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本棚は段ボール

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読んだ本の感想を述べています。 ネタバレ等ありますので気にする方は気をつけてください。
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#読書

本棚は段ボール Vol.26 『暗闇にレンズ/高山羽根子』

本棚は段ボール Vol.26 『暗闇にレンズ/高山羽根子』

 面白いが、難しい。
すっきりと理解して楽しむ類の話ではない。
読んでいてしんみり、じんわり、面白いなあと感じるもの。

現実をぼかす、嘘の混ざったもの、または嘘そのものを現実と思い込ませる。
高山羽根子さんの小説にも、似たようなところがあり、SFなのに本当にあったことのように感じる文章です。
だから、この本で言えば、高山羽根子さんの小説は、映像的なのかもしれない。

本棚は段ボール Vol.25 『そして、バトンは渡された/瀬尾まいこ』

本棚は段ボール Vol.25 『そして、バトンは渡された/瀬尾まいこ』

 幸せかどうか、不幸かどうかは自分で決める。人にとやかく言われる筋合いはないが、自分で感じる自分の幸、不幸の度合いを、他人にぴったりと当てられると、その言葉には愛を感じてしまうなあと思う。
 きっと私のことをよく見ていてくれていなければ、それはわからないことだから。
 私は娘の立場で読んで、なんだか結婚がしたくなった。結婚、離婚したとしても、素敵だ。一緒にいようと決めること。それってすごいことだし

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本棚は段ボール Vol.24 『被覆と身体装飾の社会心理学/B.B.カイザー』(上、下巻)

 小難しい本を読みました。

卒論で使うために買って、使うところだけちょろっと読んで、放置していた本。

 つまりは、服が人間を動かし、また人間が服を動かしていくということ。

 着るものは、自分を表し、また、人からカテゴライズされる大きな判断材料となること。
それを利用した戦略も取りうるということ。

本棚は段ボール Vol.23 『うどん キツネつきの』/高山羽根子

本棚は段ボール Vol.23 『うどん キツネつきの』/高山羽根子

2024年、はじめに読了したのは本書でした。

高山羽根子さんは、日常を描くのがうまい。日常に、SFが紛れ込んで、物語が終わっても登場人物の生活は続いていく。

SFなのに、心にすっとなじんで、入り込める。
SFの加減もよい。ちょうどよい、不思議さ。

人と人とのつながりを、確かめていくような気持ちになれるあたたかくて笑顔になれるようなお話ばかりです。

本棚は段ボール Vol.17『八月の終わりは、きっと世界の終わりに似ている。』/天沢夏月

青春小説など、生まれてこの方読んだことが殆どない。
ともだちと、合わなかった本とか、読んでほしい本とか、交換しようよの会で、貰ったので読んだ。
初めは「ふーん」とナナメ読みしていたが、最後にはぼろぼろ泣いてしまった。
私は泣かせるものには泣かせるものだと分かっていても必ず泣いてしまう。
あとがきに、10冊目の出版と書いてあって、すごいなあと思った。

本棚は段ボール Vol.16 『ダンス・ダンス・ダンス(下)』/村上春樹

本棚は段ボール Vol.16 『ダンス・ダンス・ダンス(下)』/村上春樹

じっと待つ。
簡単なようでいて、非常に難しいことだと思う。

ファンタジーだったけれど、共感するところや、現実にもこういうことってあるのではないかという心の動きや行動指針の示唆に富んでいたように感じた。

じっと待てばわかる。じっと見れば分かる。そうなりたい。静かに、的確に、ステップを踏みながら人生を踊りたい。

何もできないとき、分からないときは静かに待つということは、本当にそうだと思う。時間は

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本棚は段ボール Vol.15 『現代短歌パスポート1 シュガーしらしら号』

本棚は段ボール Vol.15 『現代短歌パスポート1 シュガーしらしら号』

 短歌が流行っているから、ひとつくらい読んでみようと思い、購入しました。

 わかるもの、わからないもの、わかりたいもの、わからなくていいもの、それぞれの短歌に、それぞれ命があり、いいなあと思いました。

 私が1番好きだったのは、吉田恭大さんの短歌です。ミクロな日常を、味わって大切に生きているような詩がすきでした。

いちばんのおきにいりは、これ。

なんてすてきな言葉なのだろう。じんわりと幸福

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本棚は段ボール Vol.14 『幸せについて』/谷川俊太郎

