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思い切って転職した企業がイマイチだったけど次の転職をすぐにしていいの?~自分の得意分野を見つけられずに悩む28歳のキャリア①~

こんにちは。株式会社シンシア・ハートで代表取締役をしている堀内猛志(takenoko1220)です。
前回のnoteでは、「所属する企業に『やる意味、いる意味、える意味』を考える。~居心地と惰性の間で悩む31歳女性が考えるべきキャリア④~」ということについて書きました。

さて、今回のお悩み相談内容のサマリは以下の通りです。

新卒入社1社目を思い切って退職し、新たな気持ちで臨んだ2社目が合わないと感じてしまいました。まだ3ヶ月しか経っていないのですが正直これからフィットしていく感じがしません。すぐにでも転職をしたいと考えているのですが、こんなに早く転職すると印象が悪いと思うのですがいいのでしょうか。

こちらも結構あるあるの話です。もう少し詳細の状況を見ていきたいと思います。


自分の得意分野を見つけられずに悩む健太(28)のキャリア

【ペルソナ】
健太。男性。28歳。

【タレント】※本人は自覚していない
アナリティカル/戦略性・学習欲・分析思考・規律性・信念

【好き(ルーツ)】
計画、数字、論理

【好き(ブーム)】
物流

【キャリア①学生時代】
研究職の両親に育てられ、幼少期からクイズを解くのが好きだった健太。中学生の頃には全国模試でも高い成績を出せるほど理系の思考力が磨かれていた。あまり人前で主張するタイプではなかったが、信念が強く、周りから頭が良いと認識されていたため、健太の言葉には影響力があった。中学ではサッカー部に所属し県大会ベストイレブンに選出されたこともある。高校入学にあたりサッカー推薦の話も来ていたが、Jリーガーになるほどの実力はないと現実的に考えた健太は一般受験をして進学校に進む。高校では志望している大学の推薦枠獲得を狙って1年生の頃から勉強に励み想定通り達成した。
大学入学当時から就職を意識していた健太は、就活に有利になることを見越して部活動を始めることを決めた。高校時代に部活を行っていなかったためブランクがあること、また、大学から始めても差が出ずにスタートできると考えてラクロス部を選択した。持ち前の努力量と戦略思考によって、3年次にはキャプテンを任されることになった。

【キャリア②就職活動】
就職活動はマニュアル通りにきちんと取り組んだ。自己分析、業界分析、OB訪問などを積極的に行った。インターンにもいくつか参加してみた。視野を広げるために様々な活動を行ったが、元から志望していた商社を選ぶことにした。特にラクロス部の先輩がいるA社に強烈に惹かれた。A社に入社するために就職活動のクチコミを読み、エントリーシートも入念に準備した。商社に入社できるコミュニティがあることを知り、有料だったが入社できるなら安いものだと参加した。その甲斐あってか見事にA社からの内定を勝ち取ることができた。

【キャリア③新人時代】
新人研修を終え、繊維担当に配属された健太はすでに違和感を覚えていた。入社前の説明会では、働き方改革やダイバーシティを強く訴えていたA社だったが、外に訴えるメッセージとは裏腹に現場の実態はそうではなかった。
仕事への意欲はあるが、労働組合長を務める父親の影響で長時間労働に対して強い否定を持っている健太は定時退社を訴え続けてきた。先輩曰く昔と比べてかなり改善はされているということだが、月間50~60時間の残業が常態化していた。新人は月間30時間以内が原則だったが、ほとんどの同期がそれをオーバーしていた。
父親と同世代の先輩に囲まれ自分が言ったことは全否定される日々。人事からの号令で1on1が始まったが「俺の時間をとってやってるんだから何か面白いこと喋れよ」と言われ愕然とした。隣を見ると自分より優秀だと思っていた同期がコピーをとっている。それを見ながら、これも修行なんだ、3年は辞めずに続けようと自分に言い聞かせた。

【キャリア④惰性時代】
3年で続けるかどうかを決めようと考えていた健太だったが、気づけば5年が経とうとしていた。これまでの間にも退職しようと強く思う出来事はあったが、両親や友達に相談すると「A社を辞めるのはもったいない」と言われ続け、転職エージェントに登録することはあったが面接までには至らないでいた。
健太自身がこの社風に慣れ始めていたこともあった。新人時代はやたら多い社内イベントに辟易していたが、自分が先輩になってからは、自分よりも文句ばかり言う後輩に対して苛立ちを覚えるなど、A社の文化に染まっていっている自分に気づいてもいた。
周りの同期も辞めたい辞めたいという割にはあまり辞めた人は聞かない。150人程度いた同期で辞めたのは5、6人らしい。みんな自分と同じ感じなのかな、そう思いながら過ごしていた。
上司から指示される雑用をこなすことに意味を感じていなかった健太だが、心を殺すと生産性は上がっていくことに2年目になって気づいていた。そして、合理的に仕事をする健太の業務スピードは速く、先輩や上司からも一目を置かれ始めていた。健太は考える。仕事は楽しいかと問われるとそうでもないが、やることさえやっていると自由にできるのが商社の面白さなのかもしれない。これで早めに海外駐在に行ければ不満はなくなるのだけど。

