739番 田中

中卒。元受刑者。4年の獄中で読書に目覚めました。当時の読書録に少し加筆してUPしてます…

739番 田中

中卒。元受刑者。4年の獄中で読書に目覚めました。当時の読書録に少し加筆してUPしてます。真面目にやってます。感想文はすべて【ネタバレ】です。独断と偏見に満ちているのを前もって謝罪します。こちらからのフォローは経歴がよくないので遠慮してますが、していただいたフォローはお返しします。

記事一覧

大岡昇平「野火」読書感想文

読書をしているうちに大岡昇平を知る。 あちこちの本の巻末の解説に “ ケンカ大岡 ” の異名が登場してくる。 海音寺潮五郎には「史実を曲げている」と突っかかり論争に…

739番 田中
2週間前
265

739番 田中「自己紹介」

まず、プロフィールのアイコンが初期設定のまま。 フォローやスキの、お礼のポップアップも初期設定のまま。 記事のトップ画像だって、タイトルだって、ワンパターンのま…

739番 田中
1か月前
687

三島由紀夫「不道徳教育講座」読書感想文

33歳の三島由紀夫のエッセー。 すでに有名人となっていて、結婚もしたばかり。 69編があって、どのタイトルも過激に並んでいる。 どれほど不道徳なのか、いくつかを順番に…

739番 田中
2か月前
901

レイモンド・チャンドラー「待っている」読書感想文

ハードボイルドの大作家とは知っている。 現代の作家にもお手本にされていて、あちこちの本の作中で紹介もされている。 1回は読もうとは思っていたけど、今までに読んだハ…

739番 田中
2か月前
722

瀬戸内晴美「女の海」読書感想文

瀬戸内晴美を読まなければ。 のちの瀬戸内寂聴の『いのち』を読み終えて思った。 それを著す95歳の瀬戸内寂聴は、体の不調で書くこともできなくなりつつある。 ラストに…

739番 田中
3か月前
806

浅田次郎「天切り松 闇がたり 第1巻」読書感想文

天切りとは夜盗の手法。 深夜に大屋敷のてっぺんに上り、風に吹かれて腕を組んで、ズイッと仁王立など決めるのが劇的。 そして、瓦4枚を外して入り込んで盗る。 闇がたり…

739番 田中
3か月前
678

ちばてつや「あしたのジョー」マンガ感想文

実はよく知らないマンガだった。 よく見ると、55年前のマンガになる。 読んだことがないのに、読んだつもりになっている。 矢吹丈、力石徹、丹下段平という名前も、泪橋と…

739番 田中
4か月前
826

司馬遼太郎「草原の記」読書感想文

空想に付き合っていただきたい。 という書き出し。 次に1行が空く。 モンゴル高原が天に近いということについてである。 と続く。 それからの語句のチョイスがいい。 天…

739番 田中
5か月前
661

又吉直樹「火花」読書感想文

読んでみると、おもしろいの一言しか感想が浮かばない。 それでは読書感想文にならないので、もっと考えてみた。 まずは、文章のテンポがいい。 読んでいて気持ちがいい。…

739番 田中
5か月前
787

東野圭吾「手紙」読書感想文

ほとんどの受刑者が読む本ではないのか? 差入れ本の中では、この『手紙』がダントツに多かった。 1週間に1冊か2冊は、差入れされてるのを見かけていた。 2年目からは図…

739番 田中
5か月前
743

スティーヴン・キング「スタンド・バイ・ミー」読書感想文

初めてのスティーヴン・キング。 映画の原作者とは知っていたし、3本ほど観ていた。 たまたまかもしれないけど、その3本とも、よくわからないまま話が進んで、やがて「軍…

739番 田中
6か月前
694

渡辺淳一「泪壺」読書感想文

渡辺淳一の短編集。 6作が収められている。 短編も好きだし、渡辺淳一も好き。 作品がというよりも、言っていることが好き。 いちばん好きな言葉はなんだろう。 「セック…

739番 田中
6か月前
430

清水一行「苦い札束」読書感想文

清水一行の初期作品。 6つの短編が収められている。 『昭和の経済事件史』と改題してもいい。 50年以上が経った令和になっても、同じような事件がおきているのが考えさせ…

739番 田中
6か月前
316

清水一行「銀行恐喝」読書感想文

『不正融資』と改題してもいい。 とある地方銀行の不正融資が描かれている。 1945年の終戦後から、1998年の平成10年にわたる時代の変化が、やがては不正融資となっていく…

739番 田中
6か月前
338

清水一行「絶対者の自負」読書感想文

清水一行は “ トップ屋 ” から小説家になった。 トップ屋とは、週刊誌が全盛期の昭和のフリーライター。 新聞が書かない特ダネを追い、派手に誌面のトップをとるから、…

