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読書感想文

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私、タケノコが書いた読書感想文など本についてのあれこれをまとめました。
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2024年3月の記事一覧

読書感想文: 現代俳句の世界16 富澤赤黄男 高屋窓秋 渡邊白泉 集

読書感想文: 現代俳句の世界16 富澤赤黄男 高屋窓秋 渡邊白泉 集

現代俳句の世界16 富澤赤黄男 高屋窓秋 渡邊白泉 集(著: 富澤赤黄男、高屋窓秋、渡邊白泉、朝日文庫、1985)

坂本龍一さんが選書した本、『坂本図書』に富澤赤黄男という俳人の句集が紹介されていた。それからこの富澤赤黄男が気になっていた。
今回その俳句を読んでみて特に印象に残ったいくつかの句を紹介してみる。

俳句はどれも全体的に繊細かつぶっきらぼうな印象である。その無骨さ、可笑しさ、悲しさ、

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おとなになるってどんなこと?(著:吉本ばなな) 読書感想文

おとなになるってどんなこと?(著:吉本ばなな) 読書感想文

おとなになるってどんなこと?(著:吉本ばなな、ちくまプリマー新書、2015)

この抜粋した箇所からは映画『シェルタリング・スカイ』の中でポール・ボウルズが言う台詞を連想しました。

「人は自分の死を予知できず、人生を尽きぬ泉だと思う、だがすべて物事は数回起こるか起こらないか。自分の人生を左右したと思えるほど、大切な子供の頃の思い出も、あと何回心に浮かべるか4〜5回思い出すのがせいぜいだ。あと何回

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「違うこと」をしないこと(著:吉本ばなな) 読書感想文

「違うこと」をしないこと(著:吉本ばなな) 読書感想文

「違うこと」をしないこと(著:吉本ばなな、KADOKAWA、2018)

違和感を信用する。常識を疑う。直感を大切にする。自分に正直に生きる。流れに対して自然でいる。

人の顔色を伺う癖がばななさんは強いんだなと、それと危機感を察知する処世術がすごい。
そういう人って敏感すぎて人生に疲れちゃう気がするんだけどばななさんの場合は人を観察するのが好きで嫉妬したり感情的になることがなかった。
あとはじめ

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恋慕渇仰(著:緒形拳) 読書感想文

恋慕渇仰(著:緒形拳) 読書感想文

恋慕渇仰(著:緒形拳、東京書籍、1993)

俳優・緒形拳さんの書いた本である。
緒形さんは書をしたためるのが好きだった。この本もまず役者であることと書のことから始まる。

緒形さんは役者の姿を紅葉に見るという。

緒形さんはその紅葉の木を書に表現しようとする。
「體(からだ)」という字を書いて書き抜いて。冬の骨だけの紅葉のようになっていく。役者の仕事もこうありたいという。

エッセイにはこれまで

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さよならのあとで(詩:ヘンリー・スコット・ホランド、絵:高橋和枝) 読書感想文

さよならのあとで(詩:ヘンリー・スコット・ホランド、絵:高橋和枝) 読書感想文

さよならのあとで(詩:ヘンリー・スコット・ホランド、絵:高橋和枝、夏葉社、2012)

この本は英国教会の神学者、哲学者のヘンリー・スコット・ホランドが書いた42行の詩を翻訳したものです。
実は自分、先日3月11日に祖母を亡くしまして、そこである方からこの本をお薦めいただき読んでみました。
まず冒頭を抜粋してみると、

冒頭のこの箇所からして元気づけられます。
ここで思ったのは、死とはどうしても悲

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黒澤明「生きる」言葉(著:黒澤和子) 読書感想文

黒澤明「生きる」言葉(著:黒澤和子) 読書感想文

黒澤明「生きる」言葉(著:黒澤和子、PHP研究所)

ここ数年読んできたあらゆる本の中でも特に深い感銘を受けました……!
だいぶ前に読んだことがあり、今回再読してみたら自分がこの本の内容を結構覚えていて無意識的にも意識的にも実践していたことに驚きました。
すばらしい本すぎてまさに座右の書にしたい本です。
映画のこと、芸術のこと、平和のこと、日々の生活のこと、なにより幸せになること、人生で大事なこと

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サラダ記念日(俵万智、1987年刊行) 読書感想文

サラダ記念日(俵万智、1987年刊行) 読書感想文

サラダ記念日(著:俵万智、河出文庫)

「今」を一所懸命に生きた痕がこの本には書かれている。

つくる食べ物はよくあるそこらの物。

恋愛に悩み、時には傷つきオロオロと。時には一念発起しクールに。その脆さ、危うさ、そして力強さ。

そしてよく歌を聴く。

短歌というたった三十一文字の世界に等身大の女子の生きる様が刻まれている。

思うに短歌は、自分の感じたありのままのことを書けばいいだけで、小難し

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あなたは、誰かの大切な人(原田マハ、2014) 読書感想文

あなたは、誰かの大切な人(原田マハ、2014) 読書感想文

あなたは、誰かの大切な人(著:原田マハ、2014、講談社)

短編集である。
どの話も印象的だが個人的には「月夜のアボカド」がいちばん好きだ。
恋愛はいくつになってもできる。歳をとって実る恋だってある。
死に取り憑かれている暇はないのだ。
人生に速いも遅いも実はないのだ。
(ちなみに自分はアボカドはこの世でいちばん嫌いな食べ物である。)

死や死に至る病に取り憑かれている主人公たちの話がだんだん死

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