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誘拐 (1分小説)

5歳の息子が誘拐された。

息子と言っても妻の連れ子だ。オレたちは、不倫・駆け落ち婚で一緒になった夫婦である。

オモチャ屋で、息子に「パパは、サンタさんに、どんなオモチャをお願いしたの?」と聞かれたので「パパは大人だから、もう、プレゼントは要らないんだよ」と言って振りかえったわずか5秒間で、息子は消えてしまった。

彼は、継父であるオレに愛されているか、確かめるふしがあったので、今回もイタズラだろうと思っていたが、どこを探してもいなかった。

正直、オレも、息子が本当にかわいいのか自分でも分かっていなかった。いなくなってから、初めてかけがえのない愛しい存在だと気づいたのだ。

翌日。

身代金1200万円を要求する電話が掛かってきた。

「すぐには用意できません」

「ローンを組め。月々100万円なら払えるだろ」

犯人を刺激しないよう、急いで100万円を振り込むと、翌月、段ボール箱が送られてきた。

中身は、息子の左手だった。まるでマネキンのようだ。

妻は気絶したが、オレは、左手が温かいことを確認。

「生きてるぞ!」

金をかき集め、また100万を振り込んだ。

すると、その翌月には胴体が送られてきた。やはり体温はある。

胴体に左手の肩部分を差し込むと、スッポリはまった。

こうして、両手両足、胴体、頭部、全てを組み立て、完成間近の12ヶ月目、またクリスマスの時期がやってきた。

最後のパーツの、口をはめた時、息子は言葉を発した。

「デアゴスティーニだよ、CMでお馴染みの。やっぱり、大人にもプレゼントは要るでしょ」

オレは、泣きながら息子を抱きしめた。

「イタズラが過ぎるぞ。いったい、今まで誰といたんだ?」

「本当のお父さん。ボクの身代金は、本当のお父さんへの慰謝料になるんだって」



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