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材料学

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木材・金属・プラスチックなど様々な材料について紹介します。
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中世ヨーロッパ 銀のカトラリー

中世ヨーロッパ 銀のカトラリー

現代社会において、銀は優れた導電率の高さから、電子・電気部品の分野や、殺菌・抗菌特性を利用した用途など身の回りにたくさん使われています。

また銀の性質として、自動車の排ガスや温泉地の硫化水素などと反応しやすく、表面に硫化銀を生成して黒ずんでしまいます。

中世ヨーロッパのカトラリーに銀食器が用いられていたのは、料理に硫黄化合物などの毒混入をいち早く察知することができるためと言われています。

金属の“硬さ”とは!?

金属の“硬さ”とは!?

だれもが身近に使っている金属の重要な品質項目として“硬さ”が挙げられます。しかし、“硬さ”とはそもそも何か、数百年前から大勢の研究者や技術者が、試験方法や試験機を工夫し、硬さを定義して、膨大な“自分流の試験”を行なってきましたが、統一の定義はいまだ存在していないようです。
みなさんなら、金属の硬さをどのように測りますか?金属の硬さの試験方法のうち、客観的に数値化しやすく、扱いやすいものが現在も取り

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生きる化石 イチョウ

生きる化石 イチョウ

『イチョウは広葉樹?針葉樹?』中学校の理科で学ぶ問題だ。イチョウの葉の形から、イチョウは広葉樹だと思われがちだが、実際はイチョウ属→イチョウ科→ イチョウ綱と大分類に至っても一種だけしか残っていない生きた化石植物といわれ、裸子植物で針葉樹の仲間です。
約1億5000年前の中生代ジュラ紀(巨大な恐竜が活動していた時代)から現在まで生き残っています。

材料としては柔らかめ。木肌が細やかで仕上がりがき

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ポリウレタンを簡単リサイクル

ポリウレタンを簡単リサイクル

ポリウレタンは石油原料の材料で、ゴムのように伸びる性質を持っています。天然ゴムと違って染色も可能で、温度や湿度に強いため、車のシートや競技場の床、マットレス、枕、ラケット、建築用の断熱材といった非常に広い用途があります。リサイクルは困難で日本では焼却処分されています。

欧州ではリサイクルへの取り組みが始まっていますが、用いる薬剤が有毒で扱いにくい問題があります。

長崎大学の研究チームは、粉末状

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殺菌・防虫効果のあるクスノキ

殺菌・防虫効果のあるクスノキ

近くの公園の入り口には見事なクスノキがあります。樹高40mほどある巨木です。クスノキのもつ独特の香りには、抗菌・防虫作用があり樟脳(しょうのう)として天然の防虫剤として昔から使われていました。また、腐朽(ふきゅう)に対する抵抗性が高く、仏像彫刻の材料として使われてきました。

クスノキの面白い性質として、強風が吹き荒れた後クスノキの下には小枝がたくさん散乱しています。葉っぱのみが落ちるのが一般的な

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ガラスはなぜ透明?

ガラスはなぜ透明?

ガラスは不思議な材料だ。なぜ透明で、光はいったいどのようにして固体の中を通っていくのか?
ガラスはケイ素原子と酸素原子、あと数種類の原子でできている。原子の中心には陽子と中性子を含む原子核があり、その周りを電子が回っている。

原子の大きさが例えばスタジアムほどの大きさだとすると、原子核の大きさはその中央に置かれた豆粒ほど、電子にいたっては周囲のスタンドに置かれた砂粒ほどになる。このように原子内部

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マイクロプラスチックの健康リスク

マイクロプラスチックの健康リスク

1856年にビリヤードの球に使われる象牙が社会問題になり、代替材料として発明されたセルロイドをきっかけに、急速に広まったプラスチック素材。
現代では世界中でスーパーのレジ袋は1秒間に約18万枚利用されている。

