ようこそ猫会議へ
カメは待ち合わせ場所の福徳神社の鳥居を見上げていた。「ここが待ち合わせ場所ということは、まずおみくじを引くことになるんだろうな」と、カメは心の中で微笑んだ。
やがてカメの目に、遠くから駆けてくるウサギの姿が映った。「ごめん、待った?」と彼女は息を弾ませて言った。
「ちょっと行きたいところができたの。これから猫会議に参加するわ」
おみくじには目もくれず、彼女はカメの手を取って軽やかに歩き始めた。カメは温かい手に引かれるまま、神社をあとにした。
「REIJINSHA GALLERY? 猫会議って展覧会のことだったんだね」ウサギが足を止めたとき、カメはようやく事態を理解した。
ギャラリーに入った途端、ウサギの声が一段と高まった。「見て、この猫ちゃん。ティッシュケースにすっぽり入って、気持ち良さそうにまどろんでるわ。どうしてこんなにかわいいの?」と、ウサギは目を輝かせた。
「この猫ちゃんはアイドルの猫なのかしら?私なら、『推したいネコ』って名前をつけたいわね」
「これは猫の顔が三つ重なったトーテムポールなのね。色の順番に何か深い意味があるのかしら?」
「猫ちゃんがカップの中にすっぽりハマってるわ。目がキラリと光って、今にも動き出しそうね」
「この猫ちゃん、本物かと思ったわ。ドアのそばで外をじっと見ているんだもの」
息つく間もなく猫について語り続ける彼女の声が止まると、カメが静かにいった。
「国芳も夢二も、たくさん猫を描いていたよね。猫って、クリエイターにとってインスピレーションを与えてくれる女神みたいな存在なのかもしれないね」
そんな二人の様子を、無関心そうな目をしながら、猫がそっと見つめていた。
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