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そもそも魔王って倒さなきゃ駄目なのか?【第3章 ラスン救済編 2】

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ーフィールド リベール街道ー

リベール街道

マサアキ
HP 76
MP 0
LV.8


よし

じゃあこっちの話もまとまった所で、色々順序がぶっ飛んじまっているような気もするが自己紹介だ

俺はマサアキ、ペーペーの……ってか、本日デビューしたばっかりの旅人だ

よろしくな


「…あ…はい…改めましてラスンの見習いシスター…リリアル・フェザードと申します…よろしくお願いします…」


リリアルが一時仲間に加わった!


それと荷車を引いてんのがウマオさん、モンバルって町までの案内人を頼んでる


「正確にはマオなんすけどね…」


「…えと…よろしくお願いしますウマオさん…」


「あ、よろしくっす」


んで、残ったちっこいのがグリルだ


「おいらグリル~!仲よしのしるしにかみついてやろうか?うはは!」


「…………」


ん?


「お~?なんだ?返事くらいしろよ!じょーしきだぞ!」


「……あ…ごめんなさい…虫けらさん…」


「え?むし…?」


けら、さん??



どうした?聞き間違いであってくれ

む、虫けらって言ったか今?噛んだにしてもおかしいぞ

グリルね?グリル


「…いえ…すみません違うのです…失礼なのですが私この子は少し…」


なんだ?生理的に無理とか言うなよ

そういうのが差別とかいじめ問題に関わってくるんだから


「……あの…生理的にとかそういうのじゃないのです…存在自体がもう…」


なお悪いわ

お前まてよちょっと、仲良くしよう?

シスターってどんな人にも分け隔てなく接するべきじゃないのかよ?主観で好き嫌いとか言っていいの?


「…いや…この子が嫌いとかでは全然無いのです…むしろシスターだからですね…」


はい?


「…申し上げにくいのですが……この子からは僅かながら魔性のオーラを感じます…恐らく魔族の子供か何かではないですか?…」


「うぇえ!?グリルくんが魔族!?本当っすかマサアキさん!?」


あ、あぁその通りだが…


「ほぁ~何か変わった格好してるなとは思ってたっすけど、まさかっす…」


心配しなくても大丈夫だウマオさん、特に害は無いから


「いや、自分積み荷食い荒らされてるんすけど…」


んで?それとお前にどんな関係があるってんだ?


「…私達シスターには3つの教えがあるのです…」


教え?


「…はい…まぁいわば掟ですね…」

「…そのうちの1つに魔ノ化身、決して馴れ合う事なかれというものがあります…」


シスターにしてはいやにスタイリッシュな掟だな…


「…これはこの世界に存在する魔族や魔物…その手の邪悪な者と関わりを持ってはいけませんよ…という意です…」

「…私達シスターは清く人間の見本であるべき…これを破りその品徳を失うような事があってはならないのです…」


はぁ〜…そりゃ立派な心意気だ

とても丸腰の相手にチェーンソー持って追いかけ回してた奴の発言とは思えねーよ


「…ふふ…そんな事もありましたね……あの頃は私も少しばかりヤンチャでした…」


遠い目して誤魔化してんじゃねぇ。ついさっきの事だろうが


「……とにかく…私はシスター…その子は魔族…子供と言えど立場上馴れ合うことは許されません…」

「…しかし…あなたのお仲間であることもまた事実…それを知った上で邪険に扱う程私も鬼ではありません…本来なら口を聞くことも無いのですが…せめてもの礼儀として虫けら…そう呼称させて頂きました…」


礼儀って何だっけ?

一回調べて来てもらえる?


「………虫…」


あ~……グリル?

あんまり気にすんなよ、あのおねーさんきっと頭が弱いんだ

虫けらって言われても、グリルはグリルだからな?


「…弱くありません…つよつよです…」


「虫けら…たしかにそう言ったよな?あのねーちゃん」


ん、んあぁ…でもだから気にすんなって

落ち込むなんて、らしくないからやめろよ


「うははは…!おいら、うれしい!」


そうそう、元気だして行こう…って

はぁ!?

嬉しい!?虫けら呼ばわりが?


「おいら聞いたことあるぞ!今のあだなってヤツじゃないか!?なかよくしたい相手に付けるっていう!」


あだ名~?