739番 田中
7か月前
282

石川拓治「奇跡のリンゴ」読書感想文

無農薬でのリンゴ栽培がいかに難しいのか。 いや、絶対に不可能といわれていたのか。 誰も考えなくて、挑戦もしてない出来事だったのはよくわかった。 なぜ無農薬で栽培…

739番 田中
7か月前
453
大岡昇平「野火」読書感想文

大岡昇平「野火」読書感想文

読書をしているうちに大岡昇平を知る。
あちこちの本の巻末の解説に “ ケンカ大岡 ” の異名が登場してくる。

海音寺潮五郎には「史実を曲げている」と突っかかり論争になったとか。

井上靖も「フィクションが過ぎる」と突っかかられて、気の毒なことに論争になったとか。

松本清張にもだ。
ほっとけばいいのに「推測が浅い」と突っかかり論争になったらしい。

めんどくさそうな人、という印象があった。

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739番 田中「自己紹介」

739番 田中「自己紹介」

まず、プロフィールのアイコンが初期設定のまま。
フォローやスキの、お礼のポップアップも初期設定のまま。

記事のトップ画像だって、タイトルだって、ワンパターンのまま。

だいたいにして『739番 田中』とは不適切ではないのか。
『中卒』を称するのもいかがなものか。

それでも note を続けて1年が経ちました。
自己紹介くらいはと、おくらばせながら投稿した次第です。

経歴については省きます。

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三島由紀夫「不道徳教育講座」読書感想文

三島由紀夫「不道徳教育講座」読書感想文

33歳の三島由紀夫のエッセー。
すでに有名人となっていて、結婚もしたばかり。

69編があって、どのタイトルも過激に並んでいる。
どれほど不道徳なのか、いくつかを順番に挙げてみる。

『教師を内心バカにすべし』
『大いにウソをつくべし』
『人に迷惑をかけて死ぬべし』
『泥棒の効用について』
『処女は道徳的か?』

1編は5ページ。
文体は軽快。
「なのです」「です」「でしょう」という話し言葉で書か

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レイモンド・チャンドラー「待っている」読書感想文

レイモンド・チャンドラー「待っている」読書感想文

ハードボイルドの大作家とは知っている。
現代の作家にもお手本にされていて、あちこちの本の作中で紹介もされている。

1回は読もうとは思っていたけど、今までに読んだハードボイルドって、それほど好きにはなれなかったので躊躇させていた。

しかしながら。
期待してない読書のほうがおもしろい場合が多々ある。
試しに読んでみた。

この本には、5編が収められている。
4つの中編と、1つの短編。
終わりにある

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瀬戸内晴美「女の海」読書感想文

瀬戸内晴美「女の海」読書感想文

瀬戸内晴美を読まなければ。
のちの瀬戸内寂聴の『いのち』を読み終えて思った。

それを著す95歳の瀬戸内寂聴は、体の不調で書くこともできなくなりつつある。

ラストには自嘲する。

今まで400冊以上書いたがベストセラーがない。
もう片目が見えなくなっているし、ペンを持つ指も曲がっている。

それでも断筆することなく未練がましく書いていると、3ページほどとりとめもない。

が、最後の一文だけは力強

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浅田次郎「天切り松 闇がたり 第1巻」読書感想文

浅田次郎「天切り松 闇がたり 第1巻」読書感想文

天切りとは夜盗の手法。
深夜に大屋敷のてっぺんに上り、風に吹かれて腕を組んで、ズイッと仁王立など決めるのが劇的。
そして、瓦4枚を外して入り込んで盗る。

闇がたりとは、盗人の話法。
6尺四方から先には声が届かない。

松とは村田松蔵。
老齢の元夜盗。

9歳で盗人の一家に入った大正6年から大正12年頃までの、見たこと聞いたことが語られる。

「鼠小僧のそのまた昔、富蔵藤十郎が大内山の御金蔵からか

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ちばてつや「あしたのジョー」マンガ感想文

ちばてつや「あしたのジョー」マンガ感想文

実はよく知らないマンガだった。
よく見ると、55年前のマンガになる。
読んだことがないのに、読んだつもりになっている。

矢吹丈、力石徹、丹下段平という名前も、泪橋という交差点が明治通りにあることも、名言だってラストシーンだって知ってはいるのに、あらすじはよく知らない。

改めて読んでみた感想としては、全12巻のうち5巻終盤までの第一部がおもしろい。

矢吹丈と力石徹との対戦となる
力石のストイッ

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司馬遼太郎「草原の記」読書感想文

司馬遼太郎「草原の記」読書感想文

空想に付き合っていただきたい。

という書き出し。
次に1行が空く。

モンゴル高原が天に近いということについてである。
と続く。

それからの語句のチョイスがいい。
天、空、馬、草、という語句が、モンゴル高原の様子を目に浮かばせる。

なんか詩的だ。
今回の司馬遼太郎は。

この本を目にしたときから、絶対におもしろいだろうなと思ったのは当たりだった。

