マガジンのカバー画像

旅の記憶

5
旅先で見たもの、感じたこと、あれこれ。
運営しているクリエイター

記事一覧

シチリアのお父さんがくれたオリーブオイル

シチリアのお父さんがくれたオリーブオイル

怒られるのは、好きじゃない。
ましてや、旅先で怒られるというのは、そうそうあることでもないと思う。

まぶしすぎる太陽と、緑色に光ったオリーブオイル。
お父さんのパスタに、沈黙の食事。

シチリアのことを思い出すたびに、そんな記憶があふれてくる。

***

十年ほど前の暑い夏、シチリア島を旅した。

南イタリアを回りたいという夫と私を、友人のナンドが遊びにおいでと誘ってくれた。普段、彼の一家はミ

もっとみる
ペルーレイル最前列の車窓から

ペルーレイル最前列の車窓から

昨今、無性に旅へ出たくなる。
というほど根っからの旅好きなわけではないけれど、なかなか出られない状況がつづくと途端に旅がなつかしくなる。

旅の写真を見返していたら、私史上、最大級の幸運にめぐまれたできごとをふと思い出した。清水寺で2回連続で凶を引いた翌日、三千院でさらに凶を引いたという、アンラッキーな人間に舞いおりた奇跡。

それは、マチュピチュへ行くために乗った電車、ペルーレイルでのことだった

もっとみる
私はインドで寄付がうまくできなかった

私はインドで寄付がうまくできなかった

何度やっても、うまくできないことがある。

これまで幾度となくやっているのに、自分でも不思議なくらい、できるようにならないということが、私にはけっこうある。

道案内で右と左をとっさに伝えることができないし、角ばった割り箸でモノを上手につかむことができない(なぜだか丸だと大丈夫)。

ささみの筋取りも、そのひとつ。何度やっても、破れてしまう。みんなどうしているんだろう。料理番組などでは、「はいここ

もっとみる
ガラパゴスから広島へ、旅する手紙をたずさえて

ガラパゴスから広島へ、旅する手紙をたずさえて

「ガラパゴス諸島の生物は、独自の進化を遂げているのです」

九州の片田舎で狭苦しさを抱えながら葛藤していた中学生の私は、国語の教科書でその島のことを知った。

「天敵はいません」

うそでしょう、と思った。
天敵もいないのに多様な生物が一緒に暮らしているなんて、奇跡でしかないと胸が高鳴った。

ガラパゴス諸島は、夢のような島だ。

あの時の憧れを抱いたまま大人になった私は、9年前、ようやくその地に

もっとみる
心から楽しめなかった旅のほうが、心に深く残っているー悲しみの街マテーラー

心から楽しめなかった旅のほうが、心に深く残っているー悲しみの街マテーラー

2011年の夏、私はイタリア南部で浮かれていた。

ローマやナポリ、シチリアを旅しながら、まぶしすぎる太陽に酔い、美味しい料理に胃も心も満たされて、いつ着るとも分からないハードルの高すぎるデザインのワンピースを手に入れたりした。

『イタリアは最高です』と書いた絵手紙を、自分宛に送ったりして。

きらびやかな大聖堂を見上げて驚愕し、コロッセウムやギリシャ時代の劇場の地に足を踏み入れてタイムスリップ

もっとみる