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本とのつきあい

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本に埋もれて生きています。2900冊くらいは書評という形で記録に残しているので、ちびちびとご覧になれるように配備していきます。でもあまりに鮮度のなくなったものはご勘弁。
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#100分de名著

「こころ」と「ことば」

「こころ」と「ことば」

Eテレの「100分de名著」が、10年を超えて淡々と続いている。質を落とさず、さらに新たな視聴者も獲得しながら、健闘していると思う。
 
伊集院光氏が司会を担当してからも、すでに10年だというから、息が長い。この人がまた、いい味を出している。司会というよりは、生徒のようである。そして、鋭い質問や意見を呈することに、いつも感心している。
 
この11月には「古今和歌集」が取り上げられている。私は改め

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100分de名著・中井久夫スペシャル

100分de名著・中井久夫スペシャル

100分de名著もずいぶんと多くの本を紹介してきた。功績は大きいと思う。2022年12月、取り上げられたのは「こころの医師」中井久夫先生である。一冊の本ではなく、4週にわたり5冊(最後の週は関連する2冊を扱う)の著書を読み解いてゆく。
 
2022年8月、中井久夫先生が亡くなったとの知らせは、多くの人にショックを与えたと思われる。年齢を重ねていたとはいえ、どれほど多くの人の苦しみを解くのに貢献して

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群衆の怖さ

群衆の怖さ

ソウルの繁華街「梨泰院(イテウォン)」で多数の死者や負傷者を出した事件が、痛々しく報道されている。2002年10月末のことだ。韓国でも、若い人たちを中心として、ハロウィーンの騒ぎは大変なもののようだ。
 
韓国では、3月頃が一番新規感染者が多く、一日あたり60万人を超える日(16日)もあった。事故の日のころにも日々3万人以上の新規感染者を数えており、人口が日本の半分以下であることを思えば、決して安

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100分de名著 ハイデガー『存在と時間』

100分de名著 ハイデガー『存在と時間』

番組開始当時から興味深く視聴している。Eテレの「100分de名著」。司会者が伊集院光氏にかわり、より庶民的になったが、この人の直感とでもいうのか、その本の世界に対する感覚は非常に優れているものと見ている。具体的に自分の問題に引きつけて理解することは大切な一つの道である。
 
2022年4月からのハイデガーも、楽しみである。いよいよ『存在と時間』が取り上げられた。カントの著作も2つこれまで取り上げら

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『100分de名著 金子みすゞ詩集』

『100分de名著 金子みすゞ詩集』

Eテレで月曜日夜から本放送が流れている番組「100分de名著」は、東日本大震災の直後から続いており、好評である。私もこの番組で、何冊の良い本と出会ったか知れない。早いところ「聖書」そのものが出てこないかと愉しみにしているが、それはともかく、2022年1月は「金子みすゞ詩集」が取り上げられている。
 
子どもたちには、四半世紀前ほどからおなじみである。特に「私と小鳥と鈴と」は心に残るものとなっていた

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『群衆心理』

『群衆心理』

(ギュスターヴ・ル・ボン/100分de名著2021年9月放送テキスト)
 
邦訳だがすでに関心をもって新しい訳のものを読んでいた。それは私の中に大きな位置を占めた本となった。百年以上も前に指摘されたことが、私の常々考えていることに大きく重なってきたからだ。当時の社会慣習や背景と今はもうずいぶん変わっている。もはや古典として、そのままでは使えないかもしれない社会心理の指摘ではあるが、私は今だからこそ

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『老い』(ボーヴォワール・100分de名著2021年7月)

『老い』(ボーヴォワール・100分de名著2021年7月)

関心のない人には気持ちが向かわないテーマかもしれないが、高齢化社会となっては、関心のある人のほうが多いだろうとも言える。しかも講師が上野千鶴子氏。女性問題についてのみならず、社会問題への発言力からしても、最高度のレベルを提供してもらえそうな期待ができる。これを「過激」だなどというと、むしろ、ではあんたは何をしているのか、と問われそうな気もする。
 
ボーヴォワールに戻ろう。そもそもボーヴォワールが

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華氏451度

華氏451度

放送が終了してからご紹介するというのは無粋だしルール違反となるだろうが、100分de名著は2021年6月、「華氏451度」だった。先日も少し触れた。
 
本というものを燃やす社会を描いた物語である。こうした作品は、何かを想定して批判をしたり警告を与えたりしているのが通例である。
 
ブラッドベリは、テレビが浸透し始めた頃に、この小説を書いている。まだテレビが人間にどのような影響を与えるかということ

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