というのも。
司馬遼太郎は、大阪外語学校で

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又吉直樹「火花」読書感想文

又吉直樹「火花」読書感想文

読んでみると、おもしろいの一言しか感想が浮かばない。
それでは読書感想文にならないので、もっと考えてみた。

まずは、文章のテンポがいい。
読んでいて気持ちがいい。

登場人物のセリフが、文章のアクセントになっているように感じるし、これは話すことを仕事としている人の成せる技なのかと思わせる。

148ページという短い物語の中に、20歳から32歳までの12年間の場面が、テンポよく流れるよう書かれて収

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東野圭吾「手紙」読書感想文

東野圭吾「手紙」読書感想文

ほとんどの受刑者が読む本ではないのか?

差入れ本の中では、この『手紙』がダントツに多かった。
1週間に1冊か2冊は、差入れされてるのを見かけていた。

2年目からは図書係も兼ねていたから、この本を目にする度に『また “ 手紙 ” が入っている』とずっと思っていた。

受刑者は、差入れされた本は必ず読む。
好きじゃないから読まない、なんてことはない。

本とは、これほどうれしく感じるものなのか。

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スティーヴン・キング「スタンド・バイ・ミー」読書感想文

スティーヴン・キング「スタンド・バイ・ミー」読書感想文

初めてのスティーヴン・キング。
映画の原作者とは知っていたし、3本ほど観ていた。

たまたまかもしれないけど、その3本とも、よくわからないまま話が進んで、やがて「軍がきた!」となって、やはりよくわからないまま終わるパターンだった。

それでいて、アメリカでは有名なホラー作家だという。
さらに10年はかかって、映画の『スタンド・バイ・ミー』の原作者でもあるとも自然に知った。

つまりは、興味もなかっ

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渡辺淳一「泪壺」読書感想文

渡辺淳一「泪壺」読書感想文

渡辺淳一の短編集。
6作が収められている。

短編も好きだし、渡辺淳一も好き。
作品がというよりも、言っていることが好き。

いちばん好きな言葉はなんだろう。
「セックマルは決してエロではない、むしろ人間がいとおしく見える」あたりか。

2014年に80歳で死去したときに、新聞で紹介されていた。
元医者なのだなと、生への俯瞰を感じさせる。

だから渡辺淳一は、男女の性愛をエロの一言で済ませたりしな

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清水一行「苦い札束」読書感想文

清水一行「苦い札束」読書感想文

清水一行の初期作品。
6つの短編が収められている。

『昭和の経済事件史』と改題してもいい。
50年以上が経った令和になっても、同じような事件がおきているのが考えさせられる。

※ 筆者註 ・・・ 以下、長めの要約となってます。もっと短くしようとあれこれしましたが無理でした。スキームを中心にした要約となってますが、本編ではもっと人間が書き込まれてます。清水一行作品に付き物の “ 女 ” も登場しま

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清水一行「銀行恐喝」読書感想文

清水一行「銀行恐喝」読書感想文

『不正融資』と改題してもいい。
とある地方銀行の不正融資が描かれている。

1945年の終戦後から、1998年の平成10年にわたる時代の変化が、やがては不正融資となっていく。

作中には “ N県の西海市 ” とある。
これは、長崎県の佐世保市だとは10ページも読めばわかる。

巻末の解説では、同じく作中にある “ 西海銀行 ” とは ” 親和銀行 ” だと明かされている。

1998年の『親和銀

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清水一行「絶対者の自負」読書感想文

清水一行「絶対者の自負」読書感想文

清水一行は “ トップ屋 ” から小説家になった。
トップ屋とは、週刊誌が全盛期の昭和のフリーライター。

新聞が書かない特ダネを追い、派手に誌面のトップをとるから、当時は “ トップ屋 ” と呼ばれたとのこと。

それだからか。
事件や、スキャンダルや、不祥事を、暴くようにして書かれる小説が主となる。

人々が何に興味を持つのか、どこを知りたがるのか、並みの作家よりわかっていると感じる。

そん

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石川拓治「奇跡のリンゴ」読書感想文

石川拓治「奇跡のリンゴ」読書感想文

無農薬でのリンゴ栽培がいかに難しいのか。
いや、絶対に不可能といわれていたのか。

誰も考えなくて、挑戦もしてない出来事だったのはよくわかった。

なぜ無農薬で栽培ができるのか、学術的な解説はほぼない。
そもそもが、解明されてない。

はっきりとわかっているのは、通常のリンゴの木の根は数メートルに対して、木村秋則(以下敬称略)のそれは20メートルはあること。

土の中の微生物が多いこと。
虫の生態

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