ぷろヴィそ

人や事物との一期一会を大切にしたいですね。性格は「気取らない黒ヒョウ」です。クラシック…

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人や事物との一期一会を大切にしたいですね。性格は「気取らない黒ヒョウ」です。クラシック音楽、ミステリー、時代小説、ノンフィクションなどのコンテンツが大好き! あっ、あとお酒も・・・

最近の記事

「ワルツの革命」アーノンクール

衒学的指揮者アーノンクールがウィーンにおける舞曲の展開を徹底的に追ったアルバム。対象は「始祖」モーツァルト、ヨハン・シュトラウスⅠ世とそのライバル、ヨーゼフ・ランナー。可能な限り自筆譜や初版譜などを使用し、作曲者が指定した楽器を用いることによって、後世の編曲で覆い隠されていた部分が明瞭になり「革命的」演奏となった。ワルツやポルカが単なる娯楽的作品ではなく、文化史的にも、音楽学的にも重要な意味合いを持つのだ。「ワルツは19世紀のヨーロッパ社会の進化を映す鏡である」(アーノンクー

    • ストコフスキー/オーケストラ・トランスクリプション

      ストコフスキー94歳時の録音。初録音は1917年(!)。レコードを通じていかにクラシック音楽の若い聴衆を増やすか。この課題に生涯挑戦し様々な大胆な試みを行った人。原曲に手を加え(自ら編曲)、オケの配置を工夫し、映画にも出演し、現代音楽を積極的に取り上げた。チェリビダッケなどとは真逆である。おかげでハイブロウな評者や聴衆からはただのショーマンシップと見下された。特にバッハなどバロック音楽などの勝手なトランスクリプションは噴飯ものだったらしい。 21世紀の現在はそうした偏見は排除

      • 絶好調のクラウディオ・アバド

        80年代のアバドはロンドン響、ミラノ・スカラ座管、ウィーン・フィル、シカゴ響といった世界有数のオケとの録音を多数行い、まさに絶好調であった。首席客演指揮者を務めたシカゴ響とのこの録音は、ミュンシュ盤と並んで20世紀の幻想交響曲のベスト盤であった。しかし前者が標題音楽としてのドラマ性を劇的に表現した熱血系であるのに対し、アバドは複雑多彩なオーケストレーションを誇張なく忠実かつ客観的に再現している。つまり全く異なる演奏である。後者のスタイルはその後ピリオド系の演奏に引き継がれ、現

        • マゼール&ウィーン・フィルによるラヴェル

          マゼールの演奏史はワイルド時代(50~60年代)、スッキリ時代(70~80年代)、巨匠然時代(90年代以降)に分けられる。 ラヴェルについては1981年に本場フランス国立管との録音があるが、今回は何とウィーン・フィルとの共演。VPOのラヴェル録音は非常に珍しく、ほとんど初録音ではなかったか?  注目すべきの⑤は後半から各楽器が自己主張を始め、コーダ直前ではテンポがぐっと遅くなり、結果旧盤より1分近く長い演奏となっている。フランス人のオケだったら怒り出すところだろう。 また④は

        「ワルツの革命」アーノンクール

          フリッツ・ライナーとシカゴ交響楽団

          フリッツ・ライナーはハプスブルク帝国の生まれだが、1922年には指揮者として渡米している。非妥協的で独裁的な性格が災いしたらしい。実力はあったので合理的な米国のオーケストラ・ビルダーとしての実績を重ね、1953年クーベリックの後任としてシカゴ交響楽団の音楽監督となった。在任わずか10年足らずだが、大レコード会社RCAの画期的な2チャンネルステレオ録音の鮮明さと相まって、このコンビは黄金時代を迎えた。YouTubeで見られるその指揮ぶりは動きが少なく、動かすのはほとんど腕だけだ

          フリッツ・ライナーとシカゴ交響楽団

          ニューヨークのブルーノ・ワルター

          大指揮者はクセのある人物がほとんどだが、このワルターは珍しく温厚で円満、勤勉家で人格者であった(女性問題除く)。1938年にドイツから米国に亡命。戦後はNYP、VPO等と多く共演したが80歳(1956年)に引退表明。その後説得されて西海岸の録音専門オケ(コロンビア響)と膨大なステレオ録音を残した。このCDはそのワルターのモノラル時代の録音。①~⑥はコロンビア響を名乗ってはいるが、ニューヨークシティでの録音なので、のちのステレオ時代のハリウッドの演奏家たちではなくNYPやNBC

          ニューヨークのブルーノ・ワルター

          ブリュッヘンと18世紀オーケストラの「第九」

          ブリュッヘンと18世紀オーケストラは、モダン楽器の団体との違いを意識し、古楽器による合奏の特色を徹底して追求しており、現代オーケストラの「均等の美学」を真っ向から否定している。そのため今までの古楽器にないシンフォニックな、迫力のある響きが生まれた。ブリュッヘン自身が「私たちは傑作しか演奏しないのです」と語っているとおり、彼らの演奏は傑作揃いである。 そのコンビが8年がかりで完結させたベートーヴェン・シリーズのラストを飾る第9作目のアルバム。 しかしこの「第九」だけはさすがに初

          ブリュッヘンと18世紀オーケストラの「第九」

          チェコのクーベリック

          チェコの巨匠クーベリックの活動歴は主に5期に分かれる。 ①チェコ・フィルの首席就任(1942~) ②西側に亡命、英国で活動(1948~) ③不遇なシカゴ響音楽監督時代(1950~1953) ④バイエルン放送響との全盛時代(1961~) ⑤ソ連崩壊後チェコ・フィルへ復帰(1990~) 1990年、クーベリックが40数年ぶりに長い旅を終えてチェコ・フィルを指揮した。この「新世界」はその翌年、再びチェコ・フィルの指揮台に立ったクーベリックによる記念碑的ライヴ録音。 ラファエル・クー

