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『或る物語(récitレシ)による 示唆(suggestionサゼスション)について』
あらすじ
地球は約2万6千年周期で歳差運動が起きると言われている。地磁気の移動、地軸の変動そして海底がエベレストの頂上になるような地殻変動。その度に人類の文明は原始時代からやり直してきた。その地球の歳差運動による文明リセットに対して 漸く人類は空中都市を建設し 地球が歳差運動をしている間生き残る路Critical path を選択した。空中都市で繰り広げられる男と女の小さな物語が人工知能との共存
短篇小説『平成観音功徳記』連載2回目
錦司が目を覚ましたのは 自宅の寝床だった。未だ部屋は闇だった。
錦司は自室の寝床である事を確認して悪夢から漸く解放された安堵感を得ていた。
視線が胡坐をかいているグレイにいくまでは。
しかしグレイは実在していた。長い脚をX字に曲げて畳に尻を着けて
錦司の方を見ていた。
「どうも お疲れ様! お蔭で厄介な戦争屋を一掃することができた。
これで第三次世界大戦なんてのは人類史に起きなくなるだろう。
短篇小説『平成観音功徳記』連載1回め
薄暗い朝が来た。一番鶏の鬨の声などしなかった。
ただ不図目が開き 目に入ってきた薄暗さに動悸を覚えた倉橋錦司は 幾ら早寝をしても、飲めぬ酒を呑んで夜更かししても 朝が来るまで何もない漆黒の闇と沈黙の睡眠から遠ざかっていた。
つい数週間前までなら朝の目覚まし時計が鳴るまで疲れ切って夢も見ず、
パッと目が開き 布団を片付け、厠に行き用を足してから顔を洗い
口を漱ぎ小さな仏壇へ向かう。
仏壇の水を換え
ひとりごとの4回めは 『竜とそばかすの姫』をめぐる あれやこれや
Huluで観ました。 去年 劇場で観るべき映画でした。
細田守監督が 強い影響を受けたディズニーの
『美女と野獣』への オマージュだと言うことですが
私には ハッキリ
喧嘩を売って 見事 勝ちやがったな! というのが感想でした。
かくは めでたい♪
『時をかける少女』で大胆にも 初代時かけ少女を
主人公の魔女おばさんに設定して
ゴダールの『はなればなれ』と
トリュフォーの『突然炎のごとく』でヌ
中篇小説『リヴァース・ショット』 最終回 週末全篇をごゆっくりお楽しみくださいましね。あなかしこ。なんてね♪
ショーグンを宇宙人といえばそうである。
しかし彼には人間の器官はなく、血や体液は 見せかけであり、
皮膚も現在の人間では 製造不可能な素材と製法で作られた物質である。
彼は脳すら所有していない。脳器官がなくても彼は思考し、感情をコントロールできる。睡眠も食べ物も彼には必要ない。
人間が個体維持するために必要な物は 彼には何一つ要らないのであるから。
しかも彼以上に考え、彼以上に物事を全て記憶できる
中篇小説『リヴァース・ショット』連載12回。眠れる預言者実時に降りた霊かく語りき。その正体も明かすだろう。
人間が 無から髪の毛一筋、創ることが可能
になることは 未来永劫ありえない。
優しさや思いやりは 惰弱なだけであり、
人間社会にもジャングルの掟があると、
人間が言う。
同時に 人間は獣ではない。と同じ人間が同
じ口から恥知らずに主張する。
ジャングルは食物連鎖の循環を示しているだ
けである。
その食物連鎖の循環を恐れ ジャングル、
森から逃げ出したのが 人間である。
食物連鎖のサイクルから逃れ
中篇小説『リヴァース・ショット』連載11回。今更だが 諸世紀 十巻72章。 眠れる預言者となる実時。
とりあえず
実時は 猫の方に戻る。和子もビールを用意する。コンロのガスボンベをセットした。
実時は さらに猫のトイレをバスケットから取り出し、猫に対して英語と
猫語らしきニャーニャーを出鱈目にして諭していた。
「それで ほんとに 理解するの?」和子は不思議そうにその光景を見て謂った。
「ふふふ。半年間記憶喪失で 僕が身を置いていた処で世話してくれた、この猫の飼い主が こうすればいいと教えてくれた
中篇小説『リヴァース・ショット』連載10回。~夜明けの歌、新しい夜明けを迎えるために うたおう。
そして
三十四歳の丸山和子は千九百九十九年の五月七日に 発作のような白い眠りの中で 無意識に彼女の指は あの印を切っていた。
唇には微かながらもあの風のような
ソウレン云々が 蠢いていた。
そして すっかり陽光から見放されたコンテナハウスの中は かなり温度を下げていた。一方で和子の肉体は その温度変化にきちんと対応しようとしていた。ビクリと彼女の身体が痙攣した。その衝動は 彼女の意識をも急激に醒
中篇小説『リヴァース・ショット』連載9回。はなればなれの実時と和子。それぞれの曲がりくねった道。それぞれの孤独。それぞれの絶望寸前。夜明け前が一番冥い。
咽る(むせる)ように薫る新緑の青桐が 揺れている。
実時は 和子の行方が判らなくなって以来、その行方を探るように嘗て和子が巡った霊場を訪ね歩いていた。季咸や芳仙という巫女と違って、降霊術師である大宗師、尊院には霊場修行は 本来それほど重要ではない。
しかし実時は口実をつけては 芳仙だった和子が何処かの霊場に預けられているのではないかという微かな期待を胸に抱いて旅をしていたのである。既に 和子の行