[短編小説] カフェにて

カフェで男女が話している。
「モテそうなのに、彼女いなかったんだ」
「全然、気配のけの字すらなかった」
「なんで?」
「なんで?って、顔じゃない」
「えーそんなこと…うん」
「口籠るのやめてよ」
「だって、割となんでもできるでしょ?頭もいいし、運動もできるし、お金もあるし、少しだけ面白いし。あとは顔だけか」
「それならもう十分じゃないの」
「やっぱ顔って大事だしね」
「フォローしてくれよ」
「ごめん」
女は項垂れた。男は被っている恐竜のマスクを激しく揺さぶって、首を上下に振っていた。私は顔だろうと思った。

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