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次の駅までのひとときに

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わたしのなんでもないエッセイ
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#文章

一生のお願いを温存する語彙力再考

一生のお願いを温存する語彙力再考

(語彙力):対象物から受ける感情が強く豊かすぎるあまり言葉にならない状態を、語尾につけることによって表現する語。ヤバい、エモいなどを主に肯定的に強調する。また、伝えるだけの語彙を持ち合わせていないことを束の間嘆いてみせ、自己承認欲求を隠す狙いを持つ。(都村つむぐの独断と偏見より)

twitterで見かけるたびに、便利だなあと思う。短さが賞賛される現代において、たった4文字で感動を表現できる。私も

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文章教室に通ったら、もやもやがステキで弱さは強みだったこと。

文章教室に通ったら、もやもやがステキで弱さは強みだったこと。

「接続詞は基本的にいりません」
そして、に朱で二重線。
「この文は2行前と同じ内容を説明しているだけですね。消しましょう」
ペンが勢いよく下へ走る。
「この段落はほとんど効果がないです」
ガッ、ガッと紙を掻く音。大きなバツ。
「よくはなりましたが、まだ取材先の魅力に踏み込めていません。都村さんの心がどこに動いたのかもう一度じっくり考えてみて。あと、タイトルも」

空になったコンビニのコーヒーカップ

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今日も1行目と戦っている

今日も1行目と戦っている

1行目は第一印象だ。

私たちは何かを読むとき、この書き手となら心を通わせられそうか、情報と体験を約束してくれそうか、つなぎ合わせた数単語から敏感に相性を探りながら判断している。だから全国に配布する取材記事も、コンテストに応募するエッセイも、twitterの140字だって、真っ白のディスプレイに初めて文字を打ち込むときは「よいご縁がありますように」と祈るようにして言葉を選んでいる。

中でもnot

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ステキな文章はこだわりの珈琲からドリップされる

ステキな文章はこだわりの珈琲からドリップされる

それは岡山駅で出会った。

モール内の珈琲専門店。ゆるい鬼のイラストがあしらわれたドリップパックが並ぶそのかたわらに、手のひらサイズの小箱が積まれている。

スライドさせて開けてみると、ころん、と珈琲豆の形をしたレンガ色の陶器が出てきた。消しゴムくらいの大きさなのに、手にはずしっと重みを感じる。飾りにしては少々味気ないし、何に使うんだろう。

「珈琲に入れると味が変わるんです」

後ろからかわいら

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