丸膝玲吾

関西の大学生。小説を書いたりしています。小説を書いたり、絵は書けませんが漫画を作りたい…

丸膝玲吾

関西の大学生。小説を書いたりしています。小説を書いたり、絵は書けませんが漫画を作りたいです。

マガジン

  • 小説

    10字以上10000字未満

  • エッセイみたいな

    小説以外です。

記事一覧

固定された記事

かつて僕らは 第一話

 なんで音楽やってんだっけ。  たまに頭がひどく冴え渡り何も感じ取れなくなって、一つの疑問だけが浮かび上がることがある。何もない真っ白な無音の空間に放り込まれた…

丸膝玲吾
8日前
28

かつて僕らは 構想

[大枠]高校時代に解散したバンドのその後。夢が叶った者、別の夢を叶えた者、夢を追っている者、夢を諦める者、彼らの人生を描きたい。 [登場人物]「長門奏(ながとかなで…

丸膝玲吾
3時間前
5

[小説] 嘘つき小倉くん

 「下らないね、そんなの」  小倉くんはサイダーの缶を開けて一気に喉に流し込んだ。小倉くんはいつも「炭酸が好きなんて子供じゃあるまいし」と馬鹿にしていたのだけど…

丸膝玲吾
23時間前
8

カクヨムに毎週投稿している短編をnoteに投稿しようか迷っている。同じ小説を別のサイトに二度も投稿するのは無駄な気がして嫌なのだけど、そしたほうがいい気もする。考えよう。

丸膝玲吾
1日前
6

獣はコーラを欲す

初夏、とはもう言えないのかもしれない。真夏といっても差し支えないほど暑い日々が続いている。 服は季節によって左右される。長袖の出番は終わりを告げた。これから9月…

丸膝玲吾
3週間前
26

魚は空に沈む

水面にペットボトルが浮いている。 水面に一匹の魚が浮いている。 この二つの文章に違和感を感じる人はいないと思う。私も長らく感じたことがなかった。水面の波に揺れて…

丸膝玲吾
1か月前
15

[短編] 素敵な海岸

渚に立った。白砂青松の圧倒的な美しさに、私は息を呑んだ。ここは街から外れた、大きな岩に囲まれた砂浜。日も傾いてあたりが段々と夜に飲まれていく。藍色の空と波立つ海…

丸膝玲吾
2か月前
8

[短編小説] カフェにて

カフェで男女が話している。 「モテそうなのに、彼女いなかったんだ」 「全然、気配のけの字すらなかった」 「なんで?」 「なんで?って、顔じゃない」 「えーそんなこと…

丸膝玲吾
2か月前
8

[短編小説] 藤倉教授

「言葉の応用」初回の授業、藤倉教授が講義室に入ってくる。中肉中背、眼鏡をかけていて髪は短い。大半の人がそうであるように、彼がいるだけで場が華やかになる、というこ…

丸膝玲吾
2か月前
4

[短編小説] 不死身人間

私が不死身であるという噂がたった。その噂の発生元は私ではない。いつの間にか青い空を灰色の雲が覆い尽くしたかのように、気がつくと村の人々が密かに囁き合って、不死身…

丸膝玲吾
3か月前
6

[短編小説] ひどいじゃないか!

 階段を上がる。心臓がドクンドクンと波打つ。この鼓動の原因は最近の運動不足と、もう一つ、スライムのようにべっとりと体にまとわりつく緊張感から。教室には知り合いは…

丸膝玲吾
3か月前
6

[短編] 歯

若干粘り気のある布団を裂いた。出てきたのは鍵。小さな金色の鍵。それを鼻に突っ込み、右に回した。かちりと音がして、口が開く。歯が全て金に変わった。

丸膝玲吾
3か月前
4

[短編] じゃんけん

じゃんけんぽん。君の勝ち。

丸膝玲吾
4か月前
2

[短編] 口口口

どうも落ち着いて喋れない。普段人と会話することが少ないから、話したいことが募ってしまってマシンガンのように一方的に捲し立てる。そのとき、自分のこと、身の回りのこ…