しかし、軽くて強い性質から自然分解されずにマイクロプラスチックとなり社会問題になっている。

ある研究によると、微小なプラスチックが含まれていた患者が心臓発作や脳卒中を起こすリスクが、プラ

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スプーンはなぜ味がしない

スプーンはなぜ味がしない

金属のスプーンで食事をして、金属の味がしたことはあるだろうか?
スプーンはじめ、台所の流し台、包丁、食器などステンレス製品は身の回りにたくさんある。
“ステンレス”とは、ステンレス鋼の略で、錆(stain)ない鋼(steel)の意味である。言葉通り、ステンレスは水に濡れても錆ない。鋼はすぐ錆びるのにどうしてステンレスは錆ないのだろうか。
その秘密は、その成分にクロムが含まれているところにある。クロ

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日焼け止めから修正液まで大活躍の材料

日焼け止めから修正液まで大活躍の材料

日常生活の中で「白」はすべての色の基礎となっている。その顔料として用いられるのが「酸化チタン」だ。日焼け止め、修正液、化粧品、絵の具など様々なところに使われている。
また、酸化チタンには不思議な性質があり、光に当たると分解作用や親水作用の触媒として働く。触媒とは、自らは変化せずに他の化学変化を促進する性質を持つ物質のこと。光の作用で触媒作用が働くものを光触媒と呼び、酸化チタンはその代表だ。「掃除不

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カニやエビの殻から電気部品を作る

カニやエビの殻から電気部品を作る

東北大学などの研究チームはカニやエビの殻の成分から作るキトサンが、半導体や電池の材料になることをみいだした。

紅ズワイガニの殻からキトサンを得て、1ナノメートルほどの細い繊維にした上でシートを作製した。電気を流す材料と密着させて性能を調べたところ半導体の性質を示し、さらに電気を蓄えることも確認した。

日本に豊富にある海産物から得られる原材料とあって、今後注目されそうだ。

『参考資料』
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“鉛筆”と“色鉛筆”の材料

“鉛筆”と“色鉛筆”の材料

子供とお絵描きをしていて「鉛筆と色鉛筆同じ黒色があるけど、色鉛筆の黒色は消しゴムで消せないのはなぜ?」とふと思った。

普通の黒鉛筆の芯は、粘土と黒鉛を練り合わせ、焼き固めたもの。
色鉛筆の芯は、ロウや顔料など、油性的なものがタルクなどと練り固められたもの。(タルクとは、書くときに滑りをよくする材料で、ベビーパウダーにも利用されている。)
色鉛筆は油性材料が含まれているため、紙の繊維に入り込み消

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牛乳といえば紙パックなのはなぜ?

牛乳といえば紙パックなのはなぜ?

日本ではペットボトルの牛乳は見かけません。ペットボトルは、キャップを開封して口をつけて少し飲んだ後、再度キャップを装着できる機能があり、持ち歩きに便利です。しかし、口の中には多くの微生物が存在しているため、ペットボトルの口から飲んだ場合、人間の微生物が牛乳に入ることが考えられます。この状態で常温に放置されると、微生物が牛乳の中で増殖します。牛乳は栄養価が高いため、微生物がとても増殖しやすい飲み物で

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突如起こった”ブロンズ病”

突如起こった”ブロンズ病”

青銅は、古代から貨幣や像に使われてきました。青銅の表面は、緑青(ろくしょう)と呼ぶ青色のサビ が覆います。この緑青が青銅を数千年間、腐食から守ります。しかし、第二次世界大戦直後、大英博物館の青銅像に、突如としてボロボロに穴が開き始めました。これは、青銅が病気にかかったということで、「ブロンズ(青銅) 病」と呼ばれました。 原因は、戦争中に青銅像を木箱に入れて疎開させる際に、木箱に入れた緩衝材の木屑

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【材料学】銅

【材料学】銅

人類が最初に精錬した金属は、銅だったと思われます。銅鉱石は、色が鮮やかな緑色や青色なので、見つけやすい鉱石です。燃やした木炭に鉱石を入れるだけで、鉱石から酸素や硫黄を奪いとる還元反応に必要な温度が得られ、容易に銅鉱石から銅を得ることができました。
古代の人は、赤銅(しゃくどう)色の銅が火の中から生まれる光景を見て、感動したことでしょう。銅を道具として使うときに問題になるのは、柔らかいことです。石で

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