【キャリア⑤転機】
6年目を迎えた健太に海外駐在の内示が出た。20代で海外駐在に行けるのは期待をされてる証拠なんじゃないか?興奮する健太だったが、駐在先を聞いて愕然とする。ニューヨーク支店、、、。
ニューヨークなんて最高じゃないかと思う人もいるだろう。しかし、駐在ガチャにはアタリとハズレが存在する。シンプルに説明すると、海外の事業会社の出向によって活かせる経験を積めるのがアタリで、先進国の都会支店や研修支店で日本と同じ業務をパシリのようにやらされるのがハズレだ。商社全体で一概には括れないが、健太の会社では先輩からずっと聞かされていたことだ。
「そんなことはない!」健太の顔色を見て健太の思考を察した上司から業務やキャリアイメージを説明されたが健太の頭には入ってこなかった。
ちょうどその夜は元ラクロス部メンバーとの飲み会だった。普段、自身のことを多く語らない健太がキャリアの悩みを口にしたことに友人たちは少し驚いた。「A社に入社しただけで勝ち組じゃないか」「海外駐在ってすごいじゃん」ほとんどの友人たちは励ましてくれる中で、外コンにいる貴教が切り込んできた。「健太は何がやりたくて商社に入ったの?」最近自分の中で自問自答している言葉だった。
良い大学に入り、良い会社に入る、合理的に考えてそれが一番だと信じてここまで来た。健太の親もそれを期待していたし、希望する道を進んでいる健太を羨ましがる友人たちから自尊心を得ることができていた。しかし、30歳手前にしてこれからの人生を考えると、良い会社に入ることはプロセスであり、その先にどうなりたいのかを考えないといけない、そう思うようになってきた。
飲み会後、2次会に行くメンバーたちの中で、貴教だけが会社に戻ると言う。これはいつもの光景だ。これまでならそんな貴教を見て、同じ年収なら生産性が高い商社の方がいい、そんな風に思っていた健太だったが今日は違った。自分のやりたいことだと長く働くのも楽しいのかな。。

【キャリア⑥決意】
その次の日、後輩からのOB訪問に対応していた健太は同じ質問をされる。「健太さんはどうして商社に入ったんですか?」「健太さん自身はこれからどうしていきたいと思っているんですか?」普段ならサラサラと上辺で答えてきた質問に詰まってしまった。真剣な後輩に誇りを持って答えられない先輩でいいのだろうか。
モヤモヤした想いを数日間抱えていた朝、健太をA社に誘ってくれた先輩からメールが届いた。「健太、誕生日おめでとう!」そうか、俺は28歳になったのか。先輩は2年前にA社から独立し友人たちと起業していた。先輩なら答えをくれるかもしれない。健太は先輩に相談を依頼し、後日二人で飲みながら話すことになった。
「なんだ?駐在ガチャが外れたのか?」見てきたように健太の状況や心境を言い当てる先輩に、健太は自分の中にあるモヤモヤをぶちまけた。しばらくふんふんと聞いていた先輩は言う。「めっちゃわかるよ。俺もそうだったからな。」健太が信頼する先輩に共感してもらえて健太は少し気が楽になった。「だから先輩は起業されたんですか?」「そうそう、俺の場合~」先輩が楽しそうに自分の会社について語っている姿を羨望の眼差しで見ていた健太だが、自分で起業することはさすがに無理だという想いもあった。会話の流れのまま先輩が言う。「じゃあ、うちに来るか?www」「行きます!」「えー!!」軽く声をかけたつもりの先輩はびっくりしていたが、それ以上に即決している自分に健太自身が一番驚いていた。

【キャリア⑦転職後】
「商社の20代は修行なんだ」「この海外駐在で経験を積むは大事なんだ」「スタートアップに行ってどうするんだ」「それは本当にお前のやりたいことか?」上司に散々止められたが健太は転職を選んだ。
先輩の会社は物流DXの会社だった。先輩が商社時代に培ったロジスティックの経験を活かし、24年問題に悩むマーケットに一石を投じるプロダクトを開発していた。飲み屋で先輩からビジョンを聞いて以来、健太は自分でも物流について調べまくり、このマーケットの可能性を強く感じていた。
そして今、健太は商社と真逆の環境で水を得た魚のように働いていた――。
なんて健太が描いていたキレイなストーリーはそこになかった。平日は深夜まで働き土日もMTGが目白押し、シードラウンドでの資金調達はできていると聞いていたが当然給料は低い、制度やマニュアルもなければ基本は放置で何も教えてもらえない。スタートアップってこんなにも大変なのか。入社後4ヶ月目にして健太の心はすでに折れかけていた。
このままの働き方を続けていける気がしない。でもたった3ヵ月で諦めるなんてかっこ悪すぎるし先輩にも顔向けできなくなる。実はすでにこっそりエージェントに登録してみたところ、こんな自分にも紹介できる会社はあると言ってくれているが、こんな自分を採用するという会社もヤバイのではないか。

深夜1時にMTGを終えた健太は改めて考えていた。
「俺が本当にやりたいことは何だろう」

健太のキャリアのポイント

いかがでしたでしょうか?商社を例にとったので、それ以外の業界にいる人には少し想像しづらかったかもしれませんね。ポイントを以下にまとめるので、抽象度を上げて自分に当てはめてみてください。

■自分自身に向き合わず、周囲の評価をもとにキャリアを決めてしまう
■思考や決断を先延ばしすることで、修行という名のムダな時間を過ごしてしまう、且つ、慣れによって現状維持バイアスが働いてしまう
■言われたとおりのことを行っているだけでは、キャリアを振り返ったときに自分は何者にもなっていないことをどこかで気づいてしまう
■環境を変えると全て改善すると思ってしまう
■労働市場を知らないせいで甘美な言葉に釣られてしまう
■1社目が長いと2社目のギャップに苦しんでしまう
■「やりたいことは何か」という沼にハマってしまう

次回以降は、上記の「あるある」の問題に対して解説していきたいと思います。


健太のストーリーを読んで他人ごとではないと思った人は下記よりご連絡ください。

それでは今日も素敵な一日を!

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