「ちがうのか?おいらの名前はグリルだろ?じゃあそれ以外でおいらを呼ぶのはあだなだ!」


すげーな、お前の優勝だよ

ポジティブどころの話じゃないからな、これ


「うはは!!ありがとうねーちゃん!お礼にかみついてやる~!」


「…うわぁ…虫けらが飛んできます…ニコニコしながら飛んできます…」


「おいらも仲よくなりたいから、あだな付けてやる!」


「…いいです…遠慮します…虫けらに付けられるあだ名なんてありません…」


「え~とな~…コオロギ!ねーちゃんは、コオロギ!」


「悪意を感じるっすね……」


てか虫けらじゃねぇか


「…こ…この子はケンカをお売りになっているのでしょうか?…たった今嫌いになりました…虫けらは即刻肥溜めへと赴いて下さい…」


【グリルとリリアルの親密度が上がった!】


「…上がってません…殺意に変更して下さい…」


「うはははは!!やったー!あだな初めて!」

「おいら虫けら~!今日から虫けら~!」


「でも、なんか上手くまとまったようっすね」


あぁ…そうだな

いや、まとまったのかこれ?俺泣きそうなんだが



まぁいい…何にせよお前ら、いつまでもこんな所で油売ってないでそろそろ行くぞ

ラスンも、もうすぐ着くらしいし


「…そういえばこの辺りはもう村の近くですね…」


「近くにあるのか!?コオロギの村!」


俺達はそんな村に何の用があって行くんだよ

お前もいいのか?こいつアホだから、このままだとず〜っと言われるぞ


「…限りなく不快です…私の容姿を持ってすればどこでアンケートを取っても満場一致で女神ヴィーナスだと言うのに…」


だとよグリル、やめてやれ


「何でだ?気に入らなかったのか?」


これを純粋な眼差しで言って来るからムカつくんだ

この人の事は名前で呼べ

さっき聞いたろ?リリアルってんだ


「リ…リリリアル?」


「…リが一つ多いです…おちょくっているのですか?…と伝えて下さい…」


リが一個多いとよ。リリ、アルだ


「リリアル…?えー!ダサいぞ!コオロギの方がカッコいいって!」


「…殺します…」


まてまて!あ~…あれだ!今まで通りねーちゃんがいいってよ


「…この子にねーちゃんと呼ばれる筋合いはありません…」


めんどくせーなお前ら!話進まねーよ!


「…百歩譲ってもリリアル御姉様がいいです…」


だってさグリル、御姉様ちょっと怒ってるから

言ってみ?リリアル御姉様だ


「リリねーちゃん?」


うぅん…OK、もういいだろ?


「…少々不満ですが…ここはもう千歩譲って良しとしましょう…」


めちゃめちゃ譲ってんな


「…相手は虫けら…私が大人にならなければ解決出来ない問題でしたしね…」


あ…あぁ、その通りだな

もっと早く気付こう


「……っ!!マ、マサアキさん大変っす!」


どうした?今度はなんだ?


「いつの間にか後方に三体の魔物が…!奴等、自分らをピッタリマークしてるっす!」


【魔物は狙いを澄ませている!】


もっともっと早く気付こう



「どうするっすかマサアキさん…!?幸い魔物達は警戒してまだこちらの様子をうかがっているっす…!スピードを上げてこのままラスンまでぶっちぎるっすか…!?」


ぶっちぎれんのか?


「ここからの距離ならおそらくギリギリ行け──うっ……ゴファアッ…!想像しただけで疲労感が押し寄せてきたっす…!」


その虚弱で自信満々に言うなよ


「…そもそも魔物の足と人間の足ではまともに勝負をしても勝算は低いです…その上この打ち捨てられた家畜小屋のような乗り物を引いているので…万が一にも振り切ることは出来ないと思います…」


「そんなにひどいっすかこの荷車!?」


けど、じゃあどうすんだ?このままだと襲われるのも時間の問題だぞ


「…惨鬼君さえあれば私が相手になってもよかったのですが…怪力お化けリッキー君によってこの通り…見るも無惨な姿へ変えられてしまったので現状では厳しいです…」


誰が怪力お化けリッキー君だ。四コマ漫画みたいに言うな


「よーし!じゃあおいらのひっさつのキバでかみついて追っ払ってきてやるよ!」


やめとけグリル、お前がそう言ってうまくいった試しがない

きっと通じない上にまた折れて泣くハメになる


「じゃあ、あんまり強くかまないようにする!そしたら折れないだろ?」


馬鹿だ。おい話に馬鹿が混ざってるぞ

まともな案出せないなら黙ってろ


「…同感です…大体虫けらの甘噛みなど相手は痒くなるだけです…下手なストレスを与えかねないのでやめて下さい…」






「…まずは冷静に相手を分析しましょう…魔物は全部で三体…三体のうち二体はモンスターランクEのケルベロキラーにウッドアルマジロ…そして…モンスターランクDのイーグルベア…どれも見たことのある魔物です…」


戦って勝てそうな相手なのか?