本棚は段ボール Vol.14 『幸せについて』/谷川俊太郎

 ほんとうだなあ、と思うことがたくさんあった。
 80代になったらわかるのかなあ、それともわからないかな、ということもあった。
 私も同じことを考えたことがあったなあ、とか、私の母も同じことを言っていたなあ、と思うこともあった。
たとえば、私にはまだあまりわからないけれど、母も、谷川俊太郎さんも言っていたこと。
 「忘れることはある意味幸せ」

 母が言っていた時、「辛いことを忘れられる」とか、「

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本棚は段ボール Vol.13 『わたしを空腹にしないほうがいい 改訂版』/くどうれいん

本棚は段ボール Vol.13 『わたしを空腹にしないほうがいい 改訂版』/くどうれいん

天邪鬼だから、流行りのものをいつも、流行りが終わった後に手にとって、「うん、いいなあ」となっている気がする。
天邪鬼というか、変なところで「秩序」を守りたがる性格のせいかもしれない。
ものの優先順位を吟味して、それよりも高いものがあれば手を出さない。
流行っているただなかでも、その前から読みたいと思っていたものがずっと心の中に溜まっていて、そちらを消化するまでは新しい興味に飛びつけない。
面倒であ

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本棚は段ボール Vol.8 『黄色い家』/川上未映子

本棚は段ボール Vol.8 『黄色い家』/川上未映子

 何だったんだろう、あの人の人生は。
亡くなった人に対して、ではなく、私は自分が死ぬときのことを考えて似たようなことを思う。

 幸せとか、不幸とか、関係なく、人はみな死ぬ。
死んだ後に名前が残ったって、私はそれをきっと知ることができない。
じゃあ何のために、なんで生きているんだろう。
この結果のない長い長い過程には、何の意味があって、どうすることが正解なのだろう。
今私が頑張っても、笑っても、泣

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本棚は段ボール Vol.10 『暇と退屈の倫理学』/國分功一郎

本棚は段ボール Vol.10 『暇と退屈の倫理学』/國分功一郎

 最近は哲学の本にハマっている。人におすすめされなければ哲学書を読むこともなかったと思うので、やはり他人の好きなものを知ることは色々な意味で楽しいと再認識している。

 感想を文章として書くのは難しい。どうしても、メモのようになってしまう。

 強くて浅い退屈と、薄くて深い退屈、人間は分類をしないと理解ができないし、理解ができないことを嫌う。
薄ければ薄いほどよく染み込むのは、退屈とて同じで、だか

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本棚は段ボール Vol.12 『ニムロッド』/上田 岳弘

本棚は段ボール Vol.12 『ニムロッド』/上田 岳弘

 昔買った本を、なんとなくどんな話か忘れていて、当時はそんなに刺さらなかったのだけれど、もう一度読んでみることにした。

 現代というものは、何でも知ることができる。何でも知ることができるし、お金があれば"あるものなら"何でも手に入れることができる。
 すべてを手に入れたとして、その先に人間が望むことはなんだろうか。
 何でも知ることができるようになってしまったからこそ、私達は「知らないこと」に不

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本棚は段ボール Vol.11 『いい子のあくび』/高瀬隼子

本棚は段ボール Vol.11 『いい子のあくび』/高瀬隼子

 仕事の昼休み。機嫌の悪い先輩に当たられ、腹が立って、「なんか大人だよね」と、大人に大人の私が笑われたことを思い出して、いろんなことが許せなくて、たぶん私が許せないことたちの殆どに、他の人は気づきさえしなくて、それなのに私はつまずいて止まって、怒って。
 むしゃくしゃして本屋へ行くと、「ぶつかったるって思ってぶつかった。だけど、ぶつかられたのはわたしだ。よけてあげなかったから、結果としてぶつかった

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本棚は段ボール Vol.9 『一人称単数』/村上春樹

本棚は段ボール Vol.9 『一人称単数』/村上春樹

友人に借りてよんだ。
友人は、「謝肉祭(Carnaval)」が1番好きだと言っていた。
何となくそれは分かる気がした。(その友達がどこを、というか何を好んだのか、ということについて)
ただ、そういうことを意識してしまうと、その話は「友達の好きな話」になってしまって、一番好きな話になり辛い部分はあると思う。

「品川猿の告白」は、安部公房氏の影響を受けていたりするのだろうか。名前を盗まれるというのは

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