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バイロイトのフルトヴェングラー
超有名なEMI盤と同一場所、同一日時をうたう「謎の」録音。どちらがゲネプロで、どちらが本番か?
演奏はほぼ同じ(第4楽章だけはEMI盤よりやや冷静)ですが、音質はこちらのほうが少し良いと言われています。
EMI(ワーナー)盤をお持ちの方はぜひ聞き比べをオススメします。
ウィルヘルム・フルトヴェングラー指揮バイロイト祝祭管弦楽団
ベートーヴェン 交響曲第9番《合唱》
1951年7月29日 バイロイト
西側でのムラヴィンスキー
1960年、ムラヴィンスキー&レニングラード・フィルがヨーロッパ・ツアーをおこなった際、ウィーンとロンドンでDGによりセッション録音された音源。同コンビによる緊張感に満ちた演奏と、西側の当時最高品質の機材によるレコーディングとが相まって、現在に至るも同曲(3曲とも)の絶対的名演。
飛行機嫌いのムラヴィンスキー。夫人にどやされて渋々搭乗。離陸したところに機長が挨拶に来た。「マエストロ。私の機にご搭乗
イ・ムジチの四季(アーヨ盤)
イ・ムジチの「四季」は、日本クラシックレコード史上最も有名な盤のひとつ。バロック音楽のトビラを開けた役割は大きい。イ・ムジチ合奏団はローマのサンタ・チェチーリア国立アカデミアの卒業生12名が集まって1951年に結成、編成はヴァイオリン6、ヴィオラ2、チェロ2、コントラバス1、チェンバロ1。十八番の「四季」はこれまでに9回録音しており、この盤は2回目にして最初のステレオ録音。コンマスのフェリックス・
もっとみるジルベルシュテインのラフマニノフ
ジルベルシュテインは旧ソ連出身のドイツのピアニスト。ドイツ・グラモフォンは旧ソ連の無名の実力派演奏家(ベルマン、ウゴルスキなど)の発掘に努力してきたが、彼女もその一人。このラフマニノフは非常に清々しいサラサラした「感傷的な」演奏。ピアノも完全にオーケストラに同化しており、弦もたいへん滑らかで洗練されている。暗い情念を際立たせている著名なリヒテル盤の対極にあるといえる。一回聞くとしばらく食傷してしま
もっとみる指揮者キリル・コンドラシンの名盤
ロシア人らしからず、とにかく明るい指揮者コンドラシン。その証拠がこのCD。米国人ピアニスト、クライバーンが冷戦時代に第1回チャイコフスキー・コンクールで優勝したときに伴奏していたことで西側で一気に有名になった彼が、米国を訪れた際に録音したのがこのアルバム。「RCAビクター交響楽団」とは大人の事情による覆面オケで、正体はニューヨーク・フィルなどのメンバーと腕利きのフリー奏者から構成されていたらしい。
もっとみるカラヤンの「幻想交響曲」
幻想交響曲は名曲中の名曲であるにもかかわらず、カラヤン&BPOの録音としては発売当初から評判が良くない。ほとんどの評者、聴者から長年スルーされている。非常に珍しい。ベスト盤は複雑多彩なオーケストレーションを忠実に再現したアバド盤、標題音楽としてのドラマ性を劇的に表現したミュンシュ盤と言われている。知らんけど。このカラヤン盤は例によって美麗、繊細、艶やかで、まるでR.シュトラウスの交響詩のようにクー
もっとみる【ベートーヴェン交響曲連続演奏会】カラヤン 1966年東京ライヴ
1966年4月11日、東京での会話。
カラヤン「お前ら、明日から公演だが皇太子殿下御夫妻は来られるし、国歌演奏もあるからしっかりやるんだぞ」
BPO団員「マエストロ、わかりましたが日本は初めての奴ばかりで・・・どんな感じなんですかね」
カラヤン「そうか。前回(1957年)来日したメンバーの多くはクビにしちまったからな」
BPO団員「へい。前任者に目をかけられた連中はほとんどいません。そのかわり今は
ショルティ&VPO/モーツァルト「レクイエム
2024年1月13日の大学入学共通テストの国語の問題に出た某音楽学者による評論文では、「音楽」とは鑑賞のスタイルによって変遷してきた概念なので、その過程を無視してそれ自体を普遍化してしまわないよう注意すべきであるという論旨が展開されていた。
その代表的事例として挙げられていたのがこのCDである。モーツァルトの没後200年の命日である1991年12月5日にウィーンのシュテファン大聖堂で行われた典礼ミ
ヨッフムのブルックナー8番
2024年はブルックナー生誕200年である。敬虔なカトリック教徒にして元オルガニスト。ウィーン音楽院の和声、作曲、対位法の教授。作品は交響曲と教会音楽がほとんど。ベートーヴェンの骨格にシューベルトの旋律とワーグナーの和声で構成された定型的な書法は、音楽史的には後期ロマン派の代表格。だが10曲(0番含む)の交響曲はどれも同じように聞こえ、和声は濁りがちで、物語とは無縁の絶対音楽だったため多くの人々か
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