「…魔物との戦いに心得はありますか?…」


いや…正直、そこの戦闘経験はかなり少ねぇ…


「………では…仮に全員でかかったとしても勝率は2〜3割程と言った所でしょうか…」

「…それを踏まえた上で挑むのは…あまり利口とは言えないです…」


ちっ…まさか村を目の前にしてこんなピンチに遭遇しちまうとはな…

どうする、どうすればいい…


「…ただ…一つだけ…」


……?


「…一つだけ全滅しないで…この状況を打破する方法があるのですが…」


おお…!マジでか!?

どんなだそれは?


「…おとりです…」


お、とり…?


「…ええ…誰か一人が魔物の注意を引きつけて足止めし…その隙に残りの三人はラスンへ向かうのです…」


「なるほどっす。それなら……いや、だけど」


「…はい…問題は誰が残るかですが…」

「…ウマオさんは荷車を引くのに必要で…マサアキさんも魔物との戦闘経験が乏しいとのこと…虫けらさんはどれだけ上手く立ち回ろうが所詮は虫けら…囮をやるのには役不足です…」

「…なのでここは私が引き受けます…皆さんは合図をしたら──」


お、おい…ちょっと待てよ…


「……?…」



囮って、そんなお前…

武器もねぇのによ…


「…あら?…ふふふ…焦った顔が愉快ですね…心配してくださるのですか?…」


茶化すんじゃねぇよ…!

だってそりゃあ……3体1だぞ?死んじまうぞ……

まさかお前──


「…お気遣い痛み入ります…ですがご安心ください…自殺行為に及んでいるつもりは毛頭ありませんから…」

「…それとあなた方の為…と思っているのならそれも勘違いです…このままだと村に魔物を引き入れることになってしまいます…下手を打たれて侵入を許しては困るのですよ…」


ヒョイ…
【リリアルは荷車を降りた!】


「…私にはこの魔物達に対する知識もタイムバインドもあります…足止めには持ってこいの魔法です…あくまで最も全員の生存率が高く…合理的な判断に基づいて取っている選択なので大丈夫ですよ…」


ほ、本当か?嘘じゃねぇんだな?本当に自信があるんだな?


「………えぇ…もちろん…」

「…上手く捌いて後から合流します…あなた方に狙いを付けられたら少々面倒です…」

「…なので魔物達を刺激しないようにゆっくり出して…勢いよくこの場を駆け抜けて下さいウマオさん…」


「あ…はい、わかりました!ではお気をつけ下さいっす!」

「ふ…っ!ぐうぅ…!!」


グラグラ…!
【人力車は動き出した!】


「ぜはぁ……ッ!ラ、ラスンまで一気に飛ばすっすよマサアキさんグリル君!しっかり掴まっていて下さい…!」


あ、あぁ…


「むお?おいウマオ〜、リリねーちゃん降りちゃったぞ?止まってやれよー」


「う、がぁァァァァ!!」

ガラガラ…!!
【ウマオは必死に荷車を引いている!】


「ウ、ウマオ?聞いてんのか!?止まらなきゃのれないだろ!リリねーちゃん置いてっちゃうのか!?」

「おい!ウマオ!」


ガッ…!
【マサアキはグリルを押さえ込んだ!】


ちょ…!話聞いてたのかよてめーは!落ち着け!


「はなせマサアキッ!」


おいリリアル!


「……!…」


絶対追いついてこいよ?信じてるからな…!?


「…………」


ガラガラ…!!
【マサアキ達はその場を後にした!】




「…行きましたか…魔物も向こうを追わなかったし…ひとまずは良しとしましょう…」


《ガオォォォン!!》

《…………》

《グルルル…!》


ザッ!
【リリアルは魔物に囲まれた!】


リリアル
HP 52
MP 4
LV.7


「…さて……慘鬼君も魔力も無し……ここからどうしたものでしょうか…」

「…美女と野獣はセットだと相場は決まっていますが…これは少々格好をつけすぎてしまいましたかね…モテすぎる女も苦労します…」


《ガアァァァァッ!!》

【イーグルベアは威嚇している!】



「…………」


「…シスターの掟第一項…神託に従い、万事人たるものの務めを尽くすべし…」

「…色々な問題が複雑に絡み合って…人として…もう何が正しいのか私にはわかりません…」

「……掟は守れているのでしょうか?……最善を選び続けるのは難しいです…」


エンカウント発生!

〜To be continued〜

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