Sanetoki_IseyaHiHo

2022/01/11 という日に 何かをはじめるべき ということで 手始めに 短篇小説…

Sanetoki_IseyaHiHo

2022/01/11 という日に 何かをはじめるべき ということで 手始めに 短篇小説。『20××年の召集令状』は8年前に書いたかな?※『リムスキーコルサコフ伯爵夫人』 別名 【タルタリアのヴィーナス】

最近の記事

短篇小説『平成観音功徳記』連載3回    最終回でございます。

 月曜になった。敢えて東京駅近くの銀行で当選手続きをした。金曜日には入金され その確認をして 直ぐに旅行代理店に向かい旅行代金全額を支払った。プランを作成した女性社員が居なかったのが 少し残念だった。そして錦司は都内の銀行に貸金庫を借り、三百万円を給与振込に使用していた北関東の地方銀行口座に移し、残りの当選金額が入った銀行口座の通帳と当選証明書を入れて保管した。  ゴールデンウィーク直前 漸く錦司の銀行口座に退職金も振り込まれていたのを確認した。兄の来訪を避けるために 錦司

    • 短篇小説『平成観音功徳記』連載2回目

      錦司が目を覚ましたのは 自宅の寝床だった。未だ部屋は闇だった。 錦司は自室の寝床である事を確認して悪夢から漸く解放された安堵感を得ていた。  視線が胡坐をかいているグレイにいくまでは。  しかしグレイは実在していた。長い脚をX字に曲げて畳に尻を着けて  錦司の方を見ていた。 「どうも お疲れ様! お蔭で厄介な戦争屋を一掃することができた。 これで第三次世界大戦なんてのは人類史に起きなくなるだろう。 あなたは たった一人で偉業を成し遂げたってわけです」 異星人製サイボーグたるグ

      • 短篇小説『平成観音功徳記』連載1回め

        薄暗い朝が来た。一番鶏の鬨の声などしなかった。 ただ不図目が開き 目に入ってきた薄暗さに動悸を覚えた倉橋錦司は 幾ら早寝をしても、飲めぬ酒を呑んで夜更かししても 朝が来るまで何もない漆黒の闇と沈黙の睡眠から遠ざかっていた。 つい数週間前までなら朝の目覚まし時計が鳴るまで疲れ切って夢も見ず、 パッと目が開き 布団を片付け、厠に行き用を足してから顔を洗い  口を漱ぎ小さな仏壇へ向かう。 仏壇の水を換えてお燈明に火をともし 線香をつけ数珠を両手に絡ませて 正座し日蓮宗の開経偈を唱え

        • ひとりごと5回目です

          テレビ朝日のドラマです。ドクターXの脚本家中園ミホ氏の 看護師応援ドラマであります。 医者がなんぼのもんじゃい! というのが 中園氏の独壇場です。ドクターXも 本当の医者とは何かを問うドラマで人気を博しました。 志は素晴らしい! ですが 本当の医療現場の悪魔は 製薬会社です。それも欧米の。 さすがにその本丸はテレ朝じゃつけません。 報道正義妄想装置の新聞社が 本体ですし  海外の製薬会社は軍需産業ですから 朝日新聞自体が それを攻めたら社員は玉砕覚悟が 必要ですからね。ホンマ

        短篇小説『平成観音功徳記』連載3回    最終回でございます。

          ひとりごとの4回めは 『竜とそばかすの姫』をめぐる あれやこれや

          Huluで観ました。 去年 劇場で観るべき映画でした。 細田守監督が 強い影響を受けたディズニーの 『美女と野獣』への オマージュだと言うことですが 私には ハッキリ  喧嘩を売って 見事 勝ちやがったな! というのが感想でした。 かくは めでたい♪ 『時をかける少女』で大胆にも 初代時かけ少女を 主人公の魔女おばさんに設定して ゴダールの『はなればなれ』と トリュフォーの『突然炎のごとく』でヌーベルヴァーグ2人が 揃ってハワード・ホークスの『タイガーシャーク』などでした

          ひとりごとの4回めは 『竜とそばかすの姫』をめぐる あれやこれや

          ひとりごと。こんな動画を観ました。   楽しいファンタジーとして

          私の書いた小説は 概ね SFということかもしれない。いやいや それほどサイエンスとしてがっちり構築された下地なんて 無い。 スピリチュアル・ファンタジーとかスピリチュアル・フィクション! その方が正しいと思います。 Spiritual Fantasy 、Spiritual Fiction そういうジャンルですと これから もし訊ねられたら 応えよう。 そんな 私が お気に入りのYouTube動画を 3本 今日は ご紹介させて頂きます。 1本目は 歴史ミステリーチャンネルさん

