて、まともに受け止めてはどうすればいいのかを考え、その結果腹痛やら吐き気やら

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