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本棚は段ボール Vol.14 『幸せについて』/谷川俊太郎

 ほんとうだなあ、と思うことがたくさんあった。
 80代になったらわかるのかなあ、それともわからないかな、ということもあった。
 私も同じことを考えたことがあったなあ、とか、私の母も同じことを言っていたなあ、と思うこともあった。
たとえば、私にはまだあまりわからないけれど、母も、谷川俊太郎さんも言っていたこと。
 「忘れることはある意味幸せ」

 母が言っていた時、「辛いことを忘れられる」とか、「何度も新鮮に驚ける」とか、そういう幸せだと思っていたし、母もそういう意味で言っていたように思うけれど、過去でも未来でもなく、「いま、ここ」を生きるという意味での幸せが、忘却にはあるのだなあと思った。
 私は年を取ることを肯定して生きていきたいと常々思っていて、若いことそれ自体を年を重ねたことと比較して価値が高いようにいうのが好きではない。けれど年を取るには、それ相応にならなくては、という焦りが常にあるのも事実で、だから、年を重ねていくことを肯定できる材料が、年を取ることを楽しみにできる学びがあって、良かったと思う。
 もっとも、忘却の幸せを知るころには、「忘却の幸せを知りたい」と思っていたことなんて忘れてしまっているかもしれないけれど。

 たくさんたくさん、一冊でこんなに「ああそうか。」ってなれるのかあ、と感動できるくらいたくさんの共感や発見があって、何度でも読み返したい一冊だったなあ。
 共感がありすぎて何を取り上げるか選べないので、簡単に済ませようと思います。

 またしばらくして読んで、感じ方が変わったら楽しいな。

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