【コラム】『しのぎを削った好敵手Part5(長崎、熊本、大分、琉球)』~2022年にJ2で対戦して印象に残った選手~

2022年にファジアーノ岡山と対戦して個人的に印象に残った選手を全チーム1選手ずつ紹介していきます。Part5(全5回)

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V・ファーレン長崎

MF鍬先祐弥

良い選手だなって思う基準はいろいろなものがあるだろう。得点力がある選手、たくさんチャンスを作る選手、ピンチを救ってくれる選手・・・。その中でも僕は“個人で組織に大きな影響を及ぼすことができる選手”が良い選手だと思っている。

長崎の中盤の底に君臨する鍬先祐弥はその1人だ。彼に魅力を感じたのはターンする力。強いプレッシャーを受けても、相手とボールの間に自分の身体をしっかりと入れてボールを隠しながら相手の逆を突く。右から奪いに来たら左にターンし、左から奪いに来たら右にターンする。中盤で相手をいなすことができる鍬先のターンによって、岡山のプレスをかわされた印象が強く残っている。

ターンは偉大なプレーである。守備側が行うプレスは相手からボールを奪うために、チームで連動して設定した奪い所まで誘導していく。いわゆる追い込み漁のようものだ。しかし、ターンは追い込み漁を掻い潜れるどころか、破綻させることができる。相手が右サイドに追い込んできても、左にターンすればプレスに捕まらない。そこから左サイドに展開していけば、手薄なサイドから前進することができる。ビルドアップの方向転換を可能にし、相手の思惑を打ち砕けるターンができる選手は良い中盤の選手である。相手チームの脅威となる存在だ。


ロアッソ熊本

FW杉山直宏

絶対的な武器を持っている以上に大きな強みはない。

杉山直宏は右サイドから切れ込み左足でのシュートに絶対的な自信をもっている。7月2日に行われた第27節・ホーム熊本戦(●0-2)ではゴールを脅かした。37分、右サイドからドリブルを開始。縦への突破を見せつつ、瞬間的にテンポを上げて対面する宮崎智彦をかわし、中央に切れ込んで左足を振った。カーブが掛かって枠の左隅を捉えたコントロールショットはGK堀田大暉が素晴らしいダイビングセーブでストップしたけれど、肝が冷えた瞬間だった。

確固たる強みがあると、精神的にも良い影響を及ぼす。自分の方にハメれば力を発揮できれば、自信をもってプレーできる。さらに強みを相手が警戒してきたら、それを利用して逆を突けばいい。杉山の場合なら、中央に切れ込むドリブルを囮にして縦に突破していく。相手との駆け引きで優位に立ち、ドリブル成功率が上がることにもつながり、自身の価値をさらに高めることになる。

分かっていても止めれない。絶対的な武器をもつ選手はピッチにいるだけで脅威に感じる。


大分トリニータ

MF井上健太

大分に新幹線が開通した。その名は井上健太。福岡大学から大分に入団したプロ2年目(2020年は特別指定選手としてJ1で6試合に出場)の選手は、とにかく速い。速すぎる。

陸上の短距離走者だと勘違いするくらいに直接的なスピードが群を抜いている。爆発的な速さを武器にドリブルで右サイドを切り裂いていき、クロスを上げてチャンスを作り出す。スプリントを繰り返して量をもたらしていたけれど、今季は質に磨きがかかった印象だ。

5月21日に行われた第17節・ホームの大分戦(〇1-0)ドリブルだけでなく、背後への飛び出しでゴールに向かってきた。7分、巧みなビルドアップでプレスをかわし、ペレイラドリブルで敵陣に進入してスルーパス。これに反応した井上は一気に足の回転数を上げた。単純なスピードでDFを振り切って抜け出すと、PA右からシュートを放つ。これは、この試合が移籍後初先発&初出場だったGK堀田大暉がタイミングよく飛び出して防いだ。堀田の好守に救われたけれど、圧倒的な速さに驚嘆した。

速さという尺度はどこに行っても変わらない。うまさという曖昧なものではなく、スピードは数字として表せるし、相手との優劣は分かりやすい。日本屈指のスピードを武器に、来季はJ1昇格という目的地まで大分を連れて行くのか。


FC琉球

MF上里一将

キックの精度はさびることがない。磨かれたものであればあるほど、感覚という刻印が足に刻み込まれているから。上里一将の左足は36歳になっても黄金に輝く。

4月9日に行われ第9節・アウェイの琉球戦、圧巻のFKだった。23分、ゴール前やや左からのFK、ゆったりとした間合いで助走を始めると、上里の左足から放たれたボールは壁を越えて枠に飛んでいく。壁には188cmの柳育崇、186cmのヨルディ・バイス、185cmのミッチェル・デューク、181cmのチアゴ・アウベスが並んでいた。大柄な彼らがジャンプしていたから、実質的に2m近くの壁を越えて、曲げながら落とす。美しい軌道はクロスバーのギリギリを射抜いてネットを揺らした。GK金山隼樹も懸命に反応してわずかに触ったけれど、弾き出すことはできず。コース、ボールスピード、球威・・・全てが完璧なFKだった。

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