丸膝玲吾
4か月前
5

[短編] お金

頭をひねればお金がもらえるらしい。生憎我が家は正常である。異常を排除するための機構である。私は震えている。将来に不安に震えている。私は二十代の後半に差し掛かろう…

丸膝玲吾
4か月前
1

[短編] 夜迎

日の沈みゆく空の青色をなんと形容しようか。明らかに昼間のそれとは違う。色が濃縮され濃さを増し、体の芯に届き、空と地面の距離は口付けをするように近くなる。街はその…

丸膝玲吾
4か月前
2
かつて僕らは 第一話

かつて僕らは 第一話

 なんで音楽やってんだっけ。

 たまに頭がひどく冴え渡り何も感じ取れなくなって、一つの疑問だけが浮かび上がることがある。何もない真っ白な無音の空間に放り込まれたような、そんな感覚がする。

 手はベースの弦を探っていて、ステージ上では仲間たちが全身で楽器をかき鳴らしている。ステージを取り囲む群衆は腕を振りながら必死に耳をこちらに傾けている。

 全員が音に熱中するこの空間が、飯島隼人は心地よかっ

もっとみる

かつて僕らは 構想

[大枠]高校時代に解散したバンドのその後。夢が叶った者、別の夢を叶えた者、夢を追っている者、夢を諦める者、彼らの人生を描きたい。

[登場人物]「長門奏(ながとかなで)」

keystarsのボーカル、ギター担当。天パ、ふんわり(かわいい、無邪気系)。二重で全体的に子供っぽい。
・身長:174cm
・家族構成:父(IT系のサラリーマン、お金を持っている)、母(専業主婦)、弟(11個下)
・家:駅か

もっとみる
[小説] 嘘つき小倉くん

[小説] 嘘つき小倉くん

 「下らないね、そんなの」
 小倉くんはサイダーの缶を開けて一気に喉に流し込んだ。小倉くんはいつも「炭酸が好きなんて子供じゃあるまいし」と馬鹿にしていたのだけど、今日はとても美味しそうに飲んでいる。
 「大学生とは学生であるけどその前に成人した大人なんだ。自分たちで責任を持つ彼らが部活やサークルに勤しんで彼らよりはるかに教養のある教授を馬鹿にして数年後に社会にでることを考えずに享楽に耽るのはとても

もっとみる

カクヨムに毎週投稿している短編をnoteに投稿しようか迷っている。同じ小説を別のサイトに二度も投稿するのは無駄な気がして嫌なのだけど、そしたほうがいい気もする。考えよう。

獣はコーラを欲す

獣はコーラを欲す

初夏、とはもう言えないのかもしれない。真夏といっても差し支えないほど暑い日々が続いている。

服は季節によって左右される。長袖の出番は終わりを告げた。これから9月の下旬に入るまで、もしかすると10月に入るまで、長袖が箪笥から引き出されることはないだろう。冬、春を共に過ごした彼らに感謝を込めて手を合わせよう。ありがとう。

夏。季節の中で最も好きなのが夏である人は多い。夏の醸し出す雰囲気、レジャー、

もっとみる
魚は空に沈む

魚は空に沈む

水面にペットボトルが浮いている。

水面に一匹の魚が浮いている。

この二つの文章に違和感を感じる人はいないと思う。私も長らく感じたことがなかった。水面の波に揺れて漂うペットボトル、魚は共に”浮いている”と表現する。これは誰もが同意する表現の仕方だと思う。

”浮いている”という表現には”(本来沈むものだが重力に逆らって)浮いている”という文言が隠れている。”水面にある”と言われれば、物が水面に存

もっとみる

[短編] 素敵な海岸

渚に立った。白砂青松の圧倒的な美しさに、私は息を呑んだ。ここは街から外れた、大きな岩に囲まれた砂浜。日も傾いてあたりが段々と夜に飲まれていく。藍色の空と波立つ海が地平線で溶けて混じり合っている。海岸線に沿って歩く。右手には大きな岩が突出していて、岬になっている。波の花が絶え間なく咲いては散って、とても静かだった。岩場に登って先端に腰掛ける。遮るものがないから砂浜にいた時と、景色は大して変わらなかっ

