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そもそも魔王って倒さなきゃ駄目なのか?【第3章 ラスン救済編 3】

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ーフィールド ラスン周辺区域ー


マサアキ
HP 76
MP 0
LV.8


ガラガラ……ッ!!
【ウマオは必死に荷車を引いている!】


「はぁ……っ!は…ぁ……!ん…ぐ…ぅ…!!」


お…おいウマオさん、流石にちょっと飛ばしすぎじゃねぇか?

あんたが潰れちゃあ元も子もねぇよ。少し位ペースを落としても……


「いや……自分なら大丈夫…っす。一刻も早く、安全を確保するのが、ゴホッ…!リリアルさんも……望んでいる所だと思うので…!」


あ、あぁ…それはそうなんだが……

………よかったのか?…これで本当に…?


「心配っ…すか?マサアキさん?」

「きっと…大丈夫っすよ。自信もあったみたいだし、彼女はそれなりの場数を踏んでいるのでしょう」

「信じて…ラスンで待ちましょう」


……あぁ、ただ…

何か、何か引っかかるんだ…

重要なことを、何か…忘れてるような…


「重要な事……?」


いや、気のせいかもしれないんだが…

この胸につかえるような、気味の悪い違和感は何だ…?


「…私にはこの魔物達に対する知識もタイムバインドもあります…足止めには持ってこいの魔法です…」


魔法………足止め…

…………いや、待て


あいつ、何でわざわざ降りた?


動きを止められるなら、逃げながら荷車の上からでも魔法をかければいい

そっちの方が安全だし、より確実だったんじゃ…

そもそも、囮なんて本当に必要あったのか…?


「……うぐ…こんなはずじゃないのです……お願いします…もう一度だけ時を止めさせて下さい…」



おう、好きに止めてみろよ



「いや自分らの時間なんすけど…何でマサアキさんが了承してるんすか」

「…では…いきます………拘束魔法…」

「…タイムバインド…ッ!!…」



【リリアルはタイムバインドを放った!】


………!


【しかしMPが足りない!】



なんつーか…神様って残酷なのな

第2章7話より

ガタン…!
【マサアキは勢いよく立ち上がった!】


「うお…!?きゅ、急にどうしたんすかマサアキさん?走ってる途中に立ったら危ないっすよ!?」


まずい……


「へ…?」


まずいまずいまずい…っ!

ウマオさん!!急いで引き返…っ!

……………


「……?どうしたっていうんすか?そんな慌てて?」


……いや

……俺が今戻った所で、一体何が出来る?

くそ…!どうすりゃいい…!考えろ……考えろ…っ!


「よくわかんないっすけど…そういえばマサアキさん、グリル君は?」


……へ?グリル?

グリルならそこに……


【マサアキは辺りを調べた!】

【しかしグリルは居ないようだ!】



……っ!?いねぇ!?

グリルがいねぇ!!さっきまでそこにいたはずなのに!!

どこ行きやがったあいつ!!

羽だ!!抜け落ちた奴の羽を探せ!!


「ちょっと落ち着いてくださいマサアキさん!」


何処かで落ちた!?いつからだ!?


「分からないっす。自分は一心不乱に進み続けていたので、何か覚えてないんすか?」


あ…あぁ…

思い出せ…

確か進み始めてからやたら暴れだしたんだ。リリねーちゃんリリねーちゃんって


「ふむふむ…」


あんまりにもうるさくて最初羽交い締めしてたんだけど、なんか黙らせるいい方法が無いかを探して

んで、荷車の適当なスペースにグリルの頭にある角を突き立てたら、これが裏返った亀の如く、上手いこと身動きがとれなくなったみたいでさ、しばらくジタバタさせとこうと放置してたんだよ

グリルに気をかけなくなったのはそっからだな


「自分が必死に爆走しているという時に一体何やってんすかあんたら…」



だから今も突き刺さった状態でいるかと思ったら、この通りだよ


「移動しているうちに外れてしまったのではないすか?」


わりと深めにやったつもりなんだが、ほら…そこに穴開いてるじゃん?


「ていうか勝手に人の荷車に傷つけないでくれません?雑に扱いすぎでしょう…」

「………ん?…あれ…?」


ヒョイ…
【ウマオはグリルの角×2を手に入れた!】

グリルの角

「……マサアキさん、あの…これ…」


……なにそれ?分かんないけどあんまり見たくない、やだそれ。捨てて、今すぐに


「いやしっかり向き合ってください。めちゃめちゃグリル君の角っすよこれ…根本からポッキリいっちゃってるっす」


二本もれなく!?あいつ角もこんな簡単に取れんの!?


もうマジでほとんどコスプレだろ!



「するとグリル君は…?まさか…」


あぁ…おそらくそうだな

あんにゃろう!きっとリリアルのとこまで戻りやがった…!


「そんな…!」


こんなことになるなら、全身縛りあげておくべきだった…!

俺のミスだ。すまん…


「今はそんな事を言ってる場合ではないっす!ど、どうするんすか!?」


…………

……ちっ!あの無鉄砲馬鹿がよ…!



ゴソゴソ…
【マサアキはアイテムをまとめた!】

……悪いウマオさん、俺も戻るよ

グリルを連れ戻してくる


「えぇ…!?待って!自分は一体どうすれば!?」


あんたは先にラスンへ行ってくれていい、村で待っててくれ!

すぐに戻る!行ってくるわ!


「ちょっ…!ちょっとマサアキさんそんな勝手な!」

「……ああもう!」



──────────────
────────
────




マサアキ
HP 76
MP 0
LV.8


────はぁ……!は…っ!

【マサアキは来た道を全力で引き返している!】

ウェ…!ゴホッ!

はぁ……!はぁ…!



───容赦無く圧迫される肺、血が巡ってないような鈍い思考、滝のように流れる汗

そんな最低なコンディションを抱えながら、グリルが突然居なくなって、率直に浮かんだ想いを内省してみる


苛立ち、不安、焦燥、葛藤……


激しく渦巻く負の感情の中に、ほんのわずかだが、ただ確実に、賞賛があった事に自分でも驚いている


黙れと言っても聞かないのが奴のスタンダード、そもそも居なくなって気付かないはずが無い

そんなあいつが、全力で走る人力車から、俺らに勘付かれないように飛び降りて、一人でリリアルを助けに向かったのだ

多分また、怪我もしているだろう。普段のあいつなら騒ぎ散らしているところだ

リリアルを連れ戻す。その一心が突き動かす真っ直ぐな行動力に、素直に心を打たれてしまった


ただ……

【マサアキの怒りが50上がった!】


それをやって良いのは、あくまで問題解決の能力があるやつだ

何の考えもなしに危険に飛び込んでいくのは、勇敢なんて言葉でラベリングしていい立派なもんじゃねぇ


覚悟しとけよグリル、全部終わったらまたお仕置きだからな…!



〜To be continued〜

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