          ひとりごと。こんな動画を観ました。   楽しいファンタジーとして

          『リヴァース・ショット』をnoteに掲載した理由。

          あれは 今年の5月頃だったか スマホのGoogleアプリのホームページに 私の意志などに関係なくアルゴリズムで掲載される 記事の中に 蓮實重彦先生が ちくま書房の 月刊書誌に連載中のエッセイが現れた。 私の学生時代の8ミリ映画を 東京新聞の 夕刊で 嘗て 身に余る賛辞を頂戴した 先生である。 そして蓮實重彦先生は 私が高校時代から 私淑した 『ガルガンチュア物語』の翻訳をされた 渡辺一夫先生の愛弟子であられる。 渡辺一夫先生の『偶感集』が 私が通っていた高校の 図書室に在

          『リヴァース・ショット』をnoteに掲載した理由。

          中篇小説『リヴァース・ショット』  最終回 週末全篇をごゆっくりお楽しみくださいましね。あなかしこ。なんてね♪

          ショーグンを宇宙人といえばそうである。 しかし彼には人間の器官はなく、血や体液は 見せかけであり、 皮膚も現在の人間では 製造不可能な素材と製法で作られた物質である。 彼は脳すら所有していない。脳器官がなくても彼は思考し、感情をコントロールできる。睡眠も食べ物も彼には必要ない。 人間が個体維持するために必要な物は 彼には何一つ要らないのであるから。 しかも彼以上に考え、彼以上に物事を全て記憶できる人間などは  この世に存在しない。なぜなら 彼は 人間では ないのだ。 但し人間

          中篇小説『リヴァース・ショット』  最終回 週末全篇をごゆっくりお楽しみくださいましね。あなかしこ。なんてね♪

          中篇小説『リヴァース・ショット』連載12回。眠れる預言者実時に降りた霊かく語りき。その正体も明かすだろう。

          人間が 無から髪の毛一筋、創ることが可能 になることは 未来永劫ありえない。 優しさや思いやりは 惰弱なだけであり、 人間社会にもジャングルの掟があると、 人間が言う。 同時に 人間は獣ではない。と同じ人間が同 じ口から恥知らずに主張する。 ジャングルは食物連鎖の循環を示しているだ けである。 その食物連鎖の循環を恐れ ジャングル、 森から逃げ出したのが 人間である。 食物連鎖のサイクルから逃れる為に 愛ではなく、過剰なる恐怖心の力を用いて 神を捏造し、雀にすら内在する愛よ

          中篇小説『リヴァース・ショット』連載12回。眠れる預言者実時に降りた霊かく語りき。その正体も明かすだろう。

          中篇小説『リヴァース・ショット』連載11回。今更だが 諸世紀 十巻72章。 眠れる預言者となる実時。

           とりあえず 実時は 猫の方に戻る。和子もビールを用意する。コンロのガスボンベをセットした。 実時は さらに猫のトイレをバスケットから取り出し、猫に対して英語と 猫語らしきニャーニャーを出鱈目にして諭していた。 「それで ほんとに 理解するの?」和子は不思議そうにその光景を見て謂った。 「ふふふ。半年間記憶喪失で 僕が身を置いていた処で世話してくれた、この猫の飼い主が こうすればいいと教えてくれたんだ。」 猫は しきりにその矩形のプラスチックに細かなコルクみたような玉を敷き詰

          中篇小説『リヴァース・ショット』連載11回。今更だが 諸世紀 十巻72章。 眠れる預言者となる実時。

          中篇小説『リヴァース・ショット』連載10回。~夜明けの歌、新しい夜明けを迎えるために うたおう。

          そして  三十四歳の丸山和子は千九百九十九年の五月七日に 発作のような白い眠りの中で 無意識に彼女の指は あの印を切っていた。 唇には微かながらもあの風のような ソウレン云々が 蠢いていた。 そして すっかり陽光から見放されたコンテナハウスの中は かなり温度を下げていた。一方で和子の肉体は その温度変化にきちんと対応しようとしていた。ビクリと彼女の身体が痙攣した。その衝動は 彼女の意識をも急激に醒ます効果があった。両の瞼は 慎重に開かれた。薄暗がりに浮かぶ  殺風景な部屋の無

