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アートのお部屋

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#猫

アートに満ちた小さな島

アートに満ちた小さな島

その日、ウサギは図書館の閲覧席でじっと画集を見つめていた。何度も手に取った画集なのに、見るたびに新たな発見があり、彼女はその度に心が躍るのを感じていた。

それでも本当のことを言えば、室内で静かに絵を見ているのは少し苦手だった。広い青空の下で元気に走り回るのが、彼女にとっては何よりも好きなことだったから。

「アートを観られる場所は室内だけじゃないんだよ」と、隣に座るカメが言った時、彼女の目がキラ

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ようこそ猫会議へ

ようこそ猫会議へ

カメは待ち合わせ場所の福徳神社の鳥居を見上げていた。「ここが待ち合わせ場所ということは、まずおみくじを引くことになるんだろうな」と、カメは心の中で微笑んだ。

やがてカメの目に、遠くから駆けてくるウサギの姿が映った。「ごめん、待った?」と彼女は息を弾ませて言った。
「ちょっと行きたいところができたの。これから猫会議に参加するわ」

おみくじには目もくれず、彼女はカメの手を取って軽やかに歩き始めた。

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ギャラリーの二人展

ギャラリーの二人展

急用ができたカメと一旦別れたウサギは、待ち合わせまでの時間を持て余して東急プラザ銀座を一人で歩いていた。あてもなく歩き続けていると、ふとアートギャラリーの前で足を止めた。

ギャラリーには、二人の画家による絵画が飾られていた。それぞれの世界観で丁寧に描かれた作品をひとつひとつ眺めていると、画家のプロフィールが目に留まった。

「uraraさんは、画家になる夢を抱きながらも、一度は大学で法律を学ぶこ

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宙を飛ぶ大きな猫

宙を飛ぶ大きな猫

その日、ウサギとカメはGINZA SIXの広々とした吹き抜けの下で足を止めた。二人の目は、天井から吊り下げられた大きなオブジェに釘付けになっていた。ウサギはカメの袖をそっと引いて、小さな声で囁いた。

「ねえ、見て、あれ…。私の目には岡本太郎の太陽の塔に見えるんだけど?」

カメは目を細め、その大きなオブジェをじっと見つめた。しばらくの間、二人の間に静かな時間が流れた。

やがて、彼は穏やかに口を

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竹久夢二とうさぎ

竹久夢二とうさぎ

弥生美術館から続く廊下を渡り、ウサギとカメは竹久夢二美術館へ足を踏み入れた。夢二といえば美人画が頭に浮かぶが、その印象とはまた別に、そこには夢二が描く動物の世界が広がっていた。

「竹久夢二といえば、猫を抱いている女の人の絵のイメージがあるけれど、こんなにかわいい動物の絵も描いていたんだね」とカメが話し始めた。

「こんなにもいろいろな動物を描いていたなんて、ちっとも知らなかったわ」と、ウサギは微

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