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とある農協の渉外

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#JAバンク

あれが届いてないんだよ、ほら、あれ

「えーっと、なんだっけ、名前・・・」米農家の佐々国さんちの玄関前で、トラクターの車庫から出てきたご主人、信夫さんに呼び止められ、話しかけられた。

年が明け、松の内も終わったところだけど、

「今年もよろしくお願いいたします」と、ご挨拶しつつ、話の先を待った。

・・・・・

信夫さんが固まってしまった。伝えたい言葉がパッと浮かんでこない様子。

空を見上げながら、

「えーっと、ほら、あれだ、あ

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靴ずみを使わない。固く絞った布で拭く

仕事で服装と身だしなみは口を酸っぱくして言われる。

スーツで回るから、革靴を履いている。

革靴はいつも磨いておくのが常識だけれど、農協の外回りは、田んぼや畑の畔を歩くことも多い。

最初の頃は、手のひらサイズのスポンジの靴磨きを常備して磨いていた。

でも、ピカピカになっているのは磨いた直後だけ。

ワックスの水分なのか、それとも静電気とかなのか、原因は分からないけど直ぐに革靴の表面がホコリま

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夫と話してみる」「どの辺を話します?

悪者に、自ら積極的になろうとする人は少ない。

できれば、良い人でいたい。そう思われたいと思っている人が大半だ。

訪問先で商品をオススメしたとき、きっぱりと断れないお客さんは、断り役を、他の身内を代打に起用する。

・「父と相談してみます」

・「妻に確認してから決めます」

・「息子にも聞いてみないと」

後日、あらためてオススメすると、

・「父が今のままで良いって」

・「妻が納得してくれ

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書道教室の先生、子供に靴を並べる指導

四津川造園の奥さんは、自宅の離れの建物を使って、地域の子供たちに書道や硬筆を教えている。

造園業をやっているだけあって、敷地も広いし、自宅建物も和風建築の立派な建物だ。

70代後半のご主人はまだまだ現役で、トラックを運転したり、ユンボ(ショベルカーの小さいサイズ)を乗りこなしたり、3メートルくらいのハシゴに上って作業をしていたりする。

奥さんは、造園業の方は携わっていない様子だ。

昔は携わ

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時間の確認は、スマホより腕時計で

今は年配のお客さんでも、ケータイ電話やスマートフォンを持っている。

それでも、

①電話に出る

②電話をかける

③写真を撮る

④ショートメッセージを見る

の範囲くらいの機能活用に留まる人が多く、その範囲レベルでも、使いこなす練度は人によってそれぞれ。

だから、僕の日常の感覚で

スマホを

時計として

カレンダーとして

手帳・スケジューラーとして

メモ帳として

辞書・辞典として

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珊瑚の印鑑、指輪の印鑑、翡翠の…

印鑑とかハンコとか、三文判とか、みとめ(みとめ印)とかいろいろ呼び名は有るけれど、金融機関の取引は「お届け印」か、「届け出印」と呼ぶ印鑑での取り引きが絶対だ。

あ、融資(ローン)と相続は実印だった。

ま、まあ、ほとんどがお届け印(オトドケイン)での取り引き。

お客さんは「銀行印」と読んで区別していたりする。

以前に総代をされていた幡山佐一さんのお宅にお伺いしたら、

「農協の銀行印だろ?」

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JAバンク、地元の利用中心の金融機関

他のJAが管轄する地域で梨の栽培を行っている農業者さんが、窓口に来店された。

販路拡大のため、うちのJAの直売所にも、自慢の梨を出荷をしたいとのことで、そのために先ず、口座開設と出資組合員加入をしたいとの要件だった。

JAは全国各地にある。

それぞれ管轄区域は重複していない。

農業生産者として、正組合員になるためには、

その管轄区域に住んでいる事。

または、その管轄区域の農場で農業を営

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定期0.01%、普通0.001%の現代

「昔は郵便局に預けたら、10年で倍になって返ってきたんだけどな」

70歳過ぎの元気なお爺さん、竹村正蔵さんと貯金のキャンペーンのお話をしていると、ちょくちょくお聞きする定型文句が出てきた。

「今はキャンペーンでも金利の上乗せをする金融機関は無くなってしまいまして、普段の店頭の金利でのお預かりさせていただいております」

「いくつなんだい?」

「定期貯金は0.01%です。普通貯金は0.001%

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住宅ローンのお客様の新築完成で、写真

農協の住宅ローンは、大手の都市銀行で審査が通らなかった人が、他にもいくつか金融機関を回って、終盤に行きつくところ。と、以前は言われることがあったそうだ。

今は、インターネットで金利の比較をして、ネットバンク以外で、近所にある金融機関で金利の低い所を探すお客様が、農協の住宅ローン商品を見つけて相談に来店され、借り入れ申し込みをされることが多い。

一番低い金利を、お客様は希望される。

その代わり

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お子さんに冗談は禁句。マイナスしか生じない

いつも午後5時以降のご集金の原木宣隆さんの家は、4人家族。

ご主人は1度しかお会いしてないけれど、普段のお取引先の年代層から比べると1世代は若い。

30歳半ばくらいか、40歳くらい。やや細身で、お会いしたときは表情はかたい感じだった。

奥さんは30そこそこの歳で、いつも明るく応対してくれて、貯金のキャンペーンとかの話しも気にしてくれている。

パートを終えて帰ってくる時間が夕方5時くらいだか

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オクラ、なってるの見た事ねえのか(笑)

緑区団地は戸建て住宅が等間隔に立ち並ぶ地域だけど、それぞれの家に庭や駐車スペースとか、個性的・特徴的な違いがある。

団地の地区の一番南で、日当たりの良い立地に家がある山石光一さんの家では、車1台の駐車スペース以外は、全て畑にして家庭菜園を楽しんでいる。

前に建物更生共済の請求手続きを行った。

ようやく共済金の振り込みまで全て終了し、そのことの報告に立ち寄った。

光一さんは畑にいた。

大分

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日曜相談会で大丈夫だって言われたのに

今月1日が日曜日だったから、今日、ふつかの月曜日は2日分まとめて集金を回っていた。

忙しい。

9時前から回り始めて、6件目で10時を回ってしまった。

6件目の林さんの集金が終わって、玄関を出ようとしたら携帯が鳴った。

笑顔を絶やさず、

「あ、あとで電話に出ます。それじゃ、失礼します。ありがとうございました。またよろしくお願いします」

後ずさりしながら、

後ろ手で玄関の引き戸を引いて開

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「営業車のオイル交換いつした?」

来週、監査課が回ってくるらしい。

渉外は、日報と組織のファイルだけ、前もって準備する。

受取書や証憑綴り(ショウヒョウツヅリ)とか、融資や共済、経済関連の書類は、窓口職員と役席が当日に合わせて徐々にチェックしながら揃えていく。

監査は、「外部の監査」と「内部の監査」の2タイプある。

同じ農協の職員で構成される監査課が行うものと、うちの農協以外の組織(連合会や金融庁とか)の外部から来た人たち

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同級生とお話したら、私だけ年金無いの

担当地区にあるお寺、佳堅寺(かけんじ)の敷地の隣にある幼稚園、かけん幼稚園には、毎月25日過ぎ、夕方4時ごろに集金がある。

園長先生は、隣のお寺の住職さん。

貯金を積んでくれているのは、職員さん2名。

一人はバスの運転手をしている原田正雄さん。

原田さんはちょうど、バスの洗車を始めたところみたいで、長靴にゴム手袋、ゴムエプロンの姿が見えた、

遠くでも僕に気付いて、

あ・・・

というリ

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