【コラム】『しのぎを削った好敵手Part3(千葉、東京Ⅴ、町田、横浜FC)』~2022年にJ2で対戦して印象に残った選手~

2022年にファジアーノ岡山と対戦して個人的に印象に残った選手を全チーム1選手ずつ紹介していきます。Part3(全5回)

Part1はこちら

Part2はこちら


ジェフユナイテッド千葉

DF田邉秀斗

とてつもなく速かった。

7月30日に行われた第29節・ホームの千葉戦、田邉が見せつけたスピードを前に岡山のサポーターは静まり返った。今季に川崎から育成型期限付き移籍で千葉に加入した田邉はこの試合でJデビューを飾ると、77分に自陣PA内でミッチェル・デュークから田中雄大へのパスをカット。そこから迷うことなくドリブルで前に突き進んでいく。すぐに本山遥が塞ごうとアプローチしたが、届かない。田邉は本山をかわすどころか、ぐんぐんと加速する。本山は機動力があり、純粋なスピードも持っている選手だ。そんな彼の懸命な追走に構うことなくドリブルを止めない。さらに後ろからユニフォームを引っ張ることすら許さない。まさに独走状態で敵陣にボールを運んだ。そして、引き付けた柳育崇の両足が揃った絶妙なタイミングで櫻川ソロモンにパスを出し、チアゴ・デ・レオンソのゴールにつながった。

試合が終盤に差し掛かり疲労があった中で、およそ70mを8秒で走り抜けた。DFの選手が自陣からドリブルで運んでいくプレーは勇気が必要だっただろう。それをプロのデビュー戦でやってしまう恐ろしい20歳。CBにスピードを求めるチームによる争奪戦になるのではないか。今オフの動向にも注目したい。


東京ヴェルディ

FW河村慶人

右サイドから岡山を確実に苦しめた。

174cm72kg以上に大きく見える身体で、相手ゴールに突進していく。馬力のあるドリブルで推進力を発揮し、攻撃に強みがある岡山の左サイドを撤退させた。速さや力強さもあるが、特筆すべきはボールを前に運んでいく強い意志。相手がいても縦に仕掛けていき、カバーに来ようとも関係ない。フェイントがすごい、ステップワークが細かいというよりも、相手と身体をぶつけながらでも取られないし、止められない。まさに重戦車のようなドリブルだった。

そして得点も決めた。左サイドからのクロスに豪快に飛び込み、ヘディングシュートをしっかりと流し込んだ。相手DFの枚数が足りていないと見るや否や、迷うことなくボックス内に入っていく。さすが、FWを本職としている選手だ。推進力だけではなく得点感覚も持っていた。


町田ゼルビア

GK福井光輝

今季初めての敗戦となった第4節・アウェイの町田戦は悔しさの面で記憶に残っている。1‐3で敗れた試合では、1ゴール1アシストの平川悠(山梨学院大在学中)や2ゴールの太田修介も印象に残っているのだが、今回は好セーブで立ちはだかった福井光輝を挙げたい。

スコア以上に力の差を感じた試合という感想が残っている。しかし、ハイライトを見返すと、岡山も決定機を作っていたことを思い出した。前半に作り出した大きな2つの決定機が得点になっていれば、90分間の結果も違ったものになったかもしれない。そこで福井が立ちはだかった。

1つ目は23分、右サイドから河井陽介が上げたクロスに田中雄大が頭で合わせたヘディングシュート。田中のシュートは完璧だった。相手選手の前に入ってドンピシャのタイミングで合わせ、しっかりと枠の右下スミに叩きつけている。しかし、福井は横っ飛びで弾き出した。

2つ目は45分+1分、ミッチェル・デュークのスルーパスに抜け出した宮崎幾笑がPA右で放ったシュート。幾笑は相手DFの前に入り、GKとの1対1を迎えた。少しボールを右に流して角度を作り、利き足ではない右足で左スミを狙うも、福井は間合いを詰めてから身体を大の字のように開いて右足に当てて止めた。

左利きでディストリビューション(意味:分配、GKのプレーにおいてはパントキックやゴールキック、オーバーハンドスローやアンダーハンドスロー全般を含む)に長けたGKという印象だったけれど、彼の真の姿は好セーブでチームを勝利に導くことができる守護神だった。


横浜FC

MF和田拓也

判断と技術に優れたベテラン。

第32節・アウェイの横浜FC戦、岡山は新型コロナウイルスの陽性者が多発したため、大幅なメンバー変更を行って自動昇格を占う直接対決に臨んだ。

今季に出番の少なかった選手が意地を見せるようにニッパツ三ツ沢球技場で奮闘し、善戦を演じていたけれど、勝つことができなかった。90分を通して流れを引き寄せきれなかった要因は、プレスがハマり切らなかったことだと考えている。

横浜は後方からつないできたけれど、新潟のように個々人がパスをつなぐ力、プレスをかわす力を最大の武器にしているわけではない。だから、捕まえられそうな場面がかなりあったと記憶している。だけど、横浜に組織として右サイドからプレスをかわされて、再三にわたってチャンスを作られた。

そこでカギを握っていたのが和田拓也だった。ダブルボランチの1人として先発した和田は、DFラインに下りたり、CBの間に落ちたりという動きはしない。相手のプレスをかわしてボールを前進させるために、自分はどこにいればパスをもらえるのか、味方をサポートできるのか、相手に捕まえられないか。これらを考えてプレーできる。試合を俯瞰で見ているように感じたし、優れた判断と技術を持っている選手は何歳になってもチームに貢献できる。敗戦という結果によって、大きなベテランの存在感を思い知らされた。

この記事が参加している募集

読んでいただきありがとうございます。 頂いたサポート資金は遠征費や制作費、勉強費に充てさせていただきます!