          チェコのクーベリック

          バイロイトのフルトヴェングラー

          超有名なEMI盤と同一場所、同一日時をうたう「謎の」録音。どちらがゲネプロで、どちらが本番か? 演奏はほぼ同じ(第4楽章だけはEMI盤よりやや冷静)ですが、音質はこちらのほうが少し良いと言われています。 EMI(ワーナー)盤をお持ちの方はぜひ聞き比べをオススメします。 ウィルヘルム・フルトヴェングラー指揮バイロイト祝祭管弦楽団 ベートーヴェン 交響曲第9番《合唱》 1951年7月29日 バイロイト祝祭劇場でのライヴ録音(モノラル)

          バイロイトのフルトヴェングラー

          西側でのムラヴィンスキー

          1960年、ムラヴィンスキー&レニングラード・フィルがヨーロッパ・ツアーをおこなった際、ウィーンとロンドンでDGによりセッション録音された音源。同コンビによる緊張感に満ちた演奏と、西側の当時最高品質の機材によるレコーディングとが相まって、現在に至るも同曲(3曲とも)の絶対的名演。 飛行機嫌いのムラヴィンスキー。夫人にどやされて渋々搭乗。離陸したところに機長が挨拶に来た。「マエストロ。私の機にご搭乗いただいてとても光栄です」ムラヴィンスキー「ありがとう。ところでこの飛行機は誰が

          西側でのムラヴィンスキー

          イ・ムジチの四季(アーヨ盤)

          イ・ムジチの「四季」は、日本クラシックレコード史上最も有名な盤のひとつ。バロック音楽のトビラを開けた役割は大きい。イ・ムジチ合奏団はローマのサンタ・チェチーリア国立アカデミアの卒業生12名が集まって1951年に結成、編成はヴァイオリン6、ヴィオラ2、チェロ2、コントラバス1、チェンバロ1。十八番の「四季」はこれまでに9回録音しており、この盤は2回目にして最初のステレオ録音。コンマスのフェリックス・アーヨは当時26歳。透明で颯爽としていて躍動感があり、艶やかで流麗。何度聴いても

          イ・ムジチの四季(アーヨ盤)

          ホワイトハウスのカザルス

          平和主義者にして20世紀最高のチェリストであるパブロ・カザルスがケネディ大統領に招かれた演奏の記録です。当時は冷戦の真っ只中、前月にはソ連が人類史上最大の水爆実験を断行したばかり。1938年以来アメリカ国内における公の席での演奏を中止していた巨匠が、ケネディのヒューマニズムの指導者としての姿に心を打たれて披露した一世一代の名演。 ジャケット写真でケネディ大統領の隣は当時のプエルトリコ総督らしい。(プエルトリコはカザルスの母の祖国) パブロ・カザルス(チェロ) ミエチスラフ・

          ホワイトハウスのカザルス

          ベームと日本

          伝統を重んじる指揮者ベーム。当該音楽作品がこれまでどのように演奏され今日に引き継がれてきたかという思いが人一倍強かった。目立ちたがりの再現(演奏)行為が多い中で、独墺系音楽の水準器としての役割を果たした。伝統を重んじると言えば日本人もそうだし、ほぼ手兵と言っていい(名誉指揮者だった)VPOもそうだった。かくして1975年3月のこのコンビの来日公演によりベームの人気に一気に火がついた。NHKが生中継したこともありカール・ベームの名は小学生でも知るところとなった。さてこのブルック

          ベームと日本

          バーンスタイン 自由への頌歌

          1989年12月25日、ベルリンの壁が崩壊したことを記念したバーンスタインによる「第九」演奏会の記録です。オケのメインはバイエルン放送響(BRSO)ですが、東西6つの楽団のメンバーを加えた特別編成オーケストラに加え、東西ドイツの合唱団とソリストが参加しています。バーンスタインは第4楽章の歌詞の「Freude(歓喜)」を「Freiheit(自由)」に変更しています。 ところでベルリンといえばBPOが主役となるべきですが、なぜミュンヘンのBRSOが? 当時カラヤンが4月にBPO監

          バーンスタイン 自由への頌歌

          ブーレーズのバルトーク

          「完全な音楽家」ブーレーズの指揮者としての第一期黄金時代の超名盤。「オケコン」と「弦チェレ」のベスト・カップリングはなかなか珍しいです。バルトークの斬新さ、清新さを実感できる、とにかく緻密な演奏。当時のNYPは凄かった。両曲とも90年代に再録音があるが、ブーレーズが選んだのはシカゴ響でした。 ところでこのジャケットデザインですが、当時SONYが力を入れていたSQ(4チャンネル)をイメージしています。録音するにあたってブーレーズは自分の周りにオーケストラを配置して「オケコン」を

          ブーレーズのバルトーク

          ジルベルシュテインのラフマニノフ

          ジルベルシュテインは旧ソ連出身のドイツのピアニスト。ドイツ・グラモフォンは旧ソ連の無名の実力派演奏家(ベルマン、ウゴルスキなど)の発掘に努力してきたが、彼女もその一人。このラフマニノフは非常に清々しいサラサラした「感傷的な」演奏。ピアノも完全にオーケストラに同化しており、弦もたいへん滑らかで洗練されている。暗い情念を際立たせている著名なリヒテル盤の対極にあるといえる。一回聞くとしばらく食傷してしまうような曲でも、こうした演奏なら間をおかずに何度も聞ける。 リーリャ・ジルベル

          ジルベルシュテインのラフマニノフ