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私生活(エッセイ)

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感じたことをテーマでまとめたエッセイです。
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#小説

「死ぬときは自分が止まるときですから」

「死」について、人によってはまったく考えないテーマらしい。

今日取材で会った30代男性(接客業)に死ぬのが怖いと話をしてみたら、ぽかんとした顔をされた。同僚にお昼に行こうと誘ったら「今日お弁当を作ってきたので」と断られるくらい軽やかに、「死ぬときは自分が止まるときですから」と普通の表情で答えた。なんでそんなこと聞くんですか?くらいのかんじで。

私は30歳を迎えるのが怖くて怖くてたまらないのに、

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生ぬるい風を浴びながら

生ぬるい風を浴びながら

生ぬるい風が発生した理由は、火事が近くで起こったからだろう。どこか焦げ臭いけれど少しあたたかみがあり、火の粉も混じっている。火事場に飛び込む勇気はないけれど、この、生ぬるい風に包まれて死ぬんだったら、気持ちよくいけそうだ。

辛かったら逃げていいというけれど、生きた状態で帰ってきたら逃げたことは避難される。しかし、死という結果を伴えば、あなたが生きたことは称賛される。それに、逃げたことの罪悪感も少

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死にたいと思ったら警察に連行された話①

死にたいと思ったら警察に連行された話①

 落とし物以外で交番を訪れてしまった。

 今年はなかなか梅雨が明けない。もう7月に入ったというのに。梅雨なんてじめじめしたものは6月に置いてきてくれればよかったのに。その日も例によって空は暗く、じとじと雨が降っていた。
 天候の悪さは精神に影響する。これは自分自身でも体感していることだし、雨の日の低気圧に苦しめられている人もたくさん知っている。『うつヌケ』の田中圭一も著書の中で天気が悪いと体調が

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いのちの電話がつながらなくても

 先日有名女優がなくなった。すごくきれいな人女性だった。7月に有名俳優が亡くなったときも、今日女性ギタリストが亡くなったときもそうだ。メディアでは自殺の要因の憶測が飛び、そろいもそろっていぶかる。「亡くなったのは◯◯が要因だ」「◯◯に悩んでいたに違いない」などと平気で憶測を言う。母から電話がきたりして「彼らが死を選んだ理由」をあれこれ話してくる。



 「死にたい」という選択肢がない人は、「死

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