もっとみる

[短編小説] カフェにて

カフェで男女が話している。
「モテそうなのに、彼女いなかったんだ」
「全然、気配のけの字すらなかった」
「なんで?」
「なんで?って、顔じゃない」
「えーそんなこと…うん」
「口籠るのやめてよ」
「だって、割となんでもできるでしょ?頭もいいし、運動もできるし、お金もあるし、少しだけ面白いし。あとは顔だけか」
「それならもう十分じゃないの」
「やっぱ顔って大事だしね」
「フォローしてくれよ」
「ごめ

もっとみる

[短編小説] 藤倉教授

「言葉の応用」初回の授業、藤倉教授が講義室に入ってくる。中肉中背、眼鏡をかけていて髪は短い。大半の人がそうであるように、彼がいるだけで場が華やかになる、ということはなく、学生たちは談笑を続けていた。チャイムがなり、藤倉教授が教壇に立って口を開く。
「君たちは学生である前に大人です。大人とは自分自身で責任を負う人たち、彼らのことを指します。あなたたちに少年法は適用されないし、契約も保護者の同意なくす

もっとみる

[短編小説] 不死身人間

私が不死身であるという噂がたった。その噂の発生元は私ではない。いつの間にか青い空を灰色の雲が覆い尽くしたかのように、気がつくと村の人々が密かに囁き合って、不死身の人間を環から外していた。私がそれに気づいたきっかけも、そう決定的なものではなく、気づいたらそうだった、だけだ。

彼らの決して直に触れることなく遠巻きに覗く態度は、濡れた下着を履いているような気持ち悪さを感じ、私は村から出ようか、と考えた

もっとみる

[短編小説] ひどいじゃないか!

 階段を上がる。心臓がドクンドクンと波打つ。この鼓動の原因は最近の運動不足と、もう一つ、スライムのようにべっとりと体にまとわりつく緊張感から。教室には知り合いは誰もいない。友達もいない。別に、行きたいとも思えない、が、私は大学を卒業しなければならない。レールから外れる恐怖が階段をまた一段上がらせる。
 ドアの前に立つ。スライド式のドア。金属の取っ手を握って左に引く。壁の隙間に扉が吸い込まれて、教室

もっとみる

[短編] 歯

若干粘り気のある布団を裂いた。出てきたのは鍵。小さな金色の鍵。それを鼻に突っ込み、右に回した。かちりと音がして、口が開く。歯が全て金に変わった。

[短編] じゃんけん

じゃんけんぽん。君の勝ち。

[短編] 口口口

どうも落ち着いて喋れない。普段人と会話することが少ないから、話したいことが募ってしまってマシンガンのように一方的に捲し立てる。そのとき、自分のこと、身の回りのことを話しすぎてしまうのがいけない。例えば、今日会った友人に死んだ父親の兄のことを話した。私が生まれる前のことだったから記憶も話すこともそうあるわけではなく、ただ死んだことを伝えただけだ。つまり、私は父の兄を使って自分を主人公に仕立てた。私の

もっとみる

[短編] お金

頭をひねればお金がもらえるらしい。生憎我が家は正常である。異常を排除するための機構である。私は震えている。将来に不安に震えている。私は二十代の後半に差し掛かろうとしている。私は震えている。そろそろ三十代になってしまう。全てを若さで乗り越えるには言い訳することができない台へと足を踏み入れる。私は不安である。それは将来に対してのぼんやりとした不安である。

[短編] 夜迎

日の沈みゆく空の青色をなんと形容しようか。明らかに昼間のそれとは違う。色が濃縮され濃さを増し、体の芯に届き、空と地面の距離は口付けをするように近くなる。街はその輪郭だけを残し影に身を落とす。街灯が景色に点をうつも、遠くから見ると雲の上から散らしたように秩序がない、が、それでいい。そうして街は夜を迎える