          中篇小説『リヴァース・ショット』連載10回。~夜明けの歌、新しい夜明けを迎えるために うたおう。

          中篇小説『リヴァース・ショット』連載9回。はなればなれの実時と和子。それぞれの曲がりくねった道。それぞれの孤独。それぞれの絶望寸前。夜明け前が一番冥い。

          咽る(むせる)ように薫る新緑の青桐が 揺れている。 実時は 和子の行方が判らなくなって以来、その行方を探るように嘗て和子が巡った霊場を訪ね歩いていた。季咸や芳仙という巫女と違って、降霊術師である大宗師、尊院には霊場修行は 本来それほど重要ではない。 しかし実時は口実をつけては 芳仙だった和子が何処かの霊場に預けられているのではないかという微かな期待を胸に抱いて旅をしていたのである。既に 和子の行方が知れなくなって一年が過ぎていた。是時は十八代大宗師を弟の篤時にする云々を最早

          中篇小説『リヴァース・ショット』連載9回。はなればなれの実時と和子。それぞれの曲がりくねった道。それぞれの孤独。それぞれの絶望寸前。夜明け前が一番冥い。

          中篇小説『リヴァース・ショット』連載8回。攖寧社なる降霊術師の家系に生まれた男と霊を受け取る巫女として育てられた女にも 深くて冥い川が在る。

          コンテナハウスの外では 夕日が数分の間 橙色に世界を染め上げてしまうだろう。  鴉がコンテナハウスの小さな庭にある物干し台に止まっていた。 あれは 慈愛、御仏の慈愛。 ガラス球のような目を開けはしていた丸山和子は 三十四歳になっていた。 あれは 慈愛、御仏の慈愛。 その言葉が 頭の中で遠く響いていた。 彼女は 漸く自分の意志を持って瞼を閉じた。熱い液体が両目を覆った。 実時のあの涙に濡れた長く黒い睫毛が 暗い闇の中では蘇ってこなかった。ただ 実時を男として向かい入れた悦びが 

          中篇小説『リヴァース・ショット』連載8回。攖寧社なる降霊術師の家系に生まれた男と霊を受け取る巫女として育てられた女にも 深くて冥い川が在る。

          中篇小説『リヴァース・ショット』連載第7回 ★切り返しショットの一方には別の人生、人生の意味が広がる。俊輔にとってのミナミとは別の横顔をとらえるショットが ある。

          奈良俊輔の代わりに  ある男が 千九百九十九年の 五月七日、仙台に向かって新幹線に乗る。  その男が 誰であるかは 奈良は勿論知らない。しかし その男は 奈良が書いた『ありきたりのポルノグラフィ』のモデルとなったあの ミナミという源氏名の女に会うために仙台に向かったのである。 とはいえ。その男が ミナミという名を知りはしない。その男は その女性をもっと別の名前で呼ぶ。ミナミが 別の名前で送ってきた人生に その男は 深く関わっているからである。 彼は 大男のわりに顔が小

          中篇小説『リヴァース・ショット』連載第7回 ★切り返しショットの一方には別の人生、人生の意味が広がる。俊輔にとってのミナミとは別の横顔をとらえるショットが ある。

          中篇小説『リヴァース・ショット』連載第6回 傷だらけだから酔いどれだった男には 天使たちが微笑んでいたわけだ。

          九段下から千鳥ヶ淵のホテルに行くまでの道すがらすっかり葉桜になっている桜並木の下を歩くと、初夏の軽やかな匂いが 心地好かった。所々に桜の花弁が泥に塗れて小山を為しているのを見ると来年は 是非とも桜が咲き乱れるところを肴に うんとドライなマティニーを 岡井と呑もう。 そしてその時は 俺から誘い 内に蠢く愚かしい自己憐憫を払拭しきった 俺であろう。とダラダラと軽く下っては また登る路を 奈良は 歩いた。 ホテルに着くと岡井は 西城栄一ともう一人のそりとした大男とともに ラウンジで

          中篇小説『リヴァース・ショット』連載第6回 傷だらけだから酔いどれだった男には 天使たちが微笑んでいたわけだ。

          中篇小説『リヴァース・ショット』連載5回。AーNap研究所(安眠屋)再び。 サラリーマンは気楽な稼業であり得た 日本は最強だったんだね。

          翌朝 奈良は 上着のポケットにフロッピーディスクを入れて出社した。無論 それには 『ありきたりのポルノグラフィ』が 入っている。 『著作権法務部』での 有り余る時間を  有意義に使うために。 亀高は 仙台の調査会場から電話した一件以来、無愛想この上なかった。人事の高梨から彼は奈良からの指摘どおりの指示と、奈良が画策した以上の厭味を高梨から言われたのだ。 奈良の隣席では 既に戸浦碌郎が紙コップで自動給湯・お茶出し機のお茶を 啜っていた。結構ゴキブリの巣になっている、その機械

          中篇小説『リヴァース・ショット』連載5回。AーNap研究所(安眠屋)再び。 サラリーマンは気楽な稼業であり得た 日本は最強だったんだね。