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私だけの詩領域

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詩の価値なんて知らないよ これは私だけの空だ
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#備忘録

SNSに疲れたくせに、つぶやきじみたものを書き残したい夜だ

自分のことを安心して話していいのだと、思える場所は多くない。相手を気持ちよくするのが会話のコツだと、就活のとき教わった。目を見る、相槌を打つ、続きを促す。よく笑い、よく食べ、決して怒らない。そうしていれば人は自分を嫌わない。自分はここにいてもいい。そうしないと生きていけない。

でもあるとき、ぐしゃんと崩れた。運ばれる前に崩れたホールケーキ。返信する前に充電が切れたスマートフォン。くるしい言葉ばか

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あなたを迎えにいく日まで

あなたを迎えにいく日まで

年末、というのはどうしてこんなにも、
人生を直視せざるを得ないんだろう。

あの頃のわたしが生きていた部屋で、
ひとり呆然と、時計を眺めている。

人間がつくりだした概念の手のひらで、
私たちは否応なく、
「来年」というものに向かわされている。

小説家になりたかった。
小説家になれなかったら、
私の人生に意味などないと思っていた。

書いて書いて書いて書いて、
40分に一本しかない電車を待って、

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夜道に咲く花

夜道に咲く花

夜道は危ない、と知ったのは大学生になってからだった。それ以前の私にとって、夜道は単に恐ろしく孤独なものであるだけで、危険なものではなかった。
街灯の少ない空にはぞっとするほど星が光っていて、隣に恋人でもいれば「綺麗だね」なんて言ってキスなんかできちゃうくらいの雰囲気で、でも私はたったひとりで、世界中の孤独を全部背負ったような顔をして、夜を徘徊していた。

実際、そんなに頻繁には徘徊していなかったは

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孤独を優しく象る|米津玄師2023TOUR『空想』備忘録

孤独を優しく象る|米津玄師2023TOUR『空想』備忘録

米津玄師さんは私にとって、「誰にも言えない絶望を見つけてくれる」人でした。

私は幼い頃からずっと、頭のなかに文章が流れていました。それは、過去と未来が入り混じったものであったり、現実と空想の合間のようなものであったり。かなしいとかうれしいとか、今存在する言葉で形容できないものばかりでした。

いつからか、救われたい、と強く願うようになりました。でも、自分を救えるのは自分しかいないと知ってしまった

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東京未遂

東京へ逃げたい、と一度でも思ったことがある人とは、深い関係になれると信じている。

行きたい、ではない。
逃げたい。
正確に言語化するなら、「ここではないどこかで救われたい」。

家出しても、行き場所なんてどこにもなかった頃。ネカフェは徒歩圏内にはなくて、コンビニすら遠くて、泊めてくれる人もいなくて。街灯のない夜道を、涙を流すのも忘れて徘徊していた頃。私は東京に行きたかった。ほんとうに行きたかった

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【散文詩】金曜日のパン屋の隅

「悪いけど君の不幸を背負うことはできないよ」、そう言われたあの夏から、私の雨はずっと止みません。止みません、もう病みません。二度と泣いたり致しません。

私はあなたに何も背負わせるつもりなどなかった。一度だって「わかってほしい」なんて言ったことなかった。人はよくわからない、相変わらずよくわからない。昨日も明日も明後日も、何が何だかわからない。

止まない雨はないというポップスを、ぼろぼろのスニーカ

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【追憶】あなたという概念

【追憶】あなたという概念

私ね、かなしくって詩を書いてしまうような人間なんです、泣きながら深夜徘徊して、濡れた髪を乾かさずに眠っちゃう人間なんです、ごめんなさい。

素直にかなしいよって言える人間から先に幸せになっていく気がする。よければあなたの結婚式には呼んでください。お手紙など書かせていただけたら嬉しい。

なんて、斜に構えてみたところで、世界は目まぐるしく変わり続ける。年下の女優さんが増えて、戦争は今